2012 Fiscal Year Research-status Report
ニッケル基合金の初期劣化部位検出を目指した超音波干渉VSMの開発
Project/Area Number |
23560496
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
山口 克彦 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (30251143)
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Keywords | 計測工学 / 金属物性 / 磁性 / 非破壊検査 / Ni基合金 / 超音波干渉 / 試料振動型磁力計 |
Research Abstract |
ステンレスやインコネルに代表されるNi基合金は、その強靱性のため原子力プラントの配管などに用いられており、それ故に劣化の早期検出が重要となっている。このようなNi基合金は非磁性であるが、初期劣化部位では微小な磁化を持つことがわかっており、部位ごとの局所的な磁気特性の測定が可能になれば劣化部位の早期検出が行えることが期待される。本研究では試料振動型磁力計(VSM)の原理を用いながらも、振動を超音波干渉によって部位ごとに起こすことで空間分解能検出能力の高い全く新しい磁気測定方法(超音波干渉VSM)を開発することを目的とする。これにより、部位ごとの磁気特性を測定し、Ni基合金の劣化部位の検出ができるようにすることを目指しており、これまでの研究過程において下記のことが実現している。 前年度に短時間バースト波による超音波干渉信号を4連ピックアップコイルで捉える手法により基本的な測定システムが構築されたことを受け、平成24年度ではその信号解析と高精度化を進めた。そのため非磁性体に長さ5mm外経2mmφの磁性サンプル棒を埋め込んだ試験片を主な対象とした固定型超音波干渉VSMを用いて既存の磁気データとの整合性を高める解析手法の開発が中心となった。その結果、外部磁場に対する応答信号は通常の磁気測定のものと遜色のないレベルになった。更にこの検証に用いた固定型VSM自体が従来のVSMのサイズを大幅に小型化できる可能性も示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バースト波による超音波干渉信号から精度の高いB-H曲線を得るための実験・解析両面に関わる開発を進めることができたことから、ほぼ計画通りに進展していると考えられる。 実験面ではピックアップコイルを試料が挿入されているテフロンの超音波媒質から切り離し、振動が伝わらないようにするための精密加工が進められた。ピックアップコイルの治具の工夫などにより試料の近傍にありながらもテフロンに接触せず振動磁場を受け取れるようになった。解析面ではピックアップコイルから得られた電気信号をフーリエ変換する前段階で処理し、磁性体試料の干渉振動のみを抽出することでより高い精度のB-H曲線が得られるようになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実証試験によりハード面でのシステム構築はほぼ完了したと考えられるので、最終年度は実機としての可能性を実証することとなる。具体的には2mmφのオーステナイト系ステンレス棒を長尺化し、部分的に劣化を加えて磁性を帯びさせた試料を用いて、本システムが劣化部位を検知できるようパラメータ調整を行う。その際に超音波の干渉波が散乱することで生じるゴースト信号を除去することが課題となると思われる。そこで信号処理系においてFFT前処理アルゴリズムを改良し、対象となるバースト干渉波からの信号のみを検出できるよう試みる。 本システムが有用なものであることを検証するために、対象試料の微視的な分析も進めていく。上述の部分劣化ステンレス材の劣化部位の検証のため、電子顕微鏡観察などの通常の測定に加えて、磁区観察顕微鏡およびμKerr測定によって部位ごとに異なる磁性状態を明らかにした上で、本システムとの対応を確認する。 一方で最終年度となることから、これまでの知見を社会に還元できるよう広報活動にも努めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として検証用試料およびその加工に必要な消耗品を計上している。また国内学会および国際会議での報告のために出張費を計上している。
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