2011 Fiscal Year Research-status Report
線形空間論に基づく協力ゲームの特性とその解に関する研究
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23560485
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷野 哲三 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50125605)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 協力ゲーム / ファジィ協力ゲーム / 凸ゲーム / Harsanyi dividend / 値 / 最小コスト全域木ゲーム / コミュニケーション構造 |
Research Abstract |
提携に制限のあるゲーム、ファジィゲーム、最適化から派生するゲームなど、協力ゲーム理論において現在活発に研究の進みつつある興味深いテーマに対し、線形空間論の視点からのゲームの特性の解析、ゲームの解の提案を意図して研究を進めた。 (1)協力ゲームの線形空間に満場一致ゲームからなる基底を考えることにより、この空間を同じ次元の dividend 空間に写すことができる。この事実を利用してゲームの凸性の特徴付けについて考察を行い、その結果を利用してファジィゲームの凸性について論じた。特に、通常の協力ゲームの拡張として得られる多重線形拡張がB-凸であることや Lovasz 拡張が凸であることを示した。 (2)提携の実現可能性に制約を伴うファジィ協力ゲームに対し、利得の分配方法を与える解である値を求める方法を提案した。提案方法は、ファジィ提携の超立方体において空提携から全体提携に至る実現可能な提携の点列や曲線に沿ってのプレイヤーの貢献に基づいており、実際的意味付けを持ち計算も容易であることから有用である。また通常のゲームの拡張として得られるファジィゲームに対する解は、元のゲームの Shapley値などと密接に関連することも示された。 (3)最少コスト全域木問題から派生する協力ゲームに対し、対応する新たな非協力ゲームを導入し、その自然なNash均衡解が協力ゲームのEROルールによる解(コスト分配則)と一致することを示した。またノードにグループ構造を持つ最小コスト全域木ゲームの解の特性についても考察を行った。 (4)提携の実現可能性がコミュニケーション構造で与えられる場合について、プレイヤー間のコミュニケーションに実現可能度を導入して新たな制限ゲームを定義した。またそのゲームに対する合理的な解とその性質についても考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲームの線形空間と対応する dividend 空間についての考察は順調に進んでいる。凸ゲームの特徴づけも進めてはいるが、概念の一般化も含めまだ考察の余地は多い。またゲームの解に対応する加法的ゲーム空間への近似問題については、成果の整理、発表が残っている。 提携の実現可能性については、実現可能性の程度を積極的に考えつつある。対象としているのがまだコミュニケーション構造などに限られており、その他の構造特にプレイヤー間の構造などへの発展的考察が必要である。 ファジィゲームについては、特に提携の実現可能性を積極的に利用した実用的な解を考えている。その解のもつ性質も示しているが、より掘り下げた考察により解の妥当性、合理性の裏付けを与える必要がある。また、通常のゲームからの拡張として得られるファジィゲームについては多重線形拡張、Lovasz 拡張を中心に研究しているが、他の拡張についての考察も当然必要である。 多選択ゲームについてはまだ考察が進んでいない。この線形空間の考察は今後の課題である。ファジィゲーム空間もそれ自体無限次元であることもあって、まだ線形空間としての構造的考察は不十分である。 最適化問題から派生するゲームとしては、最も興味深い最小コスト全域木ゲームについて考察している。ノード(プレイヤー)にグループ構造や階層構造を導入した場合について成果を得ているが、満場一致ゲームを基底として選ぶのが不適切であることから、ゲーム空間での考察がまだ十分行われておらず検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の意図を一歩ずつ進めていく方針に基本的に変更はない。dividend 空間の有用性は何度も認識させられているが、この空間での線形解析、凸解析的考察をさらに強く推進する。提携実現可能性に対する制限については多くの提案がなされているので、それらが dividend 空間にどのような影響を及ぼすのかも明らかにしたい。またポテンシャルのような概念をうまく導入できるのか考察が必要である。また解空間に対応する加法的ゲーム空間との関連性のさらなる考察が重要である。 提携の実現可能性の程度についてはより積極的に考慮していきたい。特に基礎となる構造として階層構造は重点的に取り上げたい。もちろんゲームの解の提案を目指す。 ファジィゲームは無限次元空間を構成するので、そこに有用な有限次元空間や好ましい性質を持つ部分集合を構築することが興味深い。また、加法的ゲーム空間への近似のようなアプローチでの解の提案を目指したい。また通常のゲームからの拡張としての Monge 拡張などについても研究を進める。 最適化問題から派生するゲームについては、やはり当面は最小全域木ゲームおよびそれに関連したゲームに焦点を絞り、ゲーム空間での特徴とそれを利用した解析を進めたい。 提携の実現可能性の構造的表現も階層的構造、束構造などを中心に進める。いずれにしろ数理的な視点からの理論的研究を基本としているが、実際的にも意味のある成果が出せるよう心掛ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品として研究用図書、OA機器、文房具類を購入する。また研究成果の発表および研究課題に関する最新の研究動向についての情報収集のための旅費が必要である。さらに、それに関連して学会への参加費などを必要とする。23年度は東日本大震災の影響もあって国内での調査などを抑えたので、24年度はそれも積極的に実施したい。
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Research Products
(3 results)