2012 Fiscal Year Research-status Report
見通し外(NLOS)環境におけるUWB信号による位置推定法の研究
Project/Area Number |
23560477
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
上林 真司 中京大学, 情報理工学部, 教授 (60555415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 優 中京大学, 情報理工学部, 准教授 (40235669)
藤原 孝幸 中京大学, 情報理工学部, 助教 (90373068)
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Keywords | 位置推定 / TOA / TDOA / NLOS / UWB / 反射板 |
Research Abstract |
前年度に、UWB信号の反射波を用いて、TOA位置推定法により、基地局-移動局間の見通しが無い(NLOS: Non Line Of Sight)環境であっても、少ない基地局(最少は1基地局)で位置推定が可能であることを示した。また、本位置推定法は、TDOA法にも適用可能であることを原理的に示した。 今年度は、実際に本位置推定法をTDOA法に適用し、位置推定できることを、計算機シミュレーション及び室内実験により実証し、推定誤差の検証を行った。典型的な実験では、NLOS環境で、1基地局により、位置推定誤差6.1 cmを実現できることを示した。本成果は、IEEE VTC 2013-Fall(2013年2月投稿締切、9月開催)に投稿した。 また、本位置推定法では、各遅延波の伝搬路を特定できないが、可能性のある全ての伝搬路の組合せの推定誤差の評価により、ほぼ正確に正しい伝搬路の組合せを決定できること、伝搬路を誤った場合も極端な位置推定誤差は生じないことを確認した。更に、基地局数を1個から10個まで変化させると、基地局数を増やせば推定精度は向上するが、5基地局以上ではその効果は小さいこと、障害物の位置及び角度情報に誤差があると、推定精度が劣化するが、精度は移動局の位置に依存し、移動局が、基地局と鏡像基地局の間にあるとき、最も誤差が大きくなることを計算機シミュレーション及び室内2次元モデル実験により確認した。 また、本TOA位置推定アルゴリズムを実装したUWB位置推定装置の仕様を決定した。 更に、設計した反射板を設置することにより、見通し外エリアを効率的に見通しエリアに変える反射板設置方法を検討し、平面反射板では反射板サイズが極めて大きくなるが、円筒反射板を用いれば小型化が可能なことを確認し、反射板の形状及び設置位置の設計法を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目標は、「遅延プロファイルを用いたNLOS位置推定アルゴリズム評価」、「位置推定装置改造」、「障害物特定基礎アルゴリズム開発」であった。 「遅延プロファイルを用いたNLOS位置推定アルゴリズム評価」の目標は、基地局数を変化し、提案アルゴリズムの誤差を評価すること、及び障害物の位置、形状の情報に誤差があるときの推定誤差への影響について評価し、アルゴリズムを改良することであった。 研究実績の概要にも記した通り、基地局数を1個から10個まで変化させた計算機シミュレーションにより、基地局数を増やせば推定精度は向上するが、5基地局以上ではその効果は小さいことを確認した。また、障害物の位置及び角度情報に誤差があると、位置推定精度が劣化するが、精度は、移動局と障害物、基地局の相対位置関係に依存することを確認した。しかし、本推定アルゴリズムの最大の問題は、各遅延波の伝搬路を特定できない点であった。そこで、可能性のある全ての伝搬路の組合せの推定誤差の評価により、各遅延波の伝搬路を決定するアルゴリズムを考案し、ほぼ正確に正しい伝搬路を決定できること、伝搬路を誤った場合も極端な位置推定誤差は生じないことを確認した。更に、設計した反射板を設置することにより、見通し外エリアを効率的に見通しエリアに変える反射板設計法を確立した。 「位置推定装置改造」の目標は、UWB位置推定実験装置を改造し、NLOS位置推定が任意の基地局数で実現できることを確認することであった。改造を完了することはできなかったが、本TOA位置推定アルゴリズムを実装したUWB位置推定装置の仕様を決定した。 「障害物特定基礎アルゴリズム開発」については、成果を得られなかったが、遅延プロファイルを用いたNLOS位置推定アルゴリズムの検討は予定外の成果もあり、総合的にはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、遅延プロファイルを用いたNLOS位置推定アルゴリズムの改造、評価を中心に研究を進める。設計した反射板により効率的に見通し外エリアを解消する位置推定法を確立し、計算機シミュレーション及び2次元モデル実験によりその効果を実証し、推定精度を検証する。また、本位置推定アルゴリズムを3次元に拡張し、本アルゴリズムを実装したUWB位置推定装置を製作し、NLOS環境における、少数基地局による高精度リアルタイム位置推定を実現する。本位置推定装置による実環境における位置推定を行い、推定精度を評価し、実用化に向けての問題点を抽出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に国際会議発表を予定しており、その出張旅費30万円を計上していたが、TDOAに関する検討をまとめて発表するため、国際会議投稿を半年延期したことにより、発表が平成25年度となり、上記出張旅費を次年度に繰り越した。なお、当初は、本研究成果の発表のみを目的として、清水が平成24年度に国際会議に参加予定だったため出張旅費を計上したが、TDOA全体の成果を上林が平成25年度にIEEE VTCで発表することにした。上林は、他の発表、移動通信全般の動向把握、主要研究者との意見交換も目的として参加するため、次年度の本研究助成費からの旅費の計上は行わない。 また、FDTD電磁界解析ソフトウェア購入費用56万円を計上していたが、525,000円で購入できたため、差額35,000円を次年度に繰り越した。 次年度は、上記335,000円に加えて、10万円を請求し、合計435,000円の使用を予定している。本予算は、2次元及び3次元位置推定実験のための消耗品(電波吸収体、反射板等)(上林、435,000円)の購入にあてる予定である。当初の予定では、平成25年度はまとめを中心として、実験用消耗品の費用を10万円としていたが、上記の通り、平成24年度の研究成果から、設計した反射板の効果が期待できることが明らかになったため、その実験を実施するため実験用消耗品費を435,000円に増額することとした。
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