2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560378
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
福間 眞澄 松江工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (70228930)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 空間電荷 / 音波 / 高電圧 / 誘電体 / 計測 / 音響インピーダンス / パルス静電応力法 / 補正 |
Research Abstract |
空間電荷分布測定標準化のための信号補正技術の開発に関する研究は各年度において以下の通り実施する予定である。平成23年度は,現有設備を利用して測定した空間電荷分布信号と音響特性を用いて,空間電荷分布信号補正処理ソフトウエアの可能性を調査することが目的である。平成24年度は,高位置分解能装置(室温,分解能:現状の2倍)を試作し,平成23年度の研究成果の有効性を検証する。平成25年度は,高温用空間電荷分布測定装置において平成23年に行った信号補正を可能にする処理ソフトウエアを開発する。各年度は次年度以降の研究を行うための基礎検討も実施することとした。平成23年度に実施した研究内容は以下の通りである。補正処理を行う前段となる空間電荷分布信号を生成するシミュレーションソフトの開発を重点的に実施した。そのシミュレーションソフトにより,測定した音響パラメータから空間電荷分布信号が説明できることを確認した。音波の減衰係数の小さい塩化ビニル(PVC,0.5mm)および減衰係数の大きいシリコーンゴム(0.5mm)を試料として選び実験を行った。音響インピーダンス顕微鏡(AIM)とPEA法の融合した既存の装置により,各測定試料の音響特性(音速,減衰係数,音響インピーダンス)および上部電極の音響特性(音響インピーダンス)を測定した。また,数kVから数10kVの直流電圧を印加し,空間電荷分布の情報を含む音波信号(空間電荷分布信号)を測定した。これら測定結果について,平成23年度に作成したシミュレーションソフトにより,測定した試料および上部電極の音響インピーダンスから空間電荷分布の情報を含む音波信号が説明できることを確認した。これら実施内容から平成23年度の実施予定の研究目標は達成していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画内容としていた現有設備による空間電荷分布信号と試料と上部電極の音響特性の測定,およびシミュレーションのソフトの開発を進めた。計画したソフトは以下の2つを作成した。一つは,測定した試料と上部電極の音響特性から,測定した空間電荷分布信号を生成するシミュレーションソフトを開発した。もう一つは,最初に作成したシミュレーションソフトを変更(入力と出力を逆にして)し,測定した音響特性から空間電荷分布を生成するソフトを作成した。音波の減衰係数の小さい塩化ビニル(PVC,0.5mm)および減衰係数の大きいシリコーンゴム(0.5mm)を試料として選び、以下の測定を行った。そして,試料内部に電荷が存在せず,両電極界面に電荷が等しく存在する場合を仮定して,音響特性と装置の伝達関数から測定される空間電荷分布信号を算出し,測定結果と比較した。音波の減衰係数と上部電極と試料の音響特性の不整合についてのシミュレーションはほぼ目的通り達成できた(PVCの場合誤差1%以下,シリコーンゴムの場合誤差数%であった)。測定した試料の厚さは数100μmで,空間電荷分布測定としては,測定し易い条件で行ったため,塩化ビニル(PVC)のような音波の減衰係数の小さい試料ではほぼ予想通りの補正により目的の装置が有効であることが確認できた。しかし,シリコーンゴムのように軟らかく減衰係数の大きい試料では,音波の分散(音波の高周波成分では減衰が大きく,低周波数成分では減衰は比較的小さい)が大きく,信号の振幅を補正する減衰係数だけの補正では実験結果が説明できないことがわかった。これらから音波の分散についても補正が必要であることがわかった。この点は当初想定していない新たな課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究の準備として,平成23年度中には高分解能型の空間電荷分布測定装置とパルス発生装置と電極系について調査を行った。測定装置に利用するセンサ(圧電素子)については,現状では分極処理した厚さ9μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を利用している。平成24年度の目標としている分解能はこれまでの2倍であるため,現状の半分の厚さである約4μm程度のPVDFが必要となる。現在,4μmのPVDFを入手し,センサとして利用するための最適な分極処理の方法を実験中である。現在所有する高温の空間電荷分布測定装置を利用して,PVDFのキューリー高温である80から90℃で,数100Vの直流電圧を印加し,電圧印加の状態で室温に戻す)。平成23年度の予備実験から,高分解能の装置の作成には,センサの厚さだけでなく,音波の伝搬する電極の厚さを薄くする必要があることがわかった。通常の装置では音波の伝搬する電極の厚さは10mmとしている。しかし,10mmでは,音波の分散が大きくどうしても15μmの分解能が限界であることがわかった。24年度の高位置分解能を満足する装置の電極系では5から3mmの電極を用いた電極系の試作を進める。パルス発生装置,センサ信号増幅器および音響インピーダンス顕微鏡の機能を実現するための電子回路の製作も継続して行う。信号補正ソフトウエアについては,平成23年度に試作した数100μmの測定装置で利用できる信号補正ソフトウエアの開発を進める。ソフトウエア開発環境としては,デジタルオシロスコープからのデータの読み込みなどが可能なLabViewを利用して行う。 平成25年度には,高温用空間電荷分布測定装置において(A)の信号補正を可能にする処理ソフトウエアを開発することを目標にしているため,高温の装置で用いる圧電素子であるLiNbO3についても測定装置の電極系を試作する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,研究目標としている高分解能型の空間電荷分布測定装置に音響インピーダンス顕微鏡の機能を付加した装置を試作する。ハードウエアとしては,電極系や電子回路およびパルス発生装置の製作を行う。ソフトウエアとしては,平成23年度に行った数100μmの測定装置について実用できる程度の補正処理用のソフトウエアの開発を行う。ここで開発したソフトウエアの一部を改良して高分解能の装置に適用するものとする。電極厚さおよびシールド構造の異なる空間電荷測定装置の電極系の機械加工を外注する。センサについては,PVDFの他,LiNbO3も利用するため、取り付け方法などについて検討するために電極部品の試作を行う。必要になる部品加工も外注することになる。パルス発生装置については,パルス幅の異なる装置を数台試作する必要がある。これらハードウエアの研究開発のために,機械加工の他,電源装置,電子部品,高周波同軸ケーブル,高周波コネクタ等の電子部品(方向性結合器,半導体アナログスイッチ,アンプ,セミリジッドケーブル,SMAコネクタ,NIインターフェイス他)等の購入を行う。ソフトウエアの開発については,他の研究費で購入したLabView(2010年度版)を使用する。ソフトウエア開発のためにパソコン1台を購入する。また,研究成果の発表と空間電荷測定技術の調査のための旅費および論文掲載費などが研究遂行に必要となる。
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Research Products
(5 results)