2011 Fiscal Year Research-status Report
量子ドットアレイ導波路を用いた広帯域光デバイス開発に関する研究
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23560412
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
下村 和彦 上智大学, 理工学部, 教授 (90222041)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 量子ドット / 広帯域光通信 / 光デバイス / 有機金属気相成長 / アレイ導波路 |
Research Abstract |
通信トラフィック量の増加に対応すべく大容量光通信システムの通信波長帯域は従来のS,C.Lバンドを超えてさらに拡大することが予想される。本研究はこの広帯域光通信システムに適用可能な数100nm波長帯域で動作する光デバイスを量子ドットアレイ導波路を用いて実現すること、また量子ドット構造の基本的物性値を測定し、光デバイス設計のための知見を得ることを目的とした研究である。量子ドットアレイ導波路は有機金属気相成長法による選択成長を用いたS-K量子ドットのバンド端制御、ダブルキャップ法による量子ドット高さ制御、バッファ層組成変化による歪制御を用いて作製する。広帯域LEDにおいて広帯域動作をするためには、アレイ導波路ごとにまた多層構造において層ごとに発光波長を大きく変化させる構造が必要である。広帯域発光を得るための量子ドット成長条件として、バッファ層の成長条件である温度、圧力、V/III流量比、層厚の最適化、またダブルキャップ法での第一キャップ層と第二キャップ層の組成変化による歪制御とその広帯域発光条件の把握を行った。また光増幅器をアレイ状に並べて集積し最終的に数100nmの帯域を持つ光増幅器を検討する。量子ドットアレイ導波路を波長スイッチに応用するために、量子ドット構造と量子井戸構造における屈折率変化量を実際に測定、比較し、広帯域動作可能な光スイッチ・波長スイッチへの応用を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子ドットアレイ導波路は非対称マスクを用いた選択成長を用いてS-K成長モードにより量子ドットを成長した。そして量子ドット高さはダブルキャップ法の第一キャップ層の成長時間を変えることによって制御し、またバッファ層の組成を変化することによって量子ドットの歪量を制御した。3層量子ドット構造として、GaInAsバッファ層と第一キャップ層厚を(0.47,2.5nm)、(0.47,0.5nm)、(0.38,4.5nm)の量子ドットアレイ導波路を成長し、LED素子を試作した。電流注入量250mAにおいて半値幅440nmの広帯域発光を確認した。従来得られていたLED素子では半値幅380nm程度であり、層構造の変更により約60nmの広帯域化が得られた。さらに広帯域化のためには、バッファ層のGa組成を変更することが必要不可欠である。これまでの実験結果よりGa組成が0.47±0.1を超えると発光効率が大幅に減少することを実験的に確認している。そこでGa組成が0.47±0.1を超えても発光効率が低下しないバッファ層の成長条件を最適化する実験を行った。Ga組成0.9のバッファ層において層厚を半分にすることによって200nm程度の発光波長の短波長化を確認したが、発光強度は半分程度に減少した。Ga組成0.7のバッファ層においては成長速度を半減、V/III比を倍にすることによって発光強度は格子整合バッファ層と同等の強度が得られることを確認した。一方、量子井戸構造を用いたアレイ導波路型波長選択スイッチにおいては、熱光学効果素子においてスイッチング動作の低消費電力化を達成した。また電流注入型素子では、3ポートまでのスイッチング動作の確認、電界印加型素子においては、各アレイ導波路の動作波長における屈折率変化量を理論的に計算し、スイッチング動作を得るための電極構造を検討し、新規マスク構造を作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に引き続いて、量子ドットアレイ導波路の成長条件に関する研究を行うとともに、広帯域LED、光増幅器を実現するための多層構造の設計、および光増幅器内の非線形光学定数の測定、また量子ドットアレイ導波路に電流注入あるいは電界印加したときの屈折率変化の測定を行い、波長スイッチ設計のための基本的パラメータを把握する。広帯域発光を可能とする量子ドット成長条件については、層ごとに量子ドット高さ、バッファ層の歪量を制御した多層構造において、広帯域化のために必要な層数、層ごとの層厚と組成の変化量を、一層のコア層を有した量子ドットアレイ導波路の発光特性を基に設計し、実際に試作を行う。試作した量子ドットアレイ導波路を用いて、LEDおよび光増幅器を試作し、電流注入発光特性および光増幅度の測定を行う。発光特性としては、電流―光出力強度、波長特性、発光半値幅、温度特性に関して測定を行う。LEDの場合、アレイ導波路からの広帯域発光をまとめて出力するためにはローランド円構造を持つスラブ導波路によって集光することが必要となるので、発光帯域に応じたスラブ導波路の設計を行う。また光増幅器に関しては、アレイ導波路ごとの利得特性、波長特性、応答速度、飽和特性について測定を行う。広帯域な光増幅器としてはある程度の波長幅を持って分波された光に対して、最適な導波路において光増幅を行うことが有効と考えられるので、波長分波器と光増幅器を集積化した素子構造の設計を行う。さらに光増幅器を用いた四光波混合による波長変換特性を測定し、非線形光学定数の測定を行う。波長選択スイッチにおいては、熱光学効果型、電流注入型、電界印加型において4ポート間での波長分波とスイッチング動作を達成し、それぞれの消費電力、スイッチング速度、消光比、挿入損失を比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、有機金属気相成長装置関連と波長スイッチの光学系に対して研究費を使用する予定である。有機金属気相成長装置関連では、有機金属材料およびInP基板の購入を予定している。また波長スイッチを観測するための光学系として、これまでは近視野像を赤外線カメラで測定していた。最近、あるメーカーより近視野像を測定すると同時に光ファイバに結合して光強度を測定するための光学系があることを知った。近視野像を確認しながら光強度を測定することができれば、挿入損失測定、クロストーク特性、またファブリ・ペロ―干渉測定が非常に容易にできると予想され、この光学系部品の購入を検討する予定である。
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Research Products
(18 results)