2012 Fiscal Year Research-status Report
平板回路上に集積化して形成する液晶ミリ波制御デバイスに関する研究
Project/Area Number |
23560405
|
Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
能勢 敏明 秋田県立大学, システム科学技術学部, 教授 (00180745)
|
Keywords | ミリ波 / 液晶 / 位相変調器 / マイクロストリップライン / ビームステアリング |
Research Abstract |
平板型で良好な伝搬特性を有する高周波回路として良く知られているマイクロストリップライン(MSL)を基本回路として用い、基板上部へ液晶層を集積化する方法によってミリ波帯における位相変調器を実現する試みを行っている。本デバイスでは、通常のMSL部分と上部へ液晶層を導入して形成する反転型マイクロストリップライン(I-MSL)部分との間を低損失でつなぐ、特殊な変換回路の開発が重要な課題である。これまで、スルーホールを設置した基本構造を開発しその基本動作を確認したが、動作周波数が限られていた。そこで本研究では第一に、最も大きな損失を生んでいる変換回路部分の最適化によるデバイスの損失低減を図った。変換回路におけるキーとなるスルーホールの数を最低限の2対とし、信号線に近付ける構造により高周波側の透過率が大幅に改善され、動作周波数も大きく改善された。 次に、メアンダー構造の導入によって単位長さ当たりの位相変調量が大幅に低下してしまう問題を解明する為に、同じ電極構造を有するガラス基板を用いた液晶セルを作製し、電圧印加に伴う液晶分子配向効果について詳しく調べた。その結果、電極エッジの不均一電界分布による典型的な分子配向欠陥の発生は確認されたものの、位相変調量の大幅な低下を説明できるような原因にはなっていない事を明らかにした。変調量低下の原因はまだ特定されていないが、電極構造そのものの見直しが必要である事が分かった。 更に、液晶材料の最適化を進める観点から、種々の材料について比較検討を行った。詳細な検討によって、市販のネマティック液晶の間での優劣が明らかになった。また、長い共役結合を分子中核に持つ極めて大きな複屈折を有する液晶材料の中で、ミリ波帯において損失が小さいものがある事を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に比べると改善の度合いは小さいものの更に高い周波数での動作が可能となり、測定精度の問題はあるが少なくとも測定器の限界である65GHzまでの動作を確認した。また、素子全体の損失レベルが小さくなって来たため、素子作製の精度や測定時のコネクタ取り付け精度等による性能のばらつきが、素子特性全体へ及ぼす影響の割合が大きくなってきた。従って、これまであまり問題になっていなかった周辺部分が新たな課題として浮かび上がっている等、次の研究フェーズへの移行を考慮すべき状況まで進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
はじめに、変換回路部分の損失やコネクタによる損失等の定量的な見積もりを行う等、周辺部分を含めた素子性能を制限する残された因子を明らかにする。これらの結果を基に、各部の最適化を行って更なる低損失化を目指すると共に、液晶位相変調器自身の本来の期待される性能を正しく評価する事を目指す。 また、素子の性能向上に伴い液晶材料による影響も全体の性能に大きく影響し始めている事から、昨年度に見出した新しいタイプの液晶材料に注目して期待される改善効果について検討を進める。 最終年度にあたり、研究の進捗状況に応じてアンテナとの集積化回路の試作を行いアレイ化における課題等を明らかにする事によって、次の研究フェーズへの足掛かりを作っておく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
必要機器は2年度までに整備を行ったため、主に高周波回路部品や素子作製のための消耗品等に使用する予定である。特に、昨年度明らかにした新しいタイプの液晶材料は、まだ市販されていないためその入手が大きな課題になる。探索のためには外部の研究者の協力が不可欠となり、研究調査あるいは打ち合わせの為の旅費等の支出が考えられる。
|
Research Products
(11 results)