2012 Fiscal Year Research-status Report
低消費電力スピン制御デバイス用低スピンダンピング磁性材料の探索
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23560384
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
高橋 豊 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (00260456)
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Keywords | スピントロニクス / 磁気記録 / 強磁性共鳴測定 / 磁気緩和係数 / 3d遷移金属 / RFマグネトロンスパッタリング |
Research Abstract |
磁性薄膜の磁気緩和係数の大きさを決める物理的メカニズムを明らかにするために、3d遷移金属であるFe薄膜に同じ3d遷移金属であるCoおよびNiを微量添加して、磁気緩和係数の組成依存を測定している。昨年度の研究でFeにCoを微量添加した系では磁気緩和係数は組成に依存して上昇することが示された。磁気緩和は理論的に室温付近では電子の並進運動の運動量緩和時間に反比例すると考えられるので、Co原子がランダムな位置に微量添加されたために電子の散乱頻度が上昇して、磁気緩和係数の増加につながったと見ることができる。これを確認するために(1)FeCo系の薄膜をアニーリングして同じ組成のas depo.の膜との比較を行う、(2)Coに代わってスピン軌道相互作用の異なるNiをFeに微量添加した膜を作製してFeCo系と組成依存に違いが出て来るかを検討する、という2つの項目について研究を進めてきた。 (1)Fe(1-x)Co(x)系ではx <0.06、膜厚100 nmの薄膜を作製した。X線回折ピークはアニーリングにより先鋭化することが示され、結晶状態は改善していると考えられる。しかし静的な磁気特性は飽和磁化および面内の磁気異方性ともにアニーリングによる変化は見られない。今後強磁性共鳴により磁気緩和係数の変化を測定する。 (2) Fe(1-x)Ni(x)系では膜厚100 nm、x <0.13までの薄膜を作製した。XRDでは明瞭な(002)面からの回折ピークが測定され良好な結晶状態を示している。VSMによる磁化測定では、Niの組成が変化しても飽和磁化の大きさに変化は見られなかった。磁気異方性は[100]方向を容易軸とする面内4回対称を示している。膜厚12 nm, x = 0.03の試料で磁気緩和係数を測定したところ、Fe単体よりわずかに大きい値が測定された。今後他の組成について詳細に測定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
震災復興に関連し、測定装置が入っている棟に改修工事が行われた。この際装置の移設および再立ち上げに1カ月以上の時間を費やしたためにとくに試料振動型磁力計と強磁性共鳴装置を使用する測定に遅れが出た。
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Strategy for Future Research Activity |
磁気緩和の物理的メカニズムを明らかにするためにFeCo系でas-depo.試料とアニーリング試料の比較を行っている。アニーリングにより結晶状態は改善しているがVSMで測定した静的な磁気特性には変化がみられていない。強磁性共鳴法により高速磁気応答を測定して磁気緩和係数のアニーリングによる変化を検討していく。新たにFeNi系試料の作製を行っており、エピ成長した膜が得られているようであるので詳細な強磁性共鳴測定を行い磁気緩和メカニズムへの知見を得る。 素子が稼働している状況を想定し、電流が流れている条件下での強磁性共鳴測定を行う。第1段階として磁気異方性が小さく、すでに素姓のよくわかっているパーマロイを使い比較的低い周波数(Xバンド)での測定から始める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)