2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560406
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Research Institution | The University of Aizu |
Principal Investigator |
束原 恒夫 会津大学, コンピュータ理工学部, 教授 (10433153)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 電子デバイス・機器 / RF回路 / 直交変調器 / 直交復調器 / 無線通信 / CMOSデバイス |
Research Abstract |
最初に、アクティブ型直交ミキサの低電圧動作化(1.8V以下)の研究を実施した。さらに、パッシブ型ミキサの適用による低電圧化についても、計画を前倒して検討を進めた。複素型直交変調器には2個のアクティブ型の直交ミキサが使われる。この直交ミキサはローカル(LO)信号の位相誤差を補償する効果を持つことが、本提案の特長である。直交ミキサ1の出力IIと直交ミキサ2の出力QQは減算器により引き算され、同相RF出力を生成する。一方、直交ミキサ1の出力IQと直交ミキサ2の出力QIは加算器により加えられて、直交RF出力を生成する。これにより、複素型のRF変調信号が得られる。さらに、直交RF信号は、複素フィルタに入力されて、負周波数領域の不要なRF信号を抑圧して、高精度のRF変調信号を出力する。 アクティブ型直交ミキサについては、折返しカスコード手法を適用することで、1.5Vの低電圧動作を可能とした。位相誤差補償メカニズムは従来手法と同様である。複素フィルタとして、理想的なRCポリフェーズ・フィルタを用いた構成により、従来の変調器として比較して、SSB (Single Sideband)変調のときに、不要サイドバンド抑圧比が100dB以上、改善できることを明らかにした。 一方、パッシブ型変調器では、トランジスタによるスイッチで直交ミキサを構成した。さらに、2逓倍器と1/2分周器の組み合わせによる直交ローカル信号発生器を新たに考案した。位相補償効果は、元になる直交ローカル信号から2倍の周波数を発生させる新型2逓倍回路にて、アクティブ型直交ミキサと同様に行われる。1/2分周器の電源電圧の制限から、まだ1.8V動作であるが、RCポリフェーズ・フィルタを用いた構成により、従来の変調器として比較して、SSB変調のときに、不要サイドバンド抑圧比が100dB以上、改善できることを同様に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アクティブ型およびパッシブ型直交変調器、いずれの構成においても、1.8V以下の電源電圧で、15mW以下の消費電力を実現できる見通しが得られたが、パッシブ型で用いた1/2分周器の低電圧動作化が新たな課題であることが明らかになった。しかし、H23年度の当初計画においては、アクティブ型直交変調器の低電圧・低消費電力化のみを計画していたが、パッシブ型直交変調器の検討も前倒して、実行できたので100%以上の達成度と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に購入した備品である「ベクトル信号発生器」については、各社の製品を調査することで、性能・規格が同等でより低価格な製品を選定することができたので、研究費に繰越し額が生じた。H23年度において回路検討の方も前倒しされたので、H24年度では、パッシブ型直交変調器について、さらなる低電圧・低消費電力を進めるとともに、当初予定通り、雑音発生の少ないLC型複素フィルタの検討を行う。繰越し額もあるので、テストチップの試作も前倒しして進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度において明確化したアクティブ型交直交変調器の回路構成を元に、要素回路の試作、ならびにパッシブ型直交ミキサを用いた変復調器の低電圧動作化ならびにLC型複素フィルタの研究を実施する。低電圧動作のアクティブ型直交変復調器については、レイアウト設計までを大学で実施し、東京大学VDEC等を用いてテストチップ (TEG)試作を行い、実験的に有効性を確認していく。さらに、低電圧動作化を進めたパッシブ型交直交変調器を提案し、早めにテストチップ試作まで進める。パッシブ型では1/2分周器が低電圧化のボトルネックであったので、本回路へも折返しカスコードや折返しカレントミラなどの手法を適用するなどして、低電圧化を推進する。 複素フィルタについては、RCポリフェーズ・フィルタでは所望信号の減衰と雑音増加の欠点があるため、雑音源となる抵抗を極力用いないLC型フィルタを提案していく。構成としては、(a)負周波数領域に減衰特性を設けるポリフェーズ・フィルタ型と(b)正周波数領域にバンドパス特性を持たせる複素バンドパス・フィルタ型の両面で、検討する。複素バンドパス・フィルタ型は、不要な近傍信号と雑音も減衰させることができるので、無線通信には好ましい。さらに、上記の構成に加えて、広帯域性を持たせるために、カットオフ周波数の可変化を検討していく。なお、以上述べた要素回路技術は、複素型直交復調器の高性能化にも適用を開始する。
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Research Products
(3 results)