2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560341
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
岩尾 徹 東京都市大学, 工学部, 准教授 (80386359)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 真空アーク / 3R / 超高速分光計測 / 酸化膜除去 / 画像処理 |
Research Abstract |
本研究は,超高速で分光撮影が可能な超高速分光計測システム,及び,本研究代表者が独自に開発中のPIPアルゴリズム(プラズマに特化した画像処理アルゴリズム)を用いて,真空アーク陰極点の酸化膜除去過程の解明を行うものである。 今年度は,「超高速分光計測システムの改良」と題して,超高速ビデオカメラと分光器を組み合わせて独自に開発した超高速分光計測システムや,超高速ビデオカメラ単体を用いた予備実験を行い,焦点,位置分解能,アークのゆらぎに関し実験を行った。また,この成果を基に多点分光システムの検討を行った。また,スペクトルの電子データ化には画像処理を用いるため,このアルゴリズムの精度の向上のための検討も行った。具体的な実績は,以下の通りである。 現在までの予備実験として,分光器を用いて,陰極点による酸化膜除去時に発生するスペクトルの測定を行い,Fe,Ar,O,C の原子やイオンのスペクトルを得ている。しかし,真空アークは高速に動き回る性質があり,分光計測において酸化膜除去時の分光データを測定することは極めて難しい。特に,この動きは,電源のリップルによるものなのか,酸化膜除去によるものなのかの見極めが必要となる。したがって,このことの検証を行った。また,測定位置の特定が困難であるため,この解決のため,新しい分光計測手法の検討を行った。 結果として,電源のリップルにより,真空アークの輝度が変化したり,分裂をしたりすることに寄与している可能性が示唆されるデータを得た。また,広がりを持つ真空アークの放射を分光器で取り込むための実験方法について検討し,実験の方向性を見出すことができた。さらに,高速分光を行う際の同期計測システムの構築や,精度良いスペクトルの計測手法の開発を行い,高速に輝度が変化するスペクトルに関し,スペクトルの同定や温度の算出などを行うことを可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,「超高速分光計測システムの改良」と題した研究を行った。具体的には,超高速ビデオカメラと分光器を組み合わせて独自に開発した超高速分光計測システムや,超高速ビデオカメラ単体を用いた予備実験を行い,焦点,位置分解能,アークのゆらぎに関し精度の良い結果を得た。また,この成果を基に多点分光システムの検討を行った他,スペクトルの電子データ化のための画像処理アルゴリズムの精度向上のための検討も行った。さらに,電源のリップルにより,真空アークの輝度が変化したり,分裂をしたりすることに寄与している可能性が示唆されるデータを得た。また,広がりを持つ真空アークの放射を分光器で取り込むための実験方法について検討し,実験の方向性を見出すことができた他,高速分光を行う際の同期計測システムの構築や,精度良いスペクトルの計測手法の開発を行い,高速に輝度が変化するスペクトルに関し,スペクトルの同定や温度の算出などを行うことを可能とした。 特に、大きな成果としては,高速に移動し,かつ,広がりを持つ真空アークの放射を分光計測するための高精度な計測手法を考案したことである。検討に時間がかかったが、次年度以降の研究に向けて大きな一歩となった。 これらは,研究計画に照らし合わせて,おおむね順調に進展している。なお,申請予算の執行が遅れた。これは,東日本大震災によること,高精度計測の検討に時間がとられたこと,新たに高精度な計測手法を考案したこと,一部研究装置の納入遅延のため当初計画の実施に予想外の日数を要したこと,タイの洪水により旅費の計上ができなかったことによる。しかし,ほぼ研究計画通りの内容を遂行しており,次年度は下記12に示す使用計画に基づき,研究費の使用を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,「酸化膜厚さ変化時の酸化膜除去と電圧の解明」と題し研究を行う。今年度に行った「超高速分光計測システムの改良」を基に,XZステージ,XZステージコントローラ,多点分光システムと,研究代表者が独自に開発中の超高速分光計測システムを用いることにより,位置の特定と確実な酸化膜除去時のデータ取得を行う。 具体的には,酸化膜厚さ変化時の酸化膜除去と電圧の解明として,酸化膜の厚さを変化させた際の陰極点の挙動軌跡の解析を行う。陰極点が移動する際,酸化膜の厚さによって変化する単位面積当たりの酸化膜の除去量によって,陰極点の移動が変化すると共に電圧が変化し,陰極点の維持やエネルギーバランスが左右されると考えられるため,この解明を行う。この際,アーク温度や蒸発粒子の特定,及び,蒸発量に関しては,超高速分光計測システムにより計測する。さらに,陰極点の酸化膜への伝熱により,酸化膜やバルクの蒸発や吹き飛ばしが生じると考え,この現象の数値シミュレーションを行う。これは,現在までにパルスTIGアーク溶接のシミュレーションで開発してきたプログラムを活用することにより行う。 最終年度は,「酸化膜蒸発除去時のエネルギーと除去過程の解明」と題し,次年度の研究成果を基に,陰極点のエネルギー密度と除去過程との相関を実験と理論の両面で検討し,物理的かつ定量的な除去過程の解明を図る。また,以上の結果を基に,研究の成果をまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は,研究計画に照らし合わせて,おおむね順調に進展しているが,申請予算の執行が遅れた。これは,東日本大震災によること,高精度計測の検討に時間がとられたこと,新たに高精度な計測手法を考案したこと,一部研究装置の納入遅延のため当初計画の実施に予想外の日数を要したこと,タイの洪水により旅費の計上ができなかったことによる。しかし,ほぼ研究計画通りの内容を遂行している。次年度は,下記のような研究費の使用計画を予定し,今年度分と次年度分とを合わせ,繰り越すことのない予算執行をする予定としている。 具体的には,XZステージ,XZステージコントローラと分光器の同期を図るためのソフトウエア,陰極点の電流密度の制御のための電源,電圧電流の測定のためのAD/DA変換ボード,広がりを持つ真空アークの放射を分光計測するためのフォルダーと光ファイバの購入をする予定である。 また,本成果を,7月と11月に開催される金沢での国際会議で報告する予定である。また,TIGアーク溶接のシミュレーションで開発してきたプログラムを活用し,数値シミュレーションの研究を行うことから,PCの購入やソフトウエアの購入も行う予定である。
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