2012 Fiscal Year Research-status Report
逆プロトン交換を用いた縦波型リーキー弾性表面波の低損失化と高周波フィルタへの応用
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23560365
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
垣尾 省司 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (70242617)
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Keywords | 縦波型リーキー弾性表面波 / 低損失化 / 逆プロトン交換 |
Research Abstract |
昨年度の研究において,縦波型リーキー弾性表面波(LLSAW)に対する結合係数の大きなXカット36°Y伝搬LiNbO3に逆プロトン交換法を用いて提案構造を形成すると,伝搬特性が格段に向上することを明らかにしたが,圧電性が回復しない領域が試料上に多いという問題点が明らかにされた.本年度はこの問題点の解決を最優先に研究を遂行した.研究成果を以下に示す. 1.圧電性回復機構の探索:この問題点の要因は,自発分極が基板面内にあるXカット板を用いているため,逆プロトン交換時に自発分極がランダムに再配置される可能性が高い.そこで,自発分極が基板に垂直方向に近く,かつLLSAWに対してほどほどの結合係数をもつ128°Yカット90°X伝搬LiNbO3の3インチウエハ上に提案構造を作製し,LLSAWの伝搬特性を評価した.その結果,試料上全面に圧電性が回復した領域が形成されたことを明らかにした. 2.光位相変調を用いた機能性の評価:自発分極のランダム化をより緩和させるために,初期プロトン交換後のアニーリング処理を検討した.ただし,アニーリング処理後には,埋め込みプロトン交換層が基板内部に拡散するため,表面波特性から逆プロトン交換層の圧電性を評価することは困難である.そこで,逆プロトン交換層を光導波路として光位相変調器を作製,位相変調特性より電気光学定数を測定することにより機能性を評価した.アニーリング処理により逆プロトン交換層の電気光学定数が 3割程度増加することを明らかにした.しかし,バルク値の64%の値に留まった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Xカットの基板に対して提案構造を作製することにより,これまで困難であった縦波型リーキー弾性表面波の低損失化を実証しているが,圧電性が回復しない領域が試料上に多いという問題点の解決を最優先に研究を遂行したため,当該年度に予定していた高周波帯における評価の実施には至らなかった.しかし,自発分極が垂直に近い基板に提案構造を適用することにより,圧電性が十分に回復することを明らかにしたので,今後の検討により,高周波・低損失・スプリアスフリー弾性表面波フィルタ用の基板構造の実現が見込まれる.以上の結果より,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
自発分極が垂直に近く,かつLLSAWの結合係数が大きなカットの基板への提案構造の適用を検討する.理論解析により提案構造を設けたLN上を伝搬するLLSAWに対して,伝搬損失と結合係数を計算し,カットと伝搬方位を決定する.そのカットのLN基板に実際に逆プロトン交換法を用いて提案構造を作製,評価用電極を形成し,温度特性を含めた伝搬特性を評価,検討する.また,並行して,電界を印加しながら逆プロトン交換処理を行うことにより,Xカット基板における分極のランダム性を解消させる試みを行い,圧電性回復を検討する.これらの検討により,高周波帯の高周波・低損失・スプリアスフリーフィルタの試作と,その有効性の実証に繋げる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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