2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560456
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
楫 勇一 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (70263431)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フラッシュf号 / フラッシュメモリ / 記録素子用符号化 / ランダムウォーク |
Research Abstract |
本研究の目標は,フラッシュメモリの特性に対して最適化された情報符号化方式の開発を行うことである.この大目標を達成するため,(a) メモリ素子の消耗を極力回避する符号化方式の開発,(b) 素子特性の経時劣化を考慮に入れた誤り制御の仕組みの開発,の 2つの具体目標を設定し,一連の研究活動を行う.研究実施においては,3年間の研究期間の前半において (a) の課題に取り組み,後半の期間において (b) の課題の解決を図る計画である.平成 23年度の研究では,所期の計画どおり (a)の課題に取り組み,以下に示す具体的成果を上げることができた.(1) ILIFC 方式の性能を解析的に究明した: ILIFC の振る舞いをランダムウォークモデルにより記述し,漸近的シナリオと非漸近的なシナリオの双方において,その平均性能を評価するための具体的手段を確立した.(2) 新しいフラッシュ符号の開発: ILIFC の欠点を補い,平均性能を有意に改善することのできる新しいタイプのフラッシュ符号を開発した.3種類の異なる方式を開発し,それぞれの特性についての検討を行った.以上の結果は,交付申請書に記載したサブテーマ (1) および (2) で設定した研究課題に対する回答を与えるものであり,フラッシュメモリの素子を有効に活用するための重要な基礎技術になり得る成果である.一連の研究成果については国内外の学会等で公表済みであり,研究成果を社会に還元する活動にも積極的に取り組むことができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成 23年度の研究では,(1) ILIFC の振る舞いの解析,(2) 新しいフラッシュ符号の開発,の 2つを具体的な目標として設定していた.(1) の課題については,ILIFC の振る舞いをランダムウォークモデル (RWM) により記述する手法を開発した.これにより,メモリ素子の使用効率と RWM の確率分布との間に対応関係を定義することが可能となり,RWM に関する数学的な諸結果を ILIFC の性能解析に活用することができるようになった.この特性を生かし,データ操作が一様である比較的単純な操作モデルにおける ILIFC の平均性能を導出する手段を確立した.一連の研究成果については国際学会にて既に公表しており,現在,論文雑誌に投稿中である.また,データ操作が一様でない複雑な操作モデルに対して適用可能となるよう,一連の証明を拡張する作業に着手している.(2) の課題については,ILIFC が操作対象とする素子の単位ブロック(本研究では,このブロックをスライスと称している)を縮小する方向で,3 種類の新しい符号構成法 A, B, C を提案した.符号 A および B は,平均性能,最悪時性能の双方において ILIFC よりも優れており,具体的には,「書き換え不足量」と呼ばれる定量指標(この値が小さいほうが良い)を半減することに成功している.符号 C は,最悪時性能は ILIFC と同等であるものの,平均性能については,符号 A, B よりも優れた特性を発揮する.以上の成果は所期の目標以上のものであり,平成 23年度の研究は,十分満足できる水準にあると認識している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成 23年度の研究で開発した性能解析モデルは,メモリの素子数が有限である非漸近的な場合にも適用可能なものであり,同時に,符号の性能を定量的に与えることができるものとなっている.これは,当初計画で想定していた以上に強力な手段となっており,効率の良いフラッシュ符号の構成に大きな貢献を与えるものと考えることができる.当初計画においては,平成 24年度中にフラッシュ符号の開発課題(交付申請書のサブテーマ (1)~(3))を完了し,誤り制御機構に関する研究課題(サブテーマ (4)~(6))に移行する予定であったが,平成 23年度の研究で得られた優位性を最大限に活用するためには,フラッシュ符号の開発課題により重点を置くことが適当であると考えられる.以上の状況を鑑み,平成 24年度の研究では,以下の各課題に取り組む予定である.(1') 平均性能解析手段の拡張と詳細化:前述のとおり,非一様な書き換えモデルに対して適用可能となるよう,証明等を拡張する.これは,サブテーマ (1) の発展的課題であると考えることができる.(2') より強力なフラッシュ符号の構成:平成 23年度の研究活動を通じ,ILIFC の特性,とくに,性能悪化の原因をかなりのレベルまで特定できるようになった.この知見を活かし,平成 23年度開発方式よりも優れた符号を構成する.これは,サブテーマ (2) の発展的課題である.(3) 一連のフラッシュ符号に対し,性能評価を行う(当初のサブテーマ (3))誤り制御機構に関する各研究課題(サブテーマ (4)~(6))については,平成 25年度に取り組むものとする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成 24年度の研究では,サブテーマ(3) の課題解決に中・大規模な計算機実験が必要となることを想定し,高性能ワークステーションの導入を計画している.上述の計画変更後も,この状況は変わらないため,当初計画どおり,ワークステーション一台を購入する経費を計上している.また,平成 23年度の研究結果のうち,公表が済んでいないもの,現段階で論文投稿中となっているものが存在することから,そのための成果発表経費として,国内旅費,外国旅費,学会参加料を支出する予定である.
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