2012 Fiscal Year Research-status Report
低雑音・高温動作を実現する高温超伝導カイネティックインダクタンス検出器の開発
Project/Area Number |
23560497
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
島影 尚 茨城大学, 工学部, 教授 (80359091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 敦 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (70313567)
武田 正典 静岡大学, 創造科学技術大学院, 講師 (80470061)
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Keywords | 超伝導デバイス |
Research Abstract |
本研究課題では、極低ノイズ特性の特徴を有する電磁波検出器として最近注目を集めている超伝導カイネティックインダクタンスディテクター(KID)と呼ばれる超伝導センサーをBi2Sr2CuCa2O(BSCCO)系高温超伝導体を用いて作成することを目指している。当該年度の研究としては、前年度に引き続き、MOD法によりBSCCO薄膜成膜条件の最適化実験を続けてきた。その結果、CeOをバッファ層として導入することが、薄膜の特性改善のために有効であることを明らかにした。また、KID素子では高周波信号を薄膜に流すことになるので、得られた薄膜を誘電体共振器法により20GHz帯における高周波抵抗の計測を行い、評価を行った。現状では、抵抗値は銅などの金属の高周波抵抗の値と同程度であるが、今後の膜質向上により さらなる改善が期待できる。 また、KID素子のパラメータとして重要となる準粒子ライフタイムの見積もりを行うため、BSCCO薄膜によるイントリンシック接合の作成を始めた。同時に、薄膜による准粒子ライフタイムを単結晶のものと比較するために、バルクにおけるイントリンシック接合の作成もスタートさせた。イントリンシック接合はBSCCO結晶のc 軸方向に固有に存在するジョセフソン接合であり、この素子評価により、BSCCO薄膜の超伝導ギャップを知ることができる。バルクによる接合作製は当該年度で完成することができたため、現在はその評価を進めている。一方、薄膜による接合に関しては、成膜プロセスは完成したが、薄膜自身の結晶性の問題から、まだ、理想的な電流電圧特性の計測までには至っていない。今後は、バルクによる解析を先に進め、今後の薄膜接合の作製を待ち、その比較を行う。また、そのフィッティングから準粒子ライフタイムを見積もる方法を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の二年目である当該年度では、MOD法による成膜の最適化、レーザーアブレーション法による高温超伝導薄膜の作成、薄膜の高周波抵抗の測定、薄膜のパラメータ抽出のためのイントリンシック接合の作製などを目指して研究を行なってきた。このうち、MOD法に関しては、CeOバッファ層がBSCCOに対して適切に機能していることを明らかにすることができた。また、KID素子に対して重要である高周波抵抗の測定を作成された薄膜に対して行い、評価まで進めることができた。このように、MOD薄膜に関しての研究は順調に推移していると考えている。一方、レーザーアブレーション法による高温超伝導薄膜作製に関してはBSCCO薄膜の作成実験を行ったが、最適な製膜条件を得ることがまだできてはいない。その代わりにMOD法によるBSCCO薄膜のバッファ層としてのCeO薄膜作製をこのレーザーアブレーション成膜システムで行い、良質な薄膜が作成できることを確認した。 薄膜をKID素子に応用するために、薄膜のパラメーター評価は非常に重要である。そのための、イントリンシック接合作製も非常に重要であり、その作成プロセスまで出来上がった。その特性評価は現在進めているところであるが、薄膜の結晶性をあと少し向上させれば、接合の電流電圧特性が測定できるめどは立っている。また、素子の特性から薄膜のパラメーターの抽出を先行して始めるために、BSCCOバルクによる接合作製は完成している。以上のことから、研究は順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に引き続き、MOD法によるBSCCO薄膜成膜条件の最適化実験は続ける。今までは、BSCCOの成膜条件による精査だけであったが、CeO薄膜の成膜条件の精査も進める。これにより、確定した製膜条件を確立する。また、得られた超伝導薄膜の高周波表面抵抗測定と成膜条件の精査を進め、表面抵抗測定結果を製膜条件にフィードバックをかけ、KID素子用の最良の薄膜作製を行う。 また、当該年度から作成を始めている、BSCCO薄膜によるイントリンシック接合を用いて、薄膜の複素インピーダンスの導出を行う。これは、後のマイクロ波回路の設計に対して重要なパラメータを与える。さらに、準粒子ライフタイムの見積もりを行なう。現在は、薄膜での接合作製までには至っていないので、バルクによる接合作製を行い、その評価法の確立を行う。 それらを踏まえて、研究三年目である最終年度で、KIDの中心的要素となるコプレーナ伝送線路による共振器構造の作成を行う。また、コプレーナー線路による薄膜共振回路を作成し、その共振特性の測定を行う。これらのことから、BSCCO薄膜を用いたKID素子が、実用可能な性能が得られるかどうかの検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は薄膜作製のための、YAGレーザーのフラッシュランプとDIフィルターは定期的に交換が必要なため、消耗品として購入する。MOD成膜用のMOD成膜溶液も消耗品として購入する。KID素子作成のために、薄膜作製を継続的に続けなければいけない。このため、400枚ほどのサファイア基板と、MgO基板の購入を行なう。 研究成果の外部へのアピールのため、年2回の応用物理学会、日本で開かれる国際会議であるISSの旅費とその発表経費に予算を使用する。さらに、研究代表者、共同研究者、研究連携者の密接な研究打ち合わせのために、年二回のミーティングを計画しており、その旅費に予算を使用する。
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Research Products
(10 results)