2011 Fiscal Year Research-status Report
非相反性進行波共振器からなるビーム走査アンテナに関する研究
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23560454
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
上田 哲也 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (90293985)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | メタマテリアル / 負屈折率媒質 / 非相反回路 / 非可逆回路 / 進行波共振器 / ビーム走査アンテナ / フェライト |
Research Abstract |
平成23年度において得られた研究成果としては,主に次の3つが挙げられる.1)電磁界解析と伝送線路モデルとの組み合わせにより,ビーム走査アンテナに用いられる非相反伝送線路を記述する簡単化回路モデルの構築,およびアンテナの放射角を決める重要な要素である同線路の非相反移相特性の定式化2)印加直流磁界によるアンテナのビーム走査の実験的実証3)アンテナのビーム走査と偏波回転操作をそれぞれ独立に制御可能できることを数値計算により実証このうち1)の成果では,簡単化された回路モデルにより記述される非相反移相伝送特性を,従来の電磁界シミュレーション結果と比較検討した結果,よく一致することが確かめられた.この成果はマイクロ波分野で最も権威ある国際会議 2012 IEEE MTT-S International Microwave Symposium において採択され,2012年6月に発表予定である.次の2)の成果は,本研究において最も重要かつ大きな研究成果の一つである.従来のビーム走査に関する研究成果としては,磁化が飽和状態にある条件下において,ビーム方向がブロードサイド方向に関して斜めに傾くことが数値計算により確認されていただけであった.これに対して今回の研究成果では,フェライトの磁化が非飽和状態にある弱い印加直流磁界の場合において,印加直流磁界の大きさおよび向きを変えることにより,前方から後方に亘り±30度の連続的なビーム走査を実現し,動作比帯域が2%と狭帯域ながら,動作帯域内でビーム方向および利得がほぼ一定に保たれることが数値計算および実験により確認された.3)の成果では,数値計算結果だけであるが,アンテナのビーム走査と偏波回転操作を,非常に少ないパラメータで,それぞれ独立に制御できることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づいて,非相反線路の等価回路モデルの構築,非可逆移相特性の定式化,非可逆線路・進行波共振器・ビーム走査アンテナの具体的構造設計,および実験による動作確認のいずれにおいても,ほぼ順調に結果が得られていることが理由として挙げられる.このうち,印加直流磁界の大きさを変えることによるビーム走査を実験的に動作確認できたことは,本研究の最重要課題の一つを達成したことになるので,大きな進展であると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
提案のアンテナにおいて,ビーム走査と偏波回転操作をそれぞれ独立に制御できることが数値計算により明らかとなったが,今回設計した回路のままでは,アンテナの製作誤差により特性が大幅に劣化する問題がある.さらに,ビーム走査機能の実現とは関係なく,偏波回転機能を単独で電子制御することさえ,これまで実験的に実証できていない.以上のことから,ビーム走査と偏波回転の2つの機能を併せ持つアンテナ設計を行う前の段階として,偏波回転機能のみを持つ指向性アンテナを別途設計し,電子制御により偏波回転が可能であることを実験的に検証することが次の課題として挙げられる.なお,提案アンテナの偏波回転を実現するためには,アンテナの構成要素である共振器の両端に挿入される反射器の位相特性を変える必要がある.過去の研究成果では,反射器として有限長線路を用い,その線路長を直接変えることにより放射波の偏波が回転することを実験的に確認しただけである.そこでバラクタ等の可変素子を用いて同機能の実現を図る.この偏波回転機能の電子制御を実験的に実証できれば,ビーム走査および偏波回転機能を併せ持つ指向性アンテナを再設計し,実験的に動作確認することが次の課題となる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内、国外に向けて積極的に研究成果を情報発信するために、マイクロ波の分野で最も権威ある国際会議 2012 IEEE MTT-S International Microwave Symposium、および国内学会の電子情報通信学会において研究発表を行う予定であり、旅費として合計40万円、残り10万円を試作回路・アンテナの製作費用に充当する予定である.
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Research Products
(9 results)