2011 Fiscal Year Research-status Report
石英光ファイバ表面の高温照削現象の解明と光制御技術への応用に関する研究
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23560407
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
勝山 豊 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00295726)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光ファイバセンサ / 長周期光ファイバグレーティング / 分布センサ / レーザ加工 / 照削 |
Research Abstract |
計画に従い、照削現象の解明とその応用について検討した。(1).ファイバ照削システムの構築:光ファイバを両端固定し、各固定点の3軸微動とファイバ軸方向の回転が、連動して動作するシステムを構築した。このシステムにより、CO2レーザを照射し、長周期グレーティング(LPFG)の書き込みと、ファイバの照削ができることを確認した。(2).石英の加熱と照削量の基礎検討:CO2レーザ照射による石英の温度上昇を測定するため、放射温度計を購入し、高温測定をパソコン制御で可能とした。構築したシステムに石英版(60mm長x10mm幅x2mm厚)を取り付け、CO2レーザを照射して照削実験を行ったところ、石英が照削されるものの、照削部に石英微細粒が白く堆積する予想外の結果となった。高温で昇華した石英分子が結晶化しているものと推定している。本現象は、光部品に局所的に石英を追加する加工法の可能性があるため、別途検討することとした。(3).照削の最小エネルギーとクラッド屈折率増加の解明:照射エネルギーと照削量の関係を定量化し、照削に必要なCO2レーザの最小エネルギーが存在することを実験的に明らかにした。また、LPFGの多重に照削によるλrのシフトを利用するが、照削によりλrが短波長側にシフトする原因は解明されていなかった。これを明確にするため、λrの外部媒体屈折率依存性を測定する方法を提案し、照削によりクラッドの屈折率が増加することを初めて明確にした。非照削部分は昇華点近くまで加熱された後に急冷され、密度上昇により屈折率が増加したものと推定できる。(4).前(3)項の結果により、λrの屈折率依存性を正確に評価できるようになったため、応用として、蔗糖を発酵させてエタノールを作成する過程で必要になるエタノール濃度センシングを検討し、作成したLPFGでセンシング可能なことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究の到達点は次の2点である。(1).石英の照削特性の解明と同軸形ファイバ、Dファイバの作成(2).照削の導波光への影響明確化と応用想定した到達点に対応して、平成23年度の実施項目は、(a)ファイバ照削システムの構築、(b)石英の加熱と照削量の基礎検討、(c)LP11モードフィルタの検討、の3項を挙げている。ファイバ照削システムは予定通り構築し、本システムによりLPFGの作成と照削を行っている。石英の加熱と照削量の関係は、照削に必要な最小エネルギーが存在することを明確にし、片面の照削でDファイバが、90度ずつ回転させて各面を照削することで同軸型に照削したファイバが作成可能であることを示した。照削の導波光への影響については、照削がクラッドの屈折率を増加させる効果を有することを明らかにした。この結果は、照削によってクラッドの屈折率を増加させることで導波条件が変化するため、共振波長λrが変化するもので、実際にファイバ表面を照削した後にグレーティングを書き込んだLPFGの共振波長λrは、短波長側にシフトすることが実験的に確認できた。これは、λrが短波長側にシフトすることを説明する最初の結果である。照削の応用では、LP11モードフィルタを想定していたが、クラッドの屈折率変化測定用に共振波長の外部屈折率依存性を評価する新しい手法(温度スキャン法)を提案し、本手法により外部媒体の屈折率をセンシングできることが分かったため、この応用を新しく立ち上げた。すなわち、蔗糖を発酵させてエタノールを作成する過程で必要になるエタノール濃度センシングを検討し、作成したLPFGでセンシング可能なことを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1).平成23年度計画との対応:当初計画では、石英の加熱と照削の基礎検討として、CO2レーザによる加熱条件と照削量の関係の明確化を石英板に対して行う予定であったが、研究実績の概要欄に記載したように、CO2レーザ照射により石英板は照削されるものの、石英微細粒が白く堆積する予想外の結果となった。このため、当初予定した画像モニタ計、光学系などの備品の購入を中止し、また石英板などの消耗品購入も進めなかった。この結果、関連する予算が余り、平成24年度に繰り越した。(2).今後の研究の推進方策(2-1).CO2レーザ照射により石英板に石英微細粒が白く堆積する現象は新規の知見で、この現象を光部品に局所的に石英を追加する加工法としての可能性を検討する。このため、堆積した微細粒を再ガラス化する加熱法を検討する。方策として、CO2レーザによる再加熱、放電加熱の2点を取り上げる。CO2レーザによる再加熱を行うため、集光レンズなどの光学系に予算を充てる。(2-2).今までの検討で、照削に関する基礎事項が明確になってきたので、これをさらに進展させる。具体的には、照削が発生する最小エネルギーが明確化できたため、これより若干大きなエネルギーを照射すると微細な照削ができる。これにより、1回の照射による照削精度を微細化できるため、高精度な照削が行える。この手法を明確化する。また、照削によるクラッドの屈折率増加量を測定する手法を明確化できたため、各種照削条件と屈折率増加量の関係を明確化し、共振波長λrの正確なシフトを行ってλrが異なるLPFGの多重数の増加を目指す。(2-3).応用については、計画していた分布型LPFGの作成を進める。適用技術は、(2-2)項の照削によるλrの正確なシフトであり、温度分布、特に災害時の原子力発電所の内部異常に起因する高温部を遠隔検出する分布型LPFGの実現を目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の今後の研究の推進方策に対応し、以下の研究費使用計画を想定する。(1).石英微細粒の再ガラス化:照削により堆積した石英微細粒を再ガラス化するため、CO2レーザ光照射による再加熱に必要な集光レンズなどの光学系(400千円)、石英板の位置制御用に微動台(500千円)を購入する。(2).部品・材料費:石英板、LPFG作成用光ファイバ、クラッド屈折率測定用基準屈折液などの消耗品に510千円を充てる。(3).旅費:研究成果の早期発表のため、国際会議で発表し、本研究のプライオリティを確保する。2回分で900千円を見込む。(4).その他:論文掲載費などで200千円を見込む。
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