2011 Fiscal Year Research-status Report
伝搬特性を制御する右手系人工媒質の開発と放射素子への応用に関する研究
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23560421
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
出口 博之 同志社大学, 理工学部, 教授 (80329953)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | マイクロ派 / 伝搬特性 / 放射素子 / 周期構造 / ミリ派 / 最適化 / 高次モード / 任意形状素子 |
Research Abstract |
地導体にエルサレムクロス型スロット素子を設け,その両面の誘電体基板にパッチ素子を2次元配列した新しい薄型構造の右手系人工媒質を検討した.従来のアレーアンテナや周波数選択膜の考え方を応用した平面レンズの設計では,誘電体基板の厚みを一定としたときの移相量の制御が難しいという問題があったが,本研究では,エルサレムクロス型スロットならびにパッチ素子を透過媒質の単位構造素子として用い,これらの共振特性に加えて,リアクタンス成分も制御することによって所定の結合共振特性を実現している.まず,簡単のため,エルサレムクロス型スロットは,単一偏波に対して動作するように設計するものとし,共振スロットとリアクタンス・スロットを一つにまとめた新しい機能を有するスロット素子を考案している.このような構造で得られる結合共振特性より広帯域な通過域特性を実現することによって,広範囲な透過位相の制御を可能にしている.得られた単位素子は,従来のものに比べて小さくできることも一つの特徴である.このような素子を2次元周期配列した構造に対して電磁界解析を行い,透過特性を評価することによって提案する右手系人工媒質の妥当性を検証している.そして,単位素子の形状を拡大,縮小すれば透過位相を任意に制御するとともに反射電力を抑えた人工媒質の設計が行える.また,伝搬方向の媒質の厚みを非常に薄くすることができるので,マイクロ波帯の薄型平面レンズへの応用が可能である.さらに,このような検討結果を基に一次ホーンと平面レンズからなるアンテナを設計し,放射特性を数値的に評価した結果,良好な特性が得られており,放射素子への応用についても一つの成果が得られている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した通り,透過波を制御するための単位セル構造について詳細な検討を加え,周波数特性の向上を図ることができ,伝搬特性を巧みに制御したマイクロ波・ミリ波空間フィルタならびに薄型レンズの基礎的研究成果が得られている.現在,任意形状素子の設計についても検討しており,リフレクトアレーの特性改善に有効であることは確認済で,レンズ媒質に応用するため,透過波の制御を行う任意形状単位セルについて最適化設計しているところである.また,ホーンアンテナについても,壁面構造に関する検討を行っており,直交する2つの偏波を独立に制御できる見通しが得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
人工媒質を利用した空間的な電波伝搬制御素子としてホーンアンテンを取り上げ詳細な検討を加える.ホーンの電磁界解析にあたっては,階段状の形状にモデル化し,一つのステップ状不連続部について断面形状の等しい導波管モードで展開し,横断面内電磁界分布の連続条件を満足するよう定式化して全ての不連続部に対して数値解析を行い,これらを伝送線路理論によって縦続接続していく.このとき,ホーンを半径方向に等間隔で分割し,不連続部形状を変えず,2つの不連続部をつなぐ軸方向の長さだけを変化させることによって様々な形状をモデル化すれば,最適化において繰り返し行われるホーンの数値解析時間を大幅に短縮することができる.また,壁面構造を任意境界面として扱い,モーメント法やモード整合法を基にした最適化によってホーンを設計していく. また,人工媒質の基本構造となる単位セルとして,3次元微小ブロックからなる任意形状素子についても検討を加える.そのため,3次元周期グリーン関数を基にしたモーメント法の解析を用い,最適化設計を行っていく.その際,計算の高速化は重要な課題であり,モーメント法を基にした高速電磁界解析や,多目的最適化手法を取り入れ,単位セル形状の修整を試みる.さらに,人工媒質は実際には有限の大きさとなることから,媒質終端の境界条件を考慮した有限周期構造のモーメント法解析によっても検討を加えていく.新たに表面波を励振する給電構造についても一つの提案を行う. これらの検討結果を基に,屈折率の値に応じて異なる形状の単位セルを3次元配列することによって,高周波近似のもとでレンズ媒質を設計していく.また,屈折率分布を2次元分布に限り,例えば開口面に平行な面で分布をもたせ,垂直な方向で一様としたものを新たなレンズ媒質として提案する.そして,設計,試作,評価を行い,得られた結果をとりまとめ,成果の発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で提案する方法の妥当性を実験的に確認するための試作費や材料費・消耗品費,設計・解析・計測を行うためのパーソナルコンピュータ,コンパイラー等のソフトウエア,技術的な資料等の図書費,実験研究補助の謝金,研究成果発表ならびに技術的な議論を行う学会等に参加する国内旅費(例えば,電子情報通信学会総合大会,電気学会電磁界理論研究会等)ならびに外国旅費(例えば,ヨーロッパマイクロ波国際会議(EuMC),電子情報通信学会アンテナ・伝播国際会議(ISAP)等),投稿料として使用する予定である.
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Research Products
(3 results)