2011 Fiscal Year Research-status Report
情報ハイディングと画質改善法を用いた画像圧縮効率の向上
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23560458
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
野田 秀樹 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (80274554)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 情報ハイディング / 画質改善 / 画像圧縮 / カラー画像 / QIM / JPEG / MAP推定 |
Research Abstract |
情報ハイディング技術は,画像や音などのメディアデータの中に有用な情報を埋め込む技術である.本研究は,情報ハイディング技術の新たな応用として,画像情報圧縮への適用に関して検討を行う.情報ハイディングでは,情報を埋め込んだ後の表向きのメディアデータに不自然さを生じさせないことが望まれる.本研究は,このような情報ハイディングの特質を損なわない応用として,標準規格の非可逆圧縮カラー画像を対象に,その圧縮効率の向上を目指す. 本年度はJPEGカラー画像を対象に,エントロピー符号化された色差成分の離散コサイン変換(DCT)係数を輝度成分のDCT係数に埋め込む方式を検討した.原カラー画像が入力され,出力として輝度成分のみの圧縮濃淡画像が得られる.表向きはJPEG濃淡画像であるが,そこから色差成分を抽出することによって,カラー画像を復元することができる.埋め込みによって色差成分の情報量は削減できるが,輝度成分のDCT係数が変化する.それは画質を劣化させ,更に輝度成分の情報量を増加させる場合が多い.従って,JPEGカラー画像の圧縮効率を向上させるためには,埋め込みによるDCT係数の変化ができるだけ少ない埋め込み法を用いる必要がある.そのためここでは,QIM(Quantization Index Modulation)を用いた埋め込み法を用いた.また,圧縮や埋め込みによる画質劣化を後処理で改善するため,最大事後確率推定(MAP推定)を用いた画質改善法も併用した.実験の結果,色差成分の埋め込みによって一定の圧縮効率の向上が確認できたが,画質改善法の適用の方が効果が大きいことがわかった.埋め込みと画質改善法の併用が最も効果的であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標準規格のJPEGカラー画像を対象に,ハフマン符号化された色差成分のDCT係数を輝度成分のDCT係数に埋め込む方式を完全に実装することができた.原カラー画像の符号化では,色差成分のDCT係数は,量子化とハフマン符号化されて埋め込み情報となる.輝度成分の量子化時に,QIMを用いて埋め込み情報を埋め込む.その後,輝度成分の量子化DCT係数をハフマン符号化してJPEG濃淡画像を得る.復号化では,JPEG濃淡画像をハフマン復号化して輝度成分の量子化DCT係数を得る.その量子化DCT係数から抽出された埋め込み情報をハフマン復号化して色差成分の量子化DCT係数を得る.輝度成分と色差成分の量子化DCT係数をDCT逆変換して得られた成分に対してMAP推定を用いた復元処理(画質改善)を行った. 提案法を実装後,その性能評価のために画質評価実験を行った.その結果,埋め込みによる輝度成分のDCT係数の変化やその情報量の増加によって,色差成分の情報量の削減効果が大幅に減少することがわかった.そのため,埋め込みによる圧縮効率の向上は僅かであった.一方で,MAP推定を用いた画質改善法の適用は,圧縮効率の向上効果が大きいことがわかった.さらに,両者を併用すると最も効果が大きいことがわかった.これは,MAP推定による画質改善法では,圧縮に加えて情報埋め込みによる輝度成分の画質劣化がある場合,その画質改善の程度は,圧縮のみの場合のそれを上回っているためであると考えられる. 以上のように,JPEGカラー画像に対する提案法の実装は予定どおりに行うことができた.実装後の実験では,埋め込み単独では圧縮効率の向上効果は僅かであったが,画質改善法との併用で大きな向上効果が確認できたため,研究はおおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,次年度に提案法のJPEG2000画像への適用を,最終年度に動画像への適用を検討していく. JPEG2000では,周波数変換として離散ウェーブレット変換(DWT)が用いられ,エントロピー符号化として算術符号が用いられている.JPEG2000画像への適用では,算術符号化された色差成分を輝度成分のDWT係数に埋め込むことになる.しかし,JPEG2000ではQIMの適用に際して,輝度成分のDWT係数の量子化を行う時点で量子化幅を知ることができず,従って,量子化器を用意できない問題点がある.DWT係数の表現精度は,利用者が指定した圧縮率のもとで画像歪みを最小化するように,符号化の最終段階で決められる.即ち,符号化の最終段階で初めて量子化幅が決定されることになる.従って,埋め込み処理は復号化の途中で行うことになる.情報が埋め込まれた量子化DWT係数は,再度JPEG2000符号化処理を受け,情報が埋め込まれたJPEG2000濃淡画像が得られる.ただし,再符号化では,可逆(ロスレス)圧縮を行う必要がある.以上のように,JPEG2000ではJPEGと比べて符号化処理がかなり複雑になると考えられる. 動画像への適用では,MPEGやMotion-JPEG2000への適用を検討する.MPEGではJPEGと類似の処理が行われる部分が多く,基本的にJPEGの場合と同様な埋め込み処理が可能であると考えられる.ただし,画質改善法に関しては,原カラー動画像のモデルとして,時間軸方向も考慮した3次元のガウスマルコフ確率場モデルを用いる必要がある.Motion-JPEG2000は,動画像を構成する静止画像のそれぞれをJPEG2000で圧縮するものであるため,埋め込みはJPEG2000画像への埋め込みを繰り返すだけでよい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初,研究代表者と研究協力者2名分の合計3台の研究用パソコンを購入予定であったが,2台の購入にとどめたことや,旅費の使用が予定を下回ったことなどによって,予算残額が生じた. 次年度は,研究用パソコンを1台購入するとともに,JPEG2000画像への提案法の実装(プログラム開発)のための謝金,研究成果発表のための旅費などに使用する予定である.
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Research Products
(9 results)