2013 Fiscal Year Research-status Report
表面改質層センサを利用したステンレス鋼の高精度劣化診断システムの開発
Project/Area Number |
23560503
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 勝之 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (80325240)
|
Keywords | 非破壊評価 / ステンレス鋼 / 表面改質層 / マルテンサイト相 |
Research Abstract |
本研究の目的は,電磁交流インピーダンス法(EMI)と加工変質層センサを用いて,ステンレス鋼の高精度劣化診断システムを開発することである.本年度は,引張変形によって5%から40%まで余ひずみを与えた試験片に弾性変形範囲内で引張応力を負荷して,SUS304の透磁率特性の応力依存性について調査した.その際,計測方向の異なる二つのコイルと電磁石の方向を変えることによって,試験片長軸方向と幅方向の試験片透磁率と引張応力の関係を調べた.これは,引張応力を試験片に負荷した場合,長軸方向は引張ひずみ,幅方向には圧縮ひずみが生じるため,引張と圧縮変形両方の影響を評価することが可能になるためである.その結果,以下のことがわかった.①長軸方向の透磁率特性には明確な引張応力依存性が観察されなかった.この原因としては,マルテンサイト相内の内部応力がすでに高く外部応力によって透磁率変化が生じにくかったことおよび実験条件の問題が考えられた.②幅方向の透磁率特性計測では,引張応力によってインピーダンス曲線が変化する現象が観察された.ただし,従来の評価方法では,その変化を定量的に評価しにくいことがわかったため,新しい評価手法を考案し,現在再評価中である.③幅方向の計測によって,外部応力がインピーダンス曲線に影響を及ぼすことわかったが,その影響度は以前の研究において応力焼きなまし前後で評価した結果と比較すると,小さいものであった.このことから,マルテンサイト相の透磁率特性に対する内部応力およびマルテンサイト相周囲の塑性ひずみの影響も調査する必要がある.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
まず,前年度までに遅れがあったことに加えて,SUS304の磁気的性質の応力依存性が予想より小さかったため,測定方法の確立に時間がかかったことが一番の原因である.ただし,確立した手法は繰り返し変形にそのまま適用できるため今後は順調に進む予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は,昨年度行う予定であった繰り返し変形下でのインピーダンス計測と内部応力とマルテンサイト相の磁気的性質の関係を調査する予定である.まず,本年度前半で以下の三つの研究を行う.まず,計画段階で行う予定であった低サイクル疲労試験は行わず,100回未満の低繰り返し数において耐力以下の応力と耐力以上の応力で生じるマルテンサイト相の形状,分布形態と磁気特性の関係を調査する.次に前年度行えなかった内部応力とマルテンサイト相の磁気的性質の関係を調査し,さらに平面曲げ疲労試験機の製作を行う.今年度後半において,高サイクル疲労試験を行い,疲労による磁気的性質の変化要因について議論する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度,応力下での試験が終了しなかったため,疲労試験機の製作まで行うことができず,使用額に差が生じている. 本年度は以下の項目について使用する予定である.①平面曲げ疲労試験機の部品購入および製作費②疲労および内部応力測定用試験片製作費③磁性層体積分率測定機器のレンタル経費
|
Research Products
(1 results)