2012 Fiscal Year Research-status Report
高機能画像表現のための傾斜平面分離性能を有する二次元直交変換の設計と実時間実現
Project/Area Number |
23560443
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
村松 正吾 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30295472)
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Keywords | 画像処理 / 直交変換 / ウェーブレット変換 / 冗長変換 / 画像符号化 / 画像復元 / 実時間実現 / スパース表現 |
Research Abstract |
画像変換技術「指向性重複直交変換」の設計法および実現法に関して、海外学術誌IEEE Trans. on Image Process. にそれぞれ論文およびレターを掲載した。また、同変換の画像処理応用の評価検討を行った。さらに、実時間実現に向けた実装を開始した。 画像処理応用の評価検討では、提案する画像変換技術を利用したノイズ除去、ボケ除去、超解像、画像修復について古典的手法や冗長ハール変換との比較を行い、提案法の有効性を確認した。実時間実現に向けた実装では、組込み機器で広く利用されているARM社のCortex-A8および Cortex-A9上に提案法の分析システム、合成システムを実装し、VGAクラスの動画像を 5fps 程度のフレームレートで動作させることに成功した。これら研究成果について、信号処理シンポジウムやアジア太平洋信号情報処理協会年次会議(APSIPA ASC)など国内外の学会にて積極的に発表を行い、広く情報を発信すると共に、今後の発展に有益な情報の収集を行った。 また、世界中の科学者、開発者に広く利用されているMathworks社の数値シミュレーターMATLAB/Simulinkにてこれら応用例のシミュレーションモデルや組込み実装に対応したモデルを構築し、これらを同社が運営するサイト上にて公開した。結果として、誰もが本研究の成果を再現し、論文の引用がし易いように配慮した。 さらに、より一般的な冗長変換の構成法、設計法、実現法を発明したため、この特許出願を行った。今後は、応用に関するこれまでの成果の論文投稿と新たな冗長構成に関する評価検討、FPGAとの併用によるより高速な実時間実現の具現化を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の計画は、指向性変換の応用対象に特化した設計、映像・カラー画像・マルチビュー画像への応用の展開、組込みプロセッサ上での実現であった。物品購入、成果発表なども含め概ね研究計画のとおりに進んでいる。 特に、画像復元応用に関しては、ボケ除去、超解像、画像修復において既存の冗長ハール変換よりも高い性能を確認した。また、MATLAB/Simulinkにてコード生成が可能なモデルを構築し、組込みプロセッサ上での映像処理も実現した。 ただし、応用対象に特化した設計については、設計法の調査に留まっている。カラー画像、マルチビュー画像への展開についても評価検討を保留している。これは、より発展的な冗長構成を発明し、この基礎的な評価検討を優先して進めたことが主な理由である。 この新たな冗長構成法は、冗長度の設定の自由度が高く、従来の構成法に比べ、低い冗長度で高い画像復元性能を示すことが確認できた。この設計法については、平成25年5月にバンクーバーにて開催されるIEEE音響音声信号処理に関する国際会議(ICASSP2013)において採択され、発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策を設計、応用、実現に分けて以下に述べる。 1.設計:これまでは、与えられる画像に対して特別な仮定を置かず、汎用的な変換の設計を行ってきた。今後は、設計の効率化に加え、例えば、防犯カメラに映る人体や顔など対象を定めた上で、その対象に適した変換の設計を行う予定である。学術的には、辞書学 習(Dictionary Learning)の問題と位置づけられる。また、新たな冗長構成における傾斜平面除去性能について検討を進める。 2.応用:平成24年度は、静止画像から映像へと対象を展開したが、モノクロ画像の基礎的な評価が中心であった。平成25年度は、カラー画像・マルチビュー画像への展開のほか、監視映像や医療画像への応用等、具体的なアプリケーションソフトウェアの実装を進める。 3.実現:平成24年度は、組込みプロセッサ上での映像処理を実現できた。ただし、フルHDの実時間処理には高速化の課題が残されている。組込みプロセッサとFPGAの協調実現について検討を進める。また、再利用し易いモジュールやライブラリの整備をさらに進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度未使用額については、一部を平成25年3月14日から15日の期間の出張旅費および文献購入に充てる予定である。3月末の収支簿に間に合わなかったことが理由である。実質上、平成25年度はほぼ当初の計画どおりの研究費を使用する予定である。ただし、提案法が画像符号化よりも画像復元への応用に適していると考え、当初のネットワークインタフェースボードに代わり組込みプロセッサとFPGAを混載した画像・映像処理評価ボードの購入に計画を変更する。 1.物品費:ARMプロセッサとFPGAを混載するプロセッサ Xilinx Zynq-7000 SoC を搭載する ZC702 評価ボードを1台を購入する。その他、関連図書の購入などに充てる。また、システム開発に必要なライセンスの購入に充てる。 2.旅費:音響音声信号処理に関する国際会議(ICASSP、バンクーバー)、画像処理に関する国際会議(ICIP、メルボルン)、アジア太平洋信号情報処理協会年次会議(APSIPA ASC、台湾高雄)、信号処理シンポジウム(山口)に参加し成果発表を行う予定である。 3.謝金等:特になし 4.その他:各種学術会議に参加するための登録費用の他、論文別刷代に充てる。
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