2012 Fiscal Year Research-status Report
伝搬特性を制御する右手系人工媒質の開発と放射素子への応用に関する研究
Project/Area Number |
23560421
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
出口 博之 同志社大学, 理工学部, 教授 (80329953)
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Keywords | マイクロ波 / 伝搬特性 / 放射素子 / 周期構造 / ミリ波 / 最適化 / 高次モード |
Research Abstract |
高利得・低サイドローブ特性をもつ反射鏡アンテナの小型化を達成するため,副反射鏡として,通常の2次曲面の鏡面系のかわりに,反射鏡表面を人工表面媒質で構成した一次放射系を考え,軽量化も考慮して誘電体基板とその表面に同心円状の導体膜をつけた構造について検討した.提案する一次放射器は,中央には給電導波管から誘電体基板内への直接波を遮へいする導体膜を設けた構造となっており,表面波の抑圧ならびに給電系との整合が可能なものとなっている.そして,反射鏡表面を電気的にTE波に対しては完全磁気導体(PMC),TM波に対しては完全電気導体(PEC)にすることによって,効率よく主反射鏡に吹き付けて高能率化し,さらに副反射鏡表面に沿って伝搬する表面波を抑圧して後方散乱を抑えることでアンテナ2次放射パターンのサイドローブレベルの低減を図っている.設計した一次放射器について電磁界数値シミュレーションにより特性計算を行ったところ,従来のものに比べて放射特性の改善が見られた. また,主反射鏡表面に用いる人工表面媒質として,異なる共振現象と偏波特性を巧みに利用した直交偏波共用リフレクトアレーについて検討を加えた.アレー素子(単位セル)は4つの共振素子から構成され,2段凸型ストリップ導体を変形したもの,ならびに凸型S状ストリップ導体から構成した素子形状について各々提案し,特性評価を行った.その結果,前者は交差偏波特性の低減に有効であり,一方後者は,さらに広帯域化を達成するために有用であることを数値的・実験的評価によって明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した通り,アンテナ開口面ならびに一次放射系に用いる人工表面媒質の構成法を明らかにし,高精度で効率的な設計・解析を行った.人工表面媒質を用いたアンテナ開口面としては,主ビーム方向を反射の法則とは異なる方向に向けることができることを明らかにしている.特に新規性のある素子形状として,周波数特性の広帯域化に重点をおいたものと,低交差偏波特性が得られるものについて各々開発しており,数値計算による検討に加え,試作による実験によって妥当性の検証ならびに有用性の確認を行った.また,一次放射系としては,人工表面媒質を用いた後方放射方式の構成法について数値的検討を行い,設計指針を明らかにした.このような一次放射系を軸対称パラボラアンテナに用いれば,高能率・低サイドローブ特性を有する小型アンテナが得られるほかに,広範囲な領域を照射するレーダ用アンテナにも応用が可能であり,アンテナの小型化に非常に有用なものとなる.
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Strategy for Future Research Activity |
人工媒質を応用した一次放射系として,多段の同軸導波管と誘電体を組み合わせた構造について検討を行う.このような一次放射系の設計・解析にあたっては,同軸導波管構造の不連続部に対してモード整合法による厳密な解析を行い,これを基にして各部導波路の長さあるいは誘電体形状を最適化することによって所定の放射特性の実現を図っていく.特に,形状最適化を効率的に行うため,多モード多通路に対応した散乱行列の一般的な計算法を明らかにしていく.また,実際のアンテナを模擬した数値シミュレーションによる評価も行い,妥当性の検証を行っていく.そして,提案する一次放射器の各モードの放射特性に関する数値的な検討を基に,所定の一次放射パターンを得るための適切なモード合成比を求め,高性能化も図っていく. また,人工媒質を応用したアンテナ開口面として,スロットおよびストリップ素子を多層化した構造について検討を加え,伝送特性の制御を行っていく.開口面は波長に比べて十分大きなものを想定し無限周期構造の解析を行い,素子形状最適化における高速化も図っていく.これらの検討結果を基に,人工媒質の特性を活かした小型・高性能なアンテナの設計して試作,評価を行い,得られた結果をとりまとめ,成果の発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で提案する方法の妥当性を実験的に確認するための試作費や材料費・消耗品費,設計・解析・計測を行うためのパーソナルコンピュータ,コンパイラー等のソフトウエア,技術的な資料等の図書費,実験研究補助の謝金,研究成果発表ならびに技術的な議論を行う学会(例えば,電子情報通信学会総合大会,電気学会電磁界理論研究会等,ヨーロッパマイクロ波国際会議(EuMC),電子情報通信学会アンテナ・伝播国際会議(ISAP)等)に参加する旅費,参加費,資料代,投稿料として使用する予定である.
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Research Products
(6 results)