2011 Fiscal Year Research-status Report
高効率光デバイスの実現に向けた低欠陥量子ドットの特性解明に関する研究
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23560354
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
岡本 浩 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (00513342)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 量子ドット / サーファクタント / DLTS法 |
Research Abstract |
研究の目的はBiサーファクタント成長による低欠陥量子ドットに残存する欠陥並びに同量子ドットからのキャリア放出の特性を調べ、デバイス応用に向けた指針を得ることであり、平成23年度は同量子ドットの特徴的な成長特性について新たな知見を報告するとともに、DLTS法による評価を試みた。 前者においてはQD成長過程の成長中断中におけるRipeningが一般的な成長に比べ急速に進行していること、この原因が結晶表面におけるBiの存在によることを明らかにし、さらにこの原因はBiの添加によるInの表面拡散速度の増大、あるいはマストランスポーテーションの促進によるものと考えられ、前者が作用していればBiの添加で発光効率が向上する点についても説明が可能であることを述べた。この結果は同量子ドットにおいて優れた光学特性が得られていることの解明を進める上で意義のあるものである。 また、後者においては歪補償層を介して積層した量子ドット構造について、キャリア注入と放出の特性をC-V特性並びにDLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)法によって評価した。その結果、C-V特性には大きな周波数依存性と、容量にピークが現れるという特徴的な特性が得られ、DLTSにおいては大きなパルス幅依存性があり、キャリアの捕獲に長い時間を要していることがわかった。そこでこの捕獲過程をDLTS測定で観察する新たな手法を試み、その観察に成功した。さらに放出課程と捕獲過程における各種特性がほぼ等しいという事実から、これらの過程は共通のバリアとなる歪補償層によって律速されていることを考察した。上記結果は当初目的としていた量子ドットの欠陥やキャリア放出特性の評価に直結するものではないが、量子ドットレーザや量子ドット太陽電池において重要となるキャリアトランスポートの評価に結びつく意義のある結果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の研究実施計画においては、(1) DLTS法による量子ドットの欠陥、並びにキャリア放出特性の評価、(2) DLTS装置への電流DLTS、並びに光DLTS測定機能の付与、(3) PLの温度依存性測定による量子ドットの欠陥評価を掲げていた。このうち、(1)に関しては成果欄に記した通り、当初の予想とは異なる結果が得られており、試料の構造によって評価できる内容に制約が存在するという知見も得られている。(2)に関しては概ね計画通りその準備を進めた。また、(3)に関しては昨年度の夏季に連携研究者が所属するNTT物性科学基礎研究所にて評価を行う予定であったが、昨夏の関東は厳しい節電要請のため研究設備の稼働ができなかった。また、全体を通し、東日本大震災によって故障した装置の復帰に時間がかかったために評価試料の準備に支障を来し、十分な測定が行えなかったという事情もある。 以上を総合し、平成23年度の達成度は「やや遅れている」という自己評価となった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初計画に沿ってDLTS法、電流DLTS法、フォトルミネッセンス(PL)法による評価を軸に研究を進めるが、DLTS測定においては実績欄に記したように、当初の予想とは異なる結果も得られている。各評価において何を明らかにできるのか、という観点を含めてその実効性を探っていく。また、PL測定に関しては弘前大学内においても基本的な測定は行えるよう、その整備を行うことにした。なお、InAs量子ドット試料に関しては現在、NTT物性科学基礎研究所においても新たな成長ができない状態にあるため、その他の材料系を用いた量子ドット試料の準備と評価についても平行して検討を開始することにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画の通り、評価用試料の作製と評価に必要な液体窒素、プロセスガス、試薬、蒸着用高純度金属、部品類の購入に使用する。この他、前記PL測定環境の整備のための備品を購入する。 液体窒素は各種DLTS測定とC-V測定において、試料の温度を低温(液体窒素温度)から高温まで上げ下げする際に用いる。弘前地区では液体窒素の単価が高いため、1日の測定で8,000円程度の費用となる。プロセスガスは試料の電極作成用の真空蒸着装置と熱処理装置の稼働に必要であり、試薬は同工程における試料の洗浄とエッチング加工に必要である。蒸着用高純度金属は上記の電極作成における材料であり、金などの貴金属が必要である。PL測定環境の整備のための備品の内訳は赤外線検出モジュールとその直流電源であり、弘前大学においても量子ドットサンプルの赤外領域のPL測定を行えるようにする。その他、連携研究者との研究打合せや研究成果の発表のための旅費や論文投稿費として研究費を使用する計画である。
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