2012 Fiscal Year Research-status Report
非相反性進行波共振器からなるビーム走査アンテナに関する研究
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23560454
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
上田 哲也 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (90293985)
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Keywords | メタマテリアル / 負屈折率媒質 / 非相反線路 / 進行波共振器 / ビーム走査アンテナ |
Research Abstract |
本研究では,次世代無線通信技術への応用を目的として,従来技術のフェーズドアレーアンテナに比べて簡単な構成で,しかも簡素な制御システムを有するビーム走査アンテナの動作実証を目指す.定在波型の伝送線路共振器であるにもかかわらず進行波共振器と同じ電磁界分布を示す,単一の非相反性共振器からなるビーム走査アンテナの実現を目指す.このアンテナは単体の共振器から構成されており,動作周波数を固定したままアンテナサイズを自由に設定することができる特長をもち,その結果ビームの指向性および利得をアンテナサイズにより所望の値に設定できるところにある. 研究期間内において明らかにすべき点は以下のとおりである.1)アンテナサイズと指向性,動作帯域幅,および放射利得の周波数特性の関係,2)外部印加磁界を変化させることによる非相反性の大きさのチューニングおよび放射ビームの走査角の関係,3)ビーム走査と独立に,数少ない制御パラメータで主偏波方向を自由に回転制御することができることの数値計算および実験的実証. このうち,1)と2)は平成23年度中にほぼ達成している.さらに詳細を調べ,まとめた成果が学術論文誌IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques の2012年10月号に掲載された.平成24 年度においては,3)を達成するための準備研究として以下の成果を得た.4)進行波共振器が相反線路で構成される場合,0次共振器となるが,その放射波の主偏波回転を印加電圧により制御できることを実験的に確認,5)印加直流磁界ではなく,可変素子の電圧制御により,線路の非相反性を操作できるかどうかを探求することを目的として,垂直磁化フェライトロッドが埋め込まれたマイクロストリップ線路において,導波路構造の非対称性と非相反性の関係を数値計算および実験により調べた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの進捗状況としては極めて順調である.初年度である平成23年度においては,本研究で予定していた多くの目標を既に達成している.一つはアンテナに用いる非相反性伝送線路に対して,近似的な解析アプローチによる非相反移相特性の定式化,もう一つは,印加直流磁界を変えることによるビーム走査の実験的実証である.平成24年度ではこれに引き続いて,放射波の主偏波の回転制御の実現を目的として.0次共振器の両端に挿入した反射器の電圧制御による,共振器上の電磁界分布および放射波の主偏波方向の回転制御を実験的に確認した.さらに,印加直流磁界ではなく,可変素子の電圧制御による非相反性操作の実現可能性探求を目的として,導波路構造の非対称性と線路の非相反移相特性の関係を数値計算および実験により調べた.その結果,お互いによく一致し,非相反性の電圧制御の可能性を示した.
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Strategy for Future Research Activity |
放射波の主偏波方向を回転させるためには,アンテナの構成要素である共振器の両端に挿入される反射器の位相特性を変える必要がある.今回の研究成果では,バラクタ等の可変素子を用いることにより,同機能を実現可能であることを2.4 GHz帯で実現したが,印加直流磁界を変えることによるビーム走査が実現された6 GHz帯に比べると随分低い周波数帯であった.一方で,ビーム走査と偏波回転操作をそれぞれ独立に制御できることが6GHz帯で既に数値計算により確認されているが,設計された回路のままでは,アンテナの製作誤差により偏波回転特性が大幅に劣化するという問題が残されている.従って,次の研究課題としては,ビーム走査および偏波回転機能を併せ持つ指向性アンテナにおいて,製作誤差による特性劣化が極力抑えられるような構造が設計可能かどうかを検討することが挙げられる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
世界に向けて情報発信するために,これまでに得られた研究成果の発表を積極的に行うと共に,残された予算範囲内で実験的に動作確認を行うための材料費,試作回路・アンテナの製作費用に充当する予定である.
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Research Products
(8 results)