2011 Fiscal Year Research-status Report
1.55μm帯偏光双安定デバイスの超高速スイッチング特性の測定・評価
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23560396
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
片山 健夫 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (80313360)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 光スイッチ / 高性能レーザ / 応用光学・量子光工学 / 計測工学 / 先端機能デバイス |
Research Abstract |
情報通信において、通信量と消費電力の増大が大きな問題となっており、全光型通信の実現が求められている。その実現には、光通信波長帯の1.55 μm帯で動作し、高速な光信号が電気変換なく記録できる光バッファメモリの実現が大きな課題となっている。本研究の目的は、全光型メモリに適用可能で、世界最高速のスイッチング速度で動作可能な面発光半導体レーザ(VCSEL)の1)偏光スイッチのスイッチングの過渡応答を測定し、2)偏光双安定スイッチの機構を解明し、3)さらなる高速化を目指したVCSELの構造を設計することである。本年度はまず初めに偏光スイッチングの一形態として、偏光双安定VCSELの発振光の偏光を90度回転して戻す簡便な光学系で、自己偏光スイッチング動作を実現して、評価した。この光学系では、外部ミラーとVCSEL間隔に反比例して偏光スイッチングの繰り返し周期が高速になった。そして、外部ミラーとVCSEL間隔を短くすると、光学系の機械的安定性が偏光スイッチング動作の安定性に大きく影響することが分かった。厚さ8 μmのポリイミド薄膜1/4波長板とハーフミラーをVCSELのマウントと一体化して安定にし、外部共振器長13.1 mmの光学系で繰り返し周波数5.1 GHzの光パルスを実現した。また、偏光双安定VCSELの低消費電力動作に関する検討も行った。作製が比較的容易な0.98 μm帯VCSELに酸化狭窄構造を導入し、このVCSELに外部から光を注入することにより、発振偏光のスイッチを行う全光型フリップ・フロップ動作を実証した。0.85 mAのバイアス電流で駆動し、5 Gb/s NRZ信号に相当する200 ps幅の光パルスを入力したところ発振偏光がスイッチし、再び直交偏光の光パルスを入力するまでその状態を保持した。このバイアス電流値は全光型双安定素子としては最小の駆動電流である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の初年度であるH23年度は、高速オシロスコープを用いた自己偏光スイッチングの測定や、VCSELの発振光と注入光の波長差をRFスペクトラムアナライザによりビート信号で測定する手法、機械的安定性の高い光学系の構築などの基礎的な研究に時間を費やしたため、当初計画より多少遅れている。しかし、VCSELとコリメートレンズなどの外部光学系を一体化して安定にする技術を導入することで、周期194 psの光パルスのタイミングジッタが13.5 psから3.9 psへ大きく改善した。また、偏光双安定VCSELの直交する発振偏光の波長はわずか(0.03~0.1 nm程度)に異なるが、光の一部を戻すことにより5 GHz程度の偏光スイッチングという知見が研究初期の段階で得られた。こうした基礎技術は、高速な偏光スイッチング特性の測定と解析を目指す本研究においては重要であり、これらの知見を得たことで本年度は計画通りに研究が遂行可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
超高速な偏光スイッチングの過渡応答特性を測定するために、光相互相関測定系の構築を行う。サンプリング光と直交した偏光方向の光とのみSFG発生するType-IIの位相整合を起こす非線形光学結晶を導入し、VCSELの短光パルスに対する応答特性を評価する。Type-IIの測定と同時にType-Iの測定を行うことにより、一方の偏光モードの立ち上がりと同時に、直交する偏光モードの立下りを測定でき、両偏光モードが相補的に切り替わっているかどうかを正確に測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は研究の進展に応じて予算の執行を行った結果、当初計画より少ない金額で研究を遂行することが可能であった。研究初期の段階で、有効な光学系安定化技術を見出したため、本年度はそれらと併せて研究を加速する。マルチチャンネル分光器を購入し、周波数分解したSFG測定により、位相変化まで含めたスイッチング特性を測定する。さらに、高速なRFスペクトラムアナライザーをリースにより導入し、H23年度に得られたVCSELの発振光と注入光の波長差をビート信号で測定する手法で精密に測定し、スイッチングの過渡応答特性を評価する。
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Research Products
(4 results)