2011 Fiscal Year Research-status Report
ゼーベックマイクロプローブ法を用いた熱電材料の異方性評価と性能最適化に関する研究
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23560363
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中本 剛 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (10283152)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ゼーベック係数 / サーマルプローブ / 熱電材料 |
Research Abstract |
本年度は、走査型二次元ゼーベック係数評価装置の改良と性能向上を目標として、1、高空間分解能を実現するための微小プローブの作製、2、ペルチエモジュールを用いた温度可変機構の導入と精密温度制御の実現、3、偏光光学顕微鏡導入による測定部位決定の効率化、4、測定プログラム改良による測定の高速化と結果の可視化・解析ソフトの開発、を行った。以下にその概要を記す。 1に関しては、化学エッチングやマイクロスコープを用いた機械工作により、10ミクロン以下の接触径を持つプローブの作製に成功した。銅やチタン、医療用の注射針を用いることで空間分解能の向上と同時に耐久性の向上を図った。更に、本装置においてプローブの材料と形状、及びプローブ内のセンサー位置の測定に及ぼす影響が明らかとなり、更なる測定精度の向上の指針を得ることができた。2は、ペルチエモジュールを導入し駆動用電源とPID温度制御用プログラムを作成することで、-10℃から+150℃までの温度範囲において0.1℃の精度で温度制御が可能となった。3は、偏光光学顕微鏡を測定系に装備することで、高効率で測定部位の観察と決定が行えるようになった。4に関しては、LabViewで全自動測定・解析プログラムを作成した。測定法として微分法を採用することで1点当たりの実測定時間が10秒での測定が可能となった。また、リアルタイムでの結果表示や等高線図マップの描画を実現した。別々に測定したデータの結合と二次元マップ表示、ラインプロファイルデータの抽出とグラフ表示を行える解析プログラムも作成した。 以上の結果、熱電材料をはじめとする機能性材料の局所ゼーベック係数測定が-10℃から150℃の温度範囲において10ミクロン以下の空間分解能で可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プローブ作製において、様々な作製方法と材料を用いることで10ミクロン以下の先端径を実現することができたが、今後、数千、数万回の測定に耐え得るプローブ強度の確保と同時により高い空間分解能の実現が必要となった。また、本研究の測定方法では、プローブの試料接点とセンサー取り付け位置とが空間的に異なる。そのため、プローブの材質と形状およびセンサーの取り付け位置とに依存するプローブの熱抵抗が、特にゼーベック係数の小さな材料の測定に大きな影響を及ぼすことが明らかとなり、新たな測定精度向上のための指針も得ることができた。ペルチエモジュールを用いた温度調節機構及び組織観察装置の導入と、同時にそれらを制御するプログラムの作成も完了した。現在までに-10℃から+150℃の温度範囲において、10ミクロン以下の空間分解能でのゼーベック係数の二次元分布測定と組織観察が可能となった。更に、測定プログラムを改良し、ゼーベック係数測定法を従来の定常法から微分法へ変更することで、測定精度の向上とともに測定時間の短縮を図ることも達成した。また、新たに作成した解析プログラムにより、2つ以上の異なる測定データの結合・描画やマッピングデータからのラインプロファイルデータの抽出・描画も効率的に行えるようになり、次年度の目標である熱電材料におけるゼーベック係数の二次元分布を測定する準備が完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き、1、装置の更なる改良および性能向上と、新たに、2、熱電変換材料のゼーベック係数分布測定と性能最適化、3、薄膜材料および電子デバイスの評価への応用、について研究を進める。1は、これまでの結果から、(1)プローブ強度の確保、(2)空間分解能の更なる向上、そして新たな課題として(3)プローブにおける試料接触点とセンサー位置との空間的違いにより生じる測定誤差の解決、が挙げられる。これらを解決するために、センサーである熱電対細線の接点を直接試料に接触させる新たなプローブ設計を行う。また、同時に従来型プローブの材質と形状を吟味することでもこれらの問題解決を図る。23年度に導入したペルチエモジュールを用いて、試料に温度差を与える方式をこれまでのプローブヒーターから熱浴側のペルチエモジュールに変更することで、試料温度及び温度差の精密制御を可能にし、更なる測定の高速化も図る。 2に関しては、まず、亜鉛-アンチモン系熱電材料における熱電物性の異方性評価を目標とする。23年度に設けた組織観察装置を用いて結晶粒分布を明らかにすると同時に、背面反射ラウエ法によりその方位分布を決定し、ゼーベック係数分布との相関を明らかにする。ビスマス-テルル系材料においては、まず、電子プローブミクロ分析などの組成分析によりドナー不純物濃度の空間分布を決定し、ゼーベック係数の伝導型及び絶対値との相関を明らかにする。 3の薄膜材料の評価については、プローブの可動機構の改良を進め、測定試料にダメージを与えないプローブの接地制御機構を開発し、薄膜の厚み方向のゼーベック係数測定法の確立を目指す。電子デバイス評価では、まず熱電モジュールを対象とし、接合界面におけるゼーベック係数測定から界面組織と変換性能との相関を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
走査型二次元ゼーベック係数評価装置の改良と性能向上の一つとして、各結晶粒の結晶方位分布を位置の関数として精密に効率良く測定し、ゼーベック係数分布と対応させるために、電動駆動型XYZステージを購入し、X線ラウエカメラのゴニオメーターに搭載する。 また、ビスマス-テルル系および亜鉛-アンチモン系熱電材料作製のための原料金属を購入する。 測定プローブにおける試料接触点とセンサー位置との空間的違いによる測定誤差の解決という23年度に明らかになった新たな課題のため生じた繰越金額は、この問題を解決するために必要となる熱電対極細線を用いたプローブの設計と製作に当てる。
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Research Products
(4 results)