2013 Fiscal Year Research-status Report
誤差1度以内を目指した脳内深部温度無侵襲計測用マイクロ波ラジオメータシステム
Project/Area Number |
23560502
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
杉浦 敏文 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (20135239)
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Keywords | マイクロ波ラジオメータ / 脳深部温度 / 無侵襲 / 新生児 / 低酸素虚血症 |
Research Abstract |
本研究は出産時の低酸素虚血症に起因する新生児の死亡、或いは脳後遺症を予防する低体温療法で用いる脳深部温度無侵襲装置を開発している。装置は1.2、1.65、2.3、3.0及び3.6 GHzを中心周波数とする5台のマイクロ波受信機から構成されており、現在までに水槽を使った温度分布ファントム測定実験によって、表面から5 cmの位置において約0.4 ℃の誤差と約1 ℃の信頼区間で測定できることを示した。 今年度は臨床での応用を念頭に長時間の連続測定実験を行い、装置の安定性を検証した。5時間程度の連続測定実験の結果、温度推定値が時間と共に次第に減少し、数時間で数度(3-10 ℃)低下することが判明した。このとき、5台の受信機の出力電圧も時間と共に減少していた。この出力低下の原因はまだ全て明らかになってはいないが、(1)アンテナケーブル直上、アンテナ筐体付近及びアンテナ周囲部分、及び測定装置付近の室温が最大で約2 ℃の幅で変動、(2)温度分布ファントム水槽内部壁付近の水温が最大で約1 ℃上昇(測定位置での温度は一定)、(3)水槽水面から蒸発した水分がアンテナ、アンテナ-ケーブル接合部に付着、等の現象が起こっていることが判明した。また、現在使用しているアンテナケーブルの経年変化、アンテナケーブルに沿った温度勾配も出力変動の大きな要因と考えられた。 今後はアンテナケーブルを最新のものに入れ替える、水を使わない温度分布ファントム(肉と脂肪で構成)を作成し、測定実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請の目的は、臨床現場で使用する脳深部温度無侵襲計測装置の測定精度の再現性、長時間測定における装置の安定性などを検証することであった。 5時間に及び連続測定をした結果、温度推定値が次第に低下することが判明し、その原因を調査するために多くの時間を要したこと、また現在も調査は継続していることから、今年度の目標達成に関してはやや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
長時間測定における推定温度低下の原因は幾つかの要因の複合効果によると考えられ、対策に少し時間がかかることが予想される。しかしながら最も影響を与えていると思われるのは、アンテナとアンテナケーブルの温度変動、水槽から蒸発する水分の挙動と考えられる。 今後は、(1)水を使わない温度分布ファントムの作成、(2)新しいアンテナケーブルを使用すると共にアンテナからケーブル端までの温度制御を行う、の二つの対策を重点的に行う予定である。
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