2012 Fiscal Year Research-status Report
可変周波数SAW共振子の開発とその応用に関する研究
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23560386
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大森 達也 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60302527)
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Keywords | 波動利用工学 / 弾性波デバイス / 可変周波数共振子 / 可変周波数発振回路 |
Research Abstract |
平成24年度は当該研究二年目にあたって、弾性表面波(SAW)共振子そのものの検討に加え、可変周波数発振回路についての検討も積極的に行った。 可変周波数発振回路については、その構成要素となるDual-T回路について、本研究者の所属するグループで開発を行っている銅電極を用いた超広帯域SAW共振子を適用した場合の回路設計ならびに試作を行った。この結果、試作したDual-T回路の制御電圧を制御することにより、500MHz帯において約2%程度にわたって、連続的にノッチ周波数を制御できることを明らかにした。一方で、試作回路の周波数特性はシミュレーションに比べて周波数の低下を生じていたが、検討の結果、SAW共振子を回路を接続するボンディングワイヤによる寄生インダクタンスが原因であることを明らかにした。また、周波数の可変範囲については、まだ余裕があり、使用する共振子と周辺回路の最適化を行えば更なる広帯域化が可能である事をシミュレーションにより明らかにした。 一方、これらSAW共振子を用いて発振回路を構成する際、低位相雑音を実現するために、共振子には高いQ値が必要とされる。そこで、本研究者らの開発した超高速弾性振動可視化システムを用いて、Q値低下の原因となるSAW共振子からのエネルギー漏洩を詳細に観察した。この結果については、現在解析を行っている途中である。また、これらの高安定・広可変発振回路と組み合わせて無線システムを構成することを見越して、再帰型の可変周波数増幅器についても検討を行い、20MHz帯域のバターワース特性を保持したまま250~450MHzの範囲での周波数制御を実現することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度より可変周波数発振回路の検討を前倒したため、今年度も引続きこれについての検討を行った。これにより、解析および試作を通して、一定の結果が得られ、この成果を元にして広可変かつ高安定な発振回路の実現に一定の目処をたてることができた。この成果の一部は10月にドレスデン(独)にて開催された国際会議にて発表をされた。 また、無線システムにおける周辺回路としての可変周波数増幅回路についての検討も前倒して検討し、一定の成果を得ることができた。この成果については、本年10月にニュルンベルグ(独)で開催される国際会議にて発表することが決定している。一方で、回路の検討を優先したため、SAW可変周波数共振子単体での検討に少々の遅れを生じており、今年度の優先検討課題とする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
発振回路応用ならびにシステム応用に関して一定の方針が確立したため、本年度はSAW共振子の更なる改良を再び優先的に検討することとする予定である。具体的には「たわみを利用した可変周波数共振子」の実装方法、ならびに、たわみの制御方法についての検討を行う予定である。また、研究最終年度であることから、本研究で検討した成果を合わせ、広可変かつ低位相雑音な可変周波数発振回路を試作し、本研究のデモンストレーションとすることも検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はSAW共振子の試作回数が増えることが予想されるため、この試作で使用する、薬品類、材料費、評価で使用するプローブなどの消耗品類の購入に対し、研究費を重点的に充当する予定である。また、昨年度に引続き、回路試作で使用するジグ類や、電子部品の購入に対しても消耗品費を充てる計画である。 なお、これらの検討で明らかになった成果の発表を行うため、学会参加のための旅費を予定している。
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