2012 Fiscal Year Research-status Report
精度保証付計算アルゴリズムの性能検証のための極端にたちの悪い行列及び回路の生成
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23560472
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西 哲生 早稲田大学, 理工学術院, 招聘研究員 (40037908)
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Keywords | 極端にたちの悪い行列 / 条件数 / ベンチマーク行列 / 極端に解きにくい回路 |
Research Abstract |
前年度に引き続いて、たちの悪い回路の生成に関連して、その基礎理論となる多変数非線形方程式の解の個数について検討した。前年の研究成果であるn変数、(n-1)個の式からなる非線形方程式(解曲線方程式とよぶ)の解曲線について、「Ω行列」の概念を導入して解の個数が有限個であるための条件とそのときの最大個数を与えるという基本的かつ重要な結果を導いたが、この証明の過程において、不等号「>」を証明すべきところを、厳密には不等号「≧」の証明しかできていないことに気が付き、本年度の前半はこの「>」の証明に費やさざるを得なかった。結局、Ω行列の性質をうまく利用していくつかの重要な知見を得、これを基に上記の問題を証明でき、これで前年からの成果を完結させることができた。この部分の証明を電子情報通信学会論文誌に投稿した。来年度(最終年度)はこれらの結果をもとにして、当初の計画である、非常に解きにくい回路方程式の導出を検討する。 研究課題のもう一つのテーマである「極めてたちの悪い(条件数の大きい)行列の生成」に関して、(1)n次行列Aの特異値方程式の1次及び(n-1)次の係数と条件数との関係を明らかにし、これを基にして、(2)ある特殊な行列ではあるがこれを用いると従来知られていた条件数よりオーダー的にかなり大きな条件数の行列の存在を示すことができた。これらの結果を電子情報通信学会非線形問題(NLP)研究会において発表を行った。一般的にはまだGuggenheimerらの与えた条件数の上界値とは開きがあるが、次数nが3以下という小さい場合にはGuggenheimerらの上界値に近い値をもつ行列が実際に生成可能であることを示した。また上の結果は、寄り大きな条件数の生成に関する示唆を与える。 以上により、2年目の研究目標の半分程度および3年目の研究目標の予備的検討を平成24年度に行ったことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の「研究実績の概要」欄でも述べたように、昨年度の成果(証明)の一部に不十分な箇所があり、この部分の修復にかなりの時間を要した分だけ当初計画から遅れている。ただし、「修復」とはいえ、これは、本研究課題で扱った研究の主要概念である「Ω行列」の重要な性質を明らかにしたもので、この部分だけでも十分重要な知見を与えたものと考えている。 上記の理由による遅れを取り戻すため、来年度予定のうち、たちの悪い行列生成の「実装」に当たっては、研究室の学生に依頼することにするつもりである(実装に際してのフローチャートなどはもちろん私の方で作成する)。それ以外の初年度及び2年度の計画はほぼ達成している上、次年度予定の「非常にたちの悪い回路方程式の生成」の一部についての基礎研究が終わっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
非常にたちの悪い行列に関し、従来よりも遙かに有効な理論的生成法を与えたが、発表論文の共著者でありこの問題では最も著名なRump教授からはその実装化を望まれており、この方法の実装化を来年度是非行いたい。生成理論は既に完成しているので、本年度の「研究実績の概要」欄でも述べたようにこれについては、研究室の学生に依頼したい。 「たちの悪い回路の生成」については、昨年度及び本年度の基礎研究をもとにして、連携研究者である高橋規一教授とも共同研究で達成したいが、主として本研究代表者が携わることになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
4月に名古屋市で行われる電子情報通信学会非線形問題研究会で発表予定である。また9月にドイツ・ドレスデンで行われる「回路理論とその応用に関するヨーロッパ会議」(ECCTD2013)に出席し、研究討論及び資料収集を行う。また、早稲田大学の招聘研究員として研究室の教員・学生との研究討論を行うための出張旅費としても使用する。さらに「現在までの達成度とその理由」欄に述べたことに関連し、行列生成のプログラムの実装化を学生に依頼すべく、その謝金を計上する。さらに、連携研究者である高橋規一準教授が来年度から岡山大学へ転出するため、共同研究のための出張旅費を計上する。
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