2012 Fiscal Year Research-status Report
高効率光デバイスの実現に向けた低欠陥量子ドットの特性解明に関する研究
Project/Area Number |
23560354
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
岡本 浩 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (00513342)
|
Keywords | 量子ドット / サーファクタント / DLTS法 |
Research Abstract |
本研究の目的はBiサーファクタント成長による低欠陥量子ドット(QD)に残存する欠陥並びにQDからのキャリア放出の特性を調べ、デバイス応用に向けた指針を得ることであり、前年度に引き続きDLTS法における評価並びにその手法の向上に関する検討を進めるとともに前年度新たに方針に加えたInAs以外の材料系によるQDの検討に着手した。 前者のQDのDLTS評価に関しては前年度用いたレーザストライプ構造の試料に代え、DLTS測定に適したメサ構造の試料作成条件の検討を行い、QDのキャリア注入と放出の特性や欠陥に関する評価を行った。DLTS測定の結果、複数のピークが重畳した信号が観察され、これらのDLTS信号についてバイアス電圧依存性評価(逆方向の静的バイアスVB=-0.5~-3.0V)を行ったところ、VBの絶対値が大きくなると(観測する空乏層幅が大きくなると)DLTS信号の強度が減衰し、VB=-3Vでは消滅するという、通常の半導体バルク中トラップとは正反対の特徴ある依存性が観察された。この依存性は、バイアス電圧が捕獲パルスバイアスVCからVBに切り替わった直後にQDに捕獲されたキャリアがトンネルによって放出されるという機構を考えると説明ができる。また、観察する空乏層幅が最大のVB=-3Vの条件において微小な信号しか残らないということは、QDの周辺において点欠陥や転位等に起因するトラップが非常に少ないことを示している。以上の通り、DLTS法による上記QDのキャリア捕獲・放出特性並びに欠陥の評価手法と測定結果の解釈において有意な進展が得られた。また、装置と測定手法に関してはGe-MIS構造の評価を通じて改良を進めた。 後者のInAs以外の材料系によるQD作成の検討に関してはSi基板並びに石英基板上にGe-QDを形成する独自技術を新たに開発し、低温で高密度なQDが形成できる目途がついた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までの震災の影響等による遅れを引き継いだことの他、DLTS評価用サンプル作成における各種プロセス条件の検討において予想外のトラブルが多発した結果、当初計画に入れていた電流DLTS測定や光DLTS測定による評価にまで至らなかった。しかしながら前記(容量)DLTS評価においては当初予想していなかった特徴的な結果が得られ、その解析を進めた結果、当初は光DLTS測定等を用いた複合的な測定が必要と思われた欠陥評価に関しても、(容量)DLTS評価が有効であることが確認されるという予想外の進展もあった。また、前年度に新たに研究計画に加えたInAs以外の材料系によるQD作成の検討に関してもSi基板並びに石英基板上にGe-QDを低温で高密度に形成する独自技術を新たに開発できたことにより今後の研究に対する指針が得られた。 以上を総合し、平成24年度の達成度は「やや遅れている」という自己評価となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
DLTS評価に関しては、まずは(容量)DLTSによる解析を継続して進め、平成24年度に有効性が確認された量子ドットからのキャリア放出・捕獲特性に関してより詳細な検討を行う。例えば現在評価に用いることができる試料はpn接合構造であるため、電子と正孔両方の信号が検出されていることが予想され、それぞれの放出・捕獲特性についての知見を得ることが望まれる。これに平行して電流DLTS法や光DLTS法を相補的に活用するために測定系の整備を行い、評価を進める。 その他の材料系による量子ドット作成の検討に関しては、平成24年度に開発した独自技術によるSi基板並びに石英基板上Ge-QDの低温高密度形成技術について系統的な実験と評価を行い、その形成メカニズムについて理解を深めるとともにデバイス応用への可能性を探る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画の通り、消耗品費は評価用試料の作製と評価に必要な液体窒素、プロセスガス、試薬、蒸着用高純度金属、プロセス装置に関わる消耗品類、部品類の購入に使用する。液体窒素は各種DLTS測定とC-V測定において、試料の温度を低温(液体窒素温度)から高温まで上げ下げする際に用いる。弘前地区は液体窒素の単価が高いため、1日の測定で数千円の費用となる。プロセスガスは試料の電極作成用の真空蒸着装置と熱処理装置の稼働に必要であり、試薬は同工程における試料の洗浄とエッチング加工に必要である。蒸着用高純度金属は上記の電極作成における材料であり、金などの貴金属が必要である。 旅費及びその他の経費については連携研究者との研究打合せや研究成果の発表のための旅費や論文投稿費として使用する計画である。
|