2012 Fiscal Year Research-status Report
ゼーベックマイクロプローブ法を用いた熱電材料の異方性評価と性能最適化に関する研究
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23560363
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中本 剛 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (10283152)
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Keywords | ゼーベック係数 / マイクロプローブ / 熱電変換材料 |
Research Abstract |
本年度は、1、二次元走査型ゼーベック係数評価装置の更なる性能向上と2、熱電材料におけるゼーベック係数分布の測定を目的として研究を実施した。その概要を以下に記す。 1に関しては、これまでに10ミクロンの先端径を持つ微小プローブの作製に成功し、高空間分解能測定が可能になったものの、数万回の繰り返し測定に対する耐久性が問題となっていた。これを解決するために様々な形状と材質のプローブを作製し、吟味の結果、銅ベースの高硬度合金を使用することで高い耐久性を得ることができた。また、プローブ内のセンサー位置が測定に系統誤差を与える問題に関しては、センサー位置をよりプローブ先端近傍へと変更し、更にセンサーをアルメル・クロメル熱電対からプローブや熱浴材料である銅を含む銅・コンスタンタン熱電対へと変えることによりほぼ解決した。また、試料温度を一定に保ち精密温度制御を行うために熱浴にペルチェモジュールを用いた温度調整機構を設けた。これらの結果、熱電材料の測定に対して、高いプローブ耐久性を実現し同時に高精度のゼーベック係数測定が可能となった。 2に関しては、ビスマス-テルル系、亜鉛-アンチモン系熱電材料に対してゼーベック係数の二次元分布測定を行った。ビスマス-テルル系では、ドーパントである過剰テルルの結晶成長方向の濃度勾配に起因するゼーベック係数の正から負への符号反転を明瞭に検出できた。亜鉛-アンチモン系では、結晶粒分布に対応するゼーベック係数分布が観測され、ゼーベック係数の異方性の存在を明らかにした。これら熱電材料の測定結果から、本研究で作製した二次元走査型ゼーベック係数評価装置は、高い測定空間分解能を持ち、化学組成や結晶組織を反映するゼーベック係数の空間分布評価に対して強力な手段であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の課題であった数万回の測定に耐え得るプローブ強度の確保とプローブ内のセンサー位置に起因する測定の系統誤差の問題は、高硬度の銅ベース合金を用いた上でセンサー位置をよりプローブ先端近傍に設けることと、センサーをアルメル・クロメル熱電対からプローブや熱浴材料として使用している銅を含む銅・コンスタンタン熱電対へと変更することにより概ね解決された。 様々な熱電材料に対する測定結果から本装置が10ミクロン程度の高空間分解能で化学組成や結晶組織の空間分布を反映したゼーベック係数分布の測定に対して非常に強力な手段であることを示すことができ、熱電性能最適化や機能性材料のミクロ評価に応用する準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き1、熱電材料のゼーベック係数分布測定を行い、化学組成や結晶組織との相関を明らかにすることで熱電性能の最適化を試みること、加えて、2、特に薄膜を中心とした機能性材料評価への応用、を目標に研究を進める。 1に関しては、各材料系に対して下記のような計画で研究を進める。ビスマス-テルル系では、化学組成の不均一さに起因するゼーベック係数分布を逆手にとって、単一インゴット内において電子プローブミクロ分析による組成分析を実施し、ゼーベック係数の二次元分布測定と併せて高いゼーベック係数を発現するドーパントであるテルル濃度を決定する。亜鉛-アンチモン系においては、インゴット内の各結晶粒の結晶方位を決定し、菱面対称の結晶構造から期待されるもののこれまで不明であったゼーベック係数の異方性を明らかにする。 その他、現在盛んに研究が行われているナノ・マイクロレベルで結晶組織を制御した熱電材料に対して測定を行い、熱電性能最適化指針を得る。 2の薄膜材料のゼーベック測定については、特に従来困難であった膜厚方向のゼーベック係数測定を実現するために、まず、試料へのプローブ接触機構の改良を行う。プローブと試料の接触状態を精密に制御するために、電気的導通を感知するとともにプローブアームに歪みゲージなどを設け接触圧力の細かな制御も試みる。更に、これまでの針型プローブでは膜を破壊することが予想されるので、代わりに10ミクロン程度の極細熱電対線を直接試料に接触させる。その際、試料の温度差は、本年度設けたペルチェモジュールで熱浴側を冷却することにより与える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
様々な熱電材料を作製しそれらのゼーベック係数分布を測定するために、原料金属及び試料作製に必要な石英管類を購入する。また、薄膜のゼーベック係数測定を実現するため必要な歪みゲージや極細線熱電対線の購入に当てる。
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Research Products
(5 results)