2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560414
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 芳浩 日本大学, 理工学部, 教授 (40216768)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 電子デバイス・機器 / 放射線,粒子線 / ソフトエラー / SOIデバイス / シングルイベント効果 / 照射誘起電流 |
Research Abstract |
Si基板上のデバイス作製技術を活用し,支持基板および活性層がn形のSOI基板上に,p+nダイオードおよびpチャネルMOSFETの試作を,大学内のマイクロ機能デバイス研究センターの設備を用いて行った.デバイス毎に活性層を分離した構造とすることにより,埋め込み酸化膜層(BOX層)を介したリーク電流低減を実現し,良好な電気的特性を確認した. 作製したSOI-pnダイオード(逆バイアス印加)に対し,日本原子力研究開発機構の加速器を用い,加速エネルギー15MeVの酸素イオンを照射し,シングルイオン照射誘起過渡電流を測定した.その結果,アノード領域に照射した際に過渡電流が観測され,その時間積分値である収集電荷量は活性層での発生量以上となることを確認した.また,各端子の過渡電流およびシミュレーション結果との比較から,この超過分の電荷収集はBOX層を介した変位電流に起因することを明らかにした. この変位電流は,支持基板表面の空乏層電界による照射誘起発生電荷の収集により発生する.よって,収集電荷量は空乏層幅に大きく依存すると考えられる.そこで,デバイスシミュレータにより解析した結果,支持基板・活性層とで異なる不純物タイプのSOI基板,ないしは高不純物濃度の支持基板を有するSOI基板を用いて空乏層幅を減少することにより変位電流が抑制され, SOIデバイスの照射誘起電荷収集量の抑制が可能となることを明らかにした. また,Bulk Si基板上のMOSFETを用いて,酸化膜を介した電荷収集のトータルドーズ効果を評価した結果,吸収線量6.3 kGy(SiO2)のγ線照射後においても酸化膜のリーク電流の顕著な増加は観測されず,SOIデバイスのソフトエラー耐性強化のためには,BOX層を介した変位電流の抑制が重要であることを確認した(電子情報通信学会論文誌 採録決定).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) SOI-pnダイオードおよびSOI-MOSFETの試作: これまでに実施した作製プロセスを応用し,各種SOIデバイスの試作を行った.その結果,ICPエッチングによる活性層分離などのプロセス追加により,良好な電気的特性を有するデバイス作製プロセスを確立し,当初の目的を達成した.2) SOIデバイスに対する重イオン照射実験の実施: 日本原子力研究開発機構において,作製したSOI-pnダイオードに対し,酸素イオンの照射実験を行い,各端子においてシングルイオン照射により誘起される過渡電流の測定を実施した.その結果,照射誘起電流および種集電荷量の照射中印加電圧依存性,イオン照射位置依存性を明らかにした.また,測定結果の解析より,異常電荷収集の原因がBOX層を介した変位電流であることも確認し,当初の目的をほぼ達成した.3) 照射誘起電流抑制に関する検討: 本予算にて購入したデバイスシミュレータを用いて,重イオン照射誘起過渡電流抑制について検討を行った.その結果,SOI構造の支持基板の不純物のタイプおよび濃度の制御により,BOX層を介した電荷収集が抑制できる可能性を示し当初の目的をほぼ達成した.4) トータルドーズ効果に関する検討: 放射線吸収線量増加に対する,絶縁膜を介した電荷収集機構の変化を評価するため,Bulk Si上に作製したMOSFETを用いて照射実験を行った.その結果,吸収線量増大に伴うゲート絶縁膜中の捕獲電荷密度増加により絶縁膜電界が大きく変化するものの,基本的な電荷収集メカニズムは変化しないことを明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究推進により,支持基板・活性層とで異なる不純物タイプのSOI基板,ないしは高不純物濃度の支持基板を有するSOI基板を用いてデバイスを作製することにより,重イオン照射誘起電流および収集電荷量が抑制可能であることを示唆する結果を,シミュレーションにより得た.そこで次年度は,上記の基板を用いたデバイスを試作し,照射実験によりソフトエラー耐性強化について確認を行う予定である.また,実験結果とシミュレーション結果との比較により,支持基板表面における空乏層電界分布を収集電荷量との関係を明らかにする. また,提案する照射誘起電流抑制手法を,各種デザインルールのデバイスに対し適用した場合のシミュレーションを行い,素子寸法縮小化が及ぼす影響について評価を行い,現行および次世代の集積回路への適用の可能性について検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に,3次元デバイスシミュレータ年間使用契約費用,およびSOI基板や材料ガスなど,SOIデバイス作製用消耗品費として使用する予定である.また今年度後期に,支持基板の不純物のタイプおよび濃度が異なるSOI基板を購入し,平成24年度の試作に向けた準備を行う旨計画していたが,日々変化する少量数の購入市場において希望に合致する仕様の基板が見いだせなかったため,SOI基板の購入は平成24年度に実施することとした.
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Research Products
(5 results)