2012 Fiscal Year Research-status Report
超伝導デバイス応用のための窒化物超伝導薄膜の最適化と物性制御
Project/Area Number |
23560431
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
牧瀬 圭正 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所 ナノICT研究室, 研究員 (60363321)
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Keywords | 超伝導デバイス / 超伝導薄膜 / 窒化物 |
Research Abstract |
我々は超伝導エレクトロニクス分野で、ポストNb として期待されている窒化物超伝導体の窒化ニオブ(NbN)、窒化ニオブチタン(NbTiN)薄膜に注目し、デバイス応用に向けて研究を行っている。特にそれらの薄膜について、電気輸送特性、高周波特性等を明らかにし、高性能超伝導デバイスへの応用で必要となる材料パラメータを抽出、物性制御することで薄膜の最適化を行うことが目的である。今年度も引き続き、NbN,NbTiN 薄膜の成膜や超伝導性に関して膜の結晶構造、組成分析や輸送特性の評価等に加えてスパッタリング条件等の成膜条件の最適化と再現性の評価を行った。今年度はさらに超伝導転移温度近傍御の磁気抵抗を精密に測定した。NbN薄膜の物性評価において、転移温度近傍の抵抗-温度依存性の実験結果を電子局在-電子間相互作用、超伝導熱揺らぎおよび状態密度の変化等を考慮に入れたモデルで再現することができた。このモデルを適用することにより、電子の弾性散乱および非弾性散乱機構の振る舞いについて詳細に議論した。さらに今年度は前年度に求めた成膜条件と評価した物性パラメータを用いて、トンネル接合の作製に着手した。トンネル接合のバリア層は同じく窒化物である窒化アルミニウムAlN層を用いた。デバイスプロセスはエッチング、リフトオフにより積層化を行った。その結果、NbNを用いたトンネル接合ではデバイスとしても十分応用可能な電流―電圧特性から得られた。さらに単一のNbN接合において、得られたデバイスパラメータ(ギャップ電圧、quality factor、臨界電流)の再現性も高いことが分かった。今後は次に得られた作製条件、およびデバイスパラメータを用いて、単一量子磁束回路、SISミキサー等の超伝導デバイス作製および検討を行う
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画は超伝導デバイスへの応用も見据えて、成膜条件の最適化に加えて、実際にNbN,NbTiN 膜を用いてトンネル接合を作成および評価を行う。トンネル接合の作製および評価に関しては、計画通り行えた。前年度に成膜条件の最適化が順調に進んでいたため、今年度はデバイスプロセスの最適化に十分時間を費やすことができた。その結果、トンネル接合の臨界電流の制御性および再現性を検証し、高い再現性をもつ成膜条件を得ることができた。これに関しては当初の計画通りに進展している。さらに単一量子磁束回路の動作のために必要されるオーバーダンプでヒステリシスのない電流-電圧特性を持つトンネル接合の作製に成功した。また、次年度で行う予定でシートインダクタンス、接合容量の評価も行っており、この点に関しては計画通り進展している。一方で、NbTiNでは良好な電流―電圧特性を持つトンネル接合が作製に関しては条件出しに時間がかかっている。NbTiN膜はNbNに比べて膜表面の平坦性が悪く、結果として非常にリークの多い接合となっている。この平坦性の劣化の原因はNbとTiのスパッタレートおよびイオン化エネルギー違い等が考えられるが、原因の解明には不明な点が多く、早急に明らかにする必要がある。この点で当初の計画より若干遅延しているが、現在進行しているパルス電源によるスパッタ法による成膜条件の探索で何らかの問題提起ができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23-24年度に得られた結果を基にして、構築した測定システムで抵抗の温度依存性の測定やホール係数測定を継続して実施し、超伝導転移温度、臨界磁場、キャリア数等の物性パラメータの詳細をさらに明らかにする。NbTiN膜の物性パラメータの抽出を重点的に行う。これらを用いて、超伝導単一光子検出器の基礎物性の理解と最適化に向け、NbNおよびNbTiN超伝導ナノワイヤーを作製し、その物性評価も行う。一方でNbNおよびNbTiNトンネル接合を用いたSQUIDを作製し、詳細な回路パラメータ評価を行う。さらに今年度はNbNによる単一磁束量子を用いた論理回路の設計と作製を行い、動作実証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、国内でデバイスの測定に必要なヘリウムが不足の状況が生じ、寒剤が十分に購入できなかった。そこで、寒剤購入およびそれを用いて測定するはずであったデバイスに必要な基板の予算を次年度に持ちこし、同様の目的で使用する予定である。次年度の予算は薄膜およびデバイス作製に必要な基板、薬品および寒剤等の消耗品の購入のため計上を行う予定である。基板はMgO配向基板、シリコン基板が本研究の遂行には重要であるため、その購入に予算を使用する。デバイスの測定に必要な液体ヘリウム、液体窒素等の寒剤購入も予算として計上する予定である。 さらにこれまでに研究で得られた成果について、日本物理学会、応用物理学会等の研究会議で発表し、論文投稿を行う予定である。そのための学会参加費、旅費および論文投稿料等に予算を使用する予定である。
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Research Products
(28 results)
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[Journal Article]2012
Author(s)
S. Ezaki, K. Makise, B. Shinozaki, T. Odou, T. Asano, H. Terai, T. Yamashita, S. Miki, Z. Wang
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Journal Title
J. Phys. Condens. Matter
Volume: 24
Pages: 4757022-1-5
DOI
Peer Reviewed
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