2013 Fiscal Year Research-status Report
極低消費電力LSIの実現に向けたグリーンナノデバイスの研究
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23560395
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
土屋 英昭 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80252790)
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Keywords | グラフェン / III-V MOS / ナノワイヤFET / ウィグナーモンテカルロ法 / ジャンクションレス・トランジスタ / シリセン / ゲルマネン |
Research Abstract |
平成25年度はグラフェンナノリボンFETとInAsナノワイヤFETとの性能比較を行った。両者とも低消費電力トランジスタとして期待されていることから、FETのスイッティング電力に相当するPDP(電力遅延積)を重要な性能指標の一つとして検討を行った。その結果、LSI内の単位面積当たりのPDPで比較すると、シングルゲート構造のグラフェンナノリボンFETがInAsナノワイヤFETよりも低消費電力動作が可能であることを見出した。特に、ゲート酸化膜の厚さを薄くするほど、グラフェンナノリボンFETの優位性が顕著になることが分かった。この知見は、LSIの省電力化に向けたグラフェンFETの研究に強いモチベーションを与えるものである。 一方、シリコンダブルゲート構造MOSFETに対して、準バリスティック輸送係数を抽出することに成功した。チャネル長が10nmまでは短チャネル化によりバリスティック効率が向上するが、チャネル長が10nm以下になるとチャネルの膜厚揺らぎに起因する新たな表面ラフネス散乱が顕在化し始め、バリスティック効率は急激に低下することを見出した。この結果は、現在のシリコンテクノロジーではチャネル長が10nm以下になるとMOSFETの性能向上が本質的に困難になることを示唆しており、微細化限界を議論する上で重要な知見を与えている。 また、従来の常識を覆す新概念デバイスであるジャンクションレス・トランジスタの性能評価を行った。ジャンクションレス・トランジスタは従来型トランジスタに比べて表面ラフネス散乱が大きく低減するため、たとえチャネル内で不純物散乱が発生しても、従来型と同等の性能を維持できることが分かった。ジャンクションレス・トランジスタは微細化が容易なデバイス構造をしているため、従来型トランジスタと同等の性能を維持したまま更なる微細化を可能にする技術として注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究により、グラフェンチャネルのバンド構造を計算するための強束縛近似バンド構造計算法を確立するとともに、今年度はグラフェンFETおよびナノワイヤFETのスイッティング電力の評価を可能とするデバイスシミュレータの開発に成功した。 一方、シリコンMOSFETに対しては、フォノン散乱、界面ラフネス散乱および不純物散乱を取り入れた高精度なウィグナー・モンテカルロシミュレータの開発を完了しており、今年度はさらに、サブ10nmのチャネル長デバイスの性能を評価する際に必要となる準バリスティック輸送係数の抽出機能を追加した。今年度はさらに、新概念デバイスであるジャンクションレス・トランジスタの性能評価にも成功している。以上のことから、次世代の低消費電力デバイスとして期待されている様々な新材料・新構造デバイスの設計指針の構築に向けた研究基盤の構築が順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
炭素原子で構成されるグラフェンよりも現在のシリコンLSIとの親和性が高いシリセンおよびゲルマネンのFETチャネルとしての潜在性能を検討する。シリセン(ゲルマネン)はシリコン(ゲルマニウム)版グラフェンと言われており、炭素原子の代わりにシリコン(ゲルマニウム)原子が2次元ハニカム状に並んだ薄膜である。シリセンおよびゲルマネンもバンドギャップを持たないため、リボン構造にすることを考えていく。これまでに開発したグラフェンナノリボンFETのシミュレータをシリセンナノリボンFETとゲルマネンナノリボンFETに適用させて、3種類のFETの性能比較を行っていく。 グラフェンに関してはこの他、様々な基板(SiO2, HfO2, BN等)上に堆積した時の電子移動度の解析にも取り組む。基板からの光学フォノン散乱や基板表面に存在する荷電不純物からの散乱を計算に取り入れ、電子移動度の実験結果と比較を行う。 ジャンクションレス・トランジスタに関しては、様々なチャネル長に対する系統的な解析を行い、従来型トランジスタに対する性能比のチャネル長依存性を明らかにする。ジャンクションレス・トランジスタの実用化には、ナノワイヤ型への拡張が不可欠であるので、キャリアの散乱レートを1次元電子ガスに対応させる。現在までに、フォノン散乱、界面ラフネス散乱そして不純物散乱の1次元電子ガスに対する散乱レートの計算に成功しているので、次年度にはそれらをナノワイヤ型ジャンクションレス・トランジスタのモンテカルロシミュレータに組み込む研究を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額がわずかに残ったため次年度に繰り越ししたため。 次年度の予算と合わせて、その他消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(15 results)