2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560378
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
福間 眞澄 松江工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (70228930)
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Keywords | 空間電荷 / 計測 / 音波 / 音響インピーダンス / 誘電体 / PEA法 / 信号補正 / 高電圧 |
Research Abstract |
本研究の目的は空間電荷分布測定技術であるパルス静電応力(PEA)法を利用する場合の測定試料の音響特性に関する測定誤差の補正である。 このPEA法の原理は以下の通りである。測定する試料にパルス電界を印加し,試料内部または電極界面に存在する電荷に静電気力を働かせることで,電荷量に応じた音波を試料内部の存在位置で発生させる。発生した音波は試料内部を伝搬する。接地側電極の背面に取り付けた圧電素子によりその音波の時間変化を記録し,信号処理をすることで,試料内部の電荷分布を求める。圧電素子は近い位置で発生した音波から検出するため試料内の電荷分布を測定することができる。 PEA法では,上記のように測定に音波を利用しているために次のような場合に測定誤差が生じる。試料が柔らかく音波の減衰が起る場合にはパルス電界により発生した音波が試料内部で減衰してしまい正確に測定できない。電極と測定試料の音響インピーダンスが異なる場合には,上部電極界面での発生する音波の大きさが影響を受ける。音響特性や誘電率が異なる2層試料の場合,試料界面での音波の反射と透過が影響を受ける。 今年度の研究計画は,高位置分解能の高い装置を試作し,薄い試料の場合の音響特性データから補正の有効性を検証することであった。今年度,現有設備の電極系と電子回路を改良し,高位置分解能の高いPEA装置においても電極と試料界面の音波の反射信号の計測精度を向上させることが可能となった。また前年度に空間電荷分布信号を生成するシミュレーションソフトを基に補正ソフトを作成し補正が可能であることを確認した。音波の試料中の減衰補正については,減衰に関する音響特性の測定結果だけから補正するよりも,電極と測定試料の音響インピーダンスの測定結果を用いて空間電荷分布信号を補正した後,周波数特性を考慮し,試料中の音波の減衰を補正する方法が有効であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は空間電荷分布測定技術であるパルス静電応力(PEA)法の測定試料の音響特性に関する測定誤差の補正である。本研究の年次計画は以下の通りとなっている。平成23年度から25年度において,以下の項目の研究を実施することで前述の目的の空間電荷分布信号の補正を行う。 現有設備を利用して,測定した音響特性による空間電荷分布信号補正処理ソフトウエアを実用的な装置組み込みタイプで実現する(平成23年度)。高位置分解能装置(室温,分解能:現状の2倍)を試作し,提案する信号補正の有効性を検証する(平成24年度)。最終年度は,これまでの2年間の基礎的研究結果をもとに,信号補正を可能にする処理ソフトウエアを搭載した一般に使用できる空間電荷分布測定装置を実現する(平成25年度)。 平成24年度に行う高位置分解能の装置において,空間電荷分布測定と音響特性の同時測定を行い,信号補正のプログラムを装置に組込み可能なLabViewを利用して作成した。また,平成23年度に続き音波の減衰の大きい試料,厚さがきわめて厚い試料の空間電荷分布測定を実施し,減衰補正のシミュレーション(別の装置で測定した音響特性を基に空間電荷分布測定信号を算出し実測波形と比較した)も実施した。この結果から減衰補正には,研究開始時に想定していなかった音波減衰の周波数特性(分散特性)を補正に加える必要があることがわかった。この点以外は上記の年次計画の通りとなっている。また,平成24年度の研究成果としてPEA法で必ず使用しなければならない半導電電極(音響特性が試料に近い導電性電極)を,本研究成果となる装置を利用すれば通常の金属電極でも測定できる可能性があることがわかってきた。半導電電極からの導電性物質が測定する試料の特性を左右しているとの指摘もあり,本装置が対策として有効である可能性もある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には,平成23年度に続き高位置分解能の装置において空間電荷分布測定と音響特性の同時測定を行い測定系となる電子回路および信号補正のプログラムを装置に組込み可能なLabView(ナショナルインスツルメンツの計測器制御に利用されるソフトウエア開発ツール)を利用して作成した。試料厚さが厚い場合と薄い場合にについて音響特性を補正可能な目的のPEA装置の開発の基礎的研究をほぼ年次計画の通り進めることができた。 今年度は,装置の電極系とパルス発生装置を新たに用意し,測定者が操作しやすい環境で測定ができるようにソフトウエアを見直し,音響特性を補正可能な標準的PEA測定装置を試作する。 上記の装置の製作と並行して,PEA法で必ず使用しなければならないとされる半導電電極(音響特性が試料に近い導電性電極)を使用せず,通常の金属電極で測定可能かどうかの実験的検証を実施し,半導電シートを使用しない場合と半導電シートを利用した場合の空間電荷分布の測定結果を整理する。音響特性を補正して測定することの有効性を確認し,装置の開発と測定結果を学会で発表する。PEA測定時に半導電シートからの導電性物質が測定する試料の特性を左右している可能性も指摘されており,本測定装置が対策として有用であれば,本研究の大きな成果となると期待している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究推進に示した通り,本提案の標準的PEA測定装置の試作を行うために,今年度はPEA標準的装置の電極系の機械加工を外注し製作する費用とパルス発生装置等を新たに用意するために電子部品を購入する。本装置の有効を調査するための測定に係わる消耗品の購入を行う。また,研究成果を報告するための電気学会への論文投稿ならびに学会発表の出張旅費に,計画の研究費を使用させていただく予定である。
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Research Products
(6 results)