2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560389
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
本城 和彦 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90334573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 亮 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (30333892)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 単電子トランジスタ / HEMT / HBT / 電力利得 / T-CAD / トランスファーレジスタ |
Research Abstract |
今年度はSETの持つ高周波特性を有能電力利得の視点でモデリングの第一段階として、従来型高速高周波デバイスであるInGaP/GaAs HBTおよびGaN-HEMTと単電子トランジスタとの電力利得における比較をデバイス工学とマイクロ波工学の視点から実施し理論を体系化した。従来型の高周波デバイスでは、バイポーラ型の典型であるHBTのみならず、FET型の典型のHEMTにおいても、一定の電流が低インピーダンス領域から構成される入力端子から高インピーダンス領域から構成される出力端子に注入されることにより電力利得を発生するいわゆるトランスファーレジスタメカニズムを有することを確認した。加えてFET型デバイスでは相互コンダクタンスをできるだけ大きくするとともに入力容量を出来るだけ小さくすることが電力利得増大に効果的である。この原理を一般化し単電子トランジスタに当てはめると、入力抵抗と入力容量は出来るだけ小さくし、入力電圧で制御させる電流を大きく保つ一方で出力抵抗を出来るだけ大きくする構造を目指すことが重要である。単電子トランジスタでは入力容量が小さいことは優れているが、入力電圧によって制御される電流が電子一個から構成されるため相互コンダクタンスは極めて小さく不利である。しかしながら入力側に構成されるトンネル接合を薄くし、出力側に構成されるトンネル接合を厚く構成することにより、トランスファーレジスタ構造をより有利に実現できる可能性があることが分かった。このためシュレーディンガー方程式に対応できるT-CADを導入し、不確定性原理の制限化において入出力層の抵抗比率をどこまで大きく出来るか検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高速動作において重要な高周波における電力利得に関して単電子トランジスタが抱えている構造上の問題点が明らかとなり、改善の方向が示された。特にHBTやHEMTなど実用化されている従来デバイスとの比較において単電子トランジスタの動作を系統的に位置づけることに成功した。HBTとしては最大発振周波数が80GHzのInGaP/GaAsHBTの大信号デバイスパラメータを高精度で抽出し、電力利得の計算値が測定値と良く一致するようになった。またHEMTに関しては最大発振周波数が35GHzのGaNHEMTの大信号デバイスパラメータを高精度で抽出し電力利得の計算値と測定値を略一致させることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
化合物半導体を用いた単電子トランジスタのT-CADによるシミュレーションを実施し、入出力トンネル接合層の厚みのバランスと電力利得の関係を明らかにする。入力抵抗の削減と相互コンダクタンスの増大という2つの方向に対して複数単電子注入ゲートを有するトランジスタ構造の特性を調べる。単電子トランジスタの入力接合構造と出力接合構造のそれぞれに対してシュレーディンガー方程式を解き、接合面積と接合厚さをパラメータとして内部抵抗を計算する。抽出した内部抵抗を用いて電力利得を見積る。さらに、単電子トランジスタ全体のデバイスシミュレーションを実施し、相互コンダクタンスの値を計算する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に引き続きデバイスシミュレーションに使用するT-CADのリース費として約70万円、海外学会出張費に約30万円、および高周波プローブ部品の購入に残り30万円を充てる。
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