2011 Fiscal Year Research-status Report
携帯端末を考慮した印刷画像へのデータ埋め込みと検出法の開発
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23560479
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
棟安 実治 関西大学, システム理工学部, 教授 (30229942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花田 良子 関西大学, システム理工学部, 助教 (30511711)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | データ埋込 / 印刷画像 / データ抽出 / 携帯端末 / レンズ歪み補正 / 幾何学歪補正 / 最近傍補間 / 解像度 |
Research Abstract |
本年度は,携帯端末を用いたデータ抽出アルゴリズムの開発として,まず抽出アルゴリズム中で大きな計算量をしめるレンズ歪み補正と幾何学的歪み補正の計算時間の評価とその高速化手法を検討した.その中で,これらの補正が画素単位で行われるため,処理画素数を軽減することが直接的に処理時間の削減に寄与することが明らかになったため,原画像の解像度を参考にしながら,処理ステップごとの最適な解像度について検出率を尺度として検討を行った.さらに,目的とする埋め込み画像のみをはじめから取り扱えるようにするため,歪み補正を行う前に大まかな画像の切り出しを行うこととした.また補正には画素補間が用いられるが,これも大きな計算量を占めるため,計算量が少ない最近傍補間の採用を検討した.これらの改良によって,処理時間をこれまでの23分の1にまで短縮することができ,検出時間を約4秒とすることができた. 埋め込み可能なデータ量の増加についても新たに検討を行った.画像データに離散コサイン変換を行い,その係数を変更することで埋め込みを行っているが,ここでは低周波側と高周波側で埋め込む符号と埋め込み方法を変えることで,144ビット(英文字18文字に相当)埋め込み可能で検出率が90%を超える手法と,離散コサイン変換後の係数を埋め込む符号で置き換えてしまうことにより,192ビット(英文字24文字に相当)埋め込み可能で検出率が80から94%程度となる,2種類の方法を開発した.これにより,当初の開発目標に大きく近づくことができた. スマートフォンを指向した携帯端末への実装とその検討については,iPhoneOSの開発のためにMacintosh上に環境を作成して,プログラムの実装を行っている.Androidについても同様である.まず,画像の取り込みを安定させるためのユーザインタフェースの開発をほぼ終了させている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小レンズ口径による画像のひずみや解像度の低いセンサでも,抽出性能が劣化しにくいデータ抽出アルゴリズムの検討を行うという,今年度の目的については,歪曲収差歪みの補正と線形最適化手法である黄金分割法を組み合わせた手法の導入により,ほぼ解決できているといえる.また,そのときに問題となる処理量の軽減についても,実証実験を通じて処理量の見積もりを行った結果から,処理途中での画像解像度の検討,最近傍補間の採用,画像取り込み段階での画像の切り出しなどを通じて,実用的な処理時間を持つアルゴリズムを開発できているといえる.また埋め込み量の増加についても,英文字35文字,検出率95%以上の目標に近づけることができた.まだ改良の余地はあるもののこのアルゴリズムに沿った改良を続けていくことによって,目標は達成可能であると考えられる.画質についてはPSNRで40dBの目標はクリアできている. Android およびiPhoneOSといったスマートフォンを指向した携帯端末への実装とその検討については,評価のための基本的な準備が完了した状態である.実装に関する評価については,現在実行中である.これについては,設備の購入が昨年度の研究費の配分状況により,ずれ込んだことが理由としてあげられる.評価は完了しつつあり,順次今年度の成果を反映させる体制は整ってきているので,大きな問題になることはないと考えている. 全体として,調書にあげた今年度の目標については,わずかに遅れている部分はあるもののおおむね達成することができており,着実に研究目的を達成できているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず,Android およびiPhoneOSといったスマートフォンを指向した携帯端末への実装とその検討に力を入れ,現在の検討結果を実装にフィードバックしていく.実装先をスマートフォンだけでなく,タブレットPCも対象とすることで,動的表示可能な装置を用いたアルゴリズムへもつなげていきたい. 次に,埋め込みアルゴリズムの改良としては,英文字35文字,検出率95%以上の目標を達成するために,現在,提案している離散コサイン変換後の係数を埋め込む符号で置き換えてしまうことにより,192ビット(英文字24文字に相当)埋め込み可能で検出率が80から94%程度となる方法について,より詳細に検討を加えていくことにしたい.抽出処理については,現状の手法でフィックスし,携帯端末への実装による結果をアルゴリズムにフィードバックしていくことにより,処理量の低減を図り計算時間の短縮につなげていくことを考えている. 動的に変更可能な表示装置を用いたデータ埋め込み・抽出アルゴリズムの開発については,まず埋め込み画像の表示について検討することから始めたい.また,時間方向の変化を利用する際に,ロバスト性と埋め込み容量の増加の両方を考慮する必要があり,まず埋め込み容量の増加を目指す方向で検討する. これらの成果については,国内外の研究集会を通じて積極的にその成果を公表するとともに,論文としての取りまとめも徐々に行っていく.また,Webサイトを通じた広報についても推進していきたいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費としては,昨年度の研究費の配分状況から執行が遅れたMac Proの立ち上げに時間を要したため,導入できなかったMac Book Proの導入を行い,iPhoneOSをターゲットとしたスマートフォンを指向した携帯端末への実装の体制強化を行う.それに伴い,同様の事情から導入を見送ったMatlabツールボックスの経費の一部と計上しているソフトウェアおよびハードディスクの経費を,タブレットPCや携帯端末の購入に充てることによって,実機での研究環境の整備を行う.現有の設備,ソフトウェアを含めて,ソフトウェアの開発に必要な環境の整備を完了できるものと考えている. 旅費については,引き続き積極的に国内外の学会を通じて成果を公表するために用いる.現在,成果の発表が決まっているものとして,5月中旬に岐阜において開催される国際会議KES-IIMSS2012,5月下旬にタイにおいて開催される国際会議JCSSE2012のキーノートスピーチ,6月に開催される電子情報通信学会スマートインフォメディアシステム研究会があげられる.また,今後発表を予定しているものとして,8月に開催される電子情報通信学会回路とシステムワークショップ,9月にタイで開催される国際会議SISA2012,電子情報通信学会ソサイエティ大会,11月に台湾で開催される国際会議ISPACS2012,その他の国内の研究会などがある. 謝金については,前述のソフトウェア作成のアルバイト代として利用するとともに,研究成果のデモンストレーションのためのホームページの作成のためのアルバイト代に当てる.その他の経費については,前述の国際会議に投稿する際の英文校閲費および研究会に発表する際に必要な別刷の代金に充てる予定である.
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