2012 Fiscal Year Research-status Report
誤差1度以内を目指した脳内深部温度無侵襲計測用マイクロ波ラジオメータシステム
Project/Area Number |
23560502
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
杉浦 敏文 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (20135239)
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Keywords | マイクロ波ラジオメータ / 温度計 / 脳 / 深部温度 |
Research Abstract |
新生児脳低体温療法用の五周波マイクロ波ラジオメータ装置を開発している.本装置は脳組織から自然発生している熱雑音電磁波を頭皮上に置いたアンテナで受信,増幅して物理温度を求めるものであるが,その対象とする(雑音)電力が極微弱であり,携帯電話,自動車,冷蔵庫,及び各種電子装置等が発する電磁雑音によって大きな影響を受ける.また,装置自体の温度変化も計測誤差の原因となる.そのため,装置の熱絶縁対策,電磁雑音対策が重要であり,今まで各種の対策を行ってきた. 昨年度は温度分布ファントムを用いた測定実験で,表面から5 cmの位置で誤差0.4 ℃,信頼区間(測定温度分解能)1.03 ℃での測定が可能であることを示したが,常に誤差を1 ℃以内にすること,信頼区間を常に1 ℃未満にすることなど,測定結果の再現性に問題のあることが判明した.従って本年度は,測定結果の再現性を阻む要因を調査することとし,温度分布ファントム,装置全体の温度安定性等に焦点を絞って検討した.その結果,測定中の(測定は数時間連続することを想定)装置の温度変動が2 ℃前後あること,温度分布ファントムで用いるボーラスを想定した冷却水中の微小気泡が必ずしも安定して除去されていない可能性があること,温度分布ファントムで用いる水槽の深さが足りないこと等が疑われた.そこでまず冷却水中の気泡が測定結果に与える影響を電磁界シミュレーションを行って検討したところ,気泡の層が50μmの場合に約0.4 ℃,100μmで約1 ℃,150μmで約1.4 ℃,200μmで約1.67 ℃影響を与えている可能性のあることが分かった.また,水槽の深さが十分でないために測定中に温度ファントム自体の温度が変動している可能性も考えなければならないことが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請の目的は、脳内深部温度無侵襲計測装置の測定精度を誤差、信頼区間(温度分解能)共に1 ℃以内にすること、である。温度分布ファントムを用いた測定実験により、表面から深さ5 cmの位置において、誤差0.4 ℃、信頼区間1.03 ℃で測定できることを示した。このことから、本装置の目的とする測定性能は実現可能であると考える。 しかしながらこの測定精度の再現性(安定性)の問題点を種々検討した結果、この安定性に影響を与えている要因として、(1) 装置自体の温度安定性、(2) 温度分布ファントムの温度安定性、(3) 潅流冷却水中(ボーラス中)への気泡の混入等がそれぞれ独立要因として存在することが判明した。また、当初は水を使わない温度分布ファントムを制作することを目標としていたが、現時点で入手可能な素材で脳内温度分布を実現でき、且つ金属類を含まないファントムを制作することは困難であると考えるに至った。 以上のことより、今年度の目標達成に関してはやや遅れていると考えている。しかしながら問題点を明らかにすることができたことから、それぞれの対策を立てることによって当初の目的は達成できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)装置全体の温度安定性を向上する。そのために装置をできる限り囲って熱が溜まらないようにファンを取りつけ、内部からの強制排気を行う。 (2)潅流冷却水中の気泡の混入を防ぐ。現在はアンテナ挿入部分において冷却水が空気と接する部分があるため、この部分を密閉して閉回路構造とする。その際、潅流ポンプの制御に影響を与えないように出力などを工夫する。 (3)温度分布ファントムの温度安定性を向上する。現在使用している水槽は深さ20 cm程度であるため、長時間の測定実験中に底の部分から徐々に熱が逃げていた可能性が高い。したがって、水槽を深くすると共に水槽の底及び周囲の熱絶縁対策を徹底する。 以上の対策を一つずつ施してその効果を確認しながら測定実験を行うことで、当初の目的を達成できると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
なし。
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