2011 Fiscal Year Research-status Report
光波マイクロホンによる大気圧プラズマの放電音の可視化と現象解明に関する研究
Project/Area Number |
23560510
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中宮 俊幸 東海大学, 産業工学部, 教授 (90155812)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 光波マイクロホン / 放電音 / 大気圧プラズマ |
Research Abstract |
主にオゾン生成用として使用される放電電極に、高電圧を印加して大気圧プラズマを発生させた。大気中に電極を設置し、その真上に光波マイクロホンの半導体レーザビームを通した。回折像強度が最大となる位置に、光検出器を固定した。この検出器からの電気信号と、比較用の通常のコンデンサマイクロホン(RION UC-31、周波数帯域:10 Hz~100 kHz)からの信号に加え、高圧プローブによる印加電圧波形と、シャント抵抗(50 Ohm)から得られた放電電流波形をデジタル・オシロスコープ(Tektronix DPO4104B、23年度購入設備)で測定した。4チャンネル(電圧電流波形及び両マイクロホンの信号波形)同時に記録し、電源電圧値や周波数を変えて放電状態を変えることで、音波の周波数成分の変化や強度を調べた。 電極部に、正弦波(7 kVpp、10 kHz)の電圧を印加して、発生した各波形をデジタル・オシロスコープで記録し、高速フーリエ変換(FFT)解析を行い、周波数成分を調べた。電圧波形には、基本周波数(10 kHz)のみ、電流波形の周波数成分は、基本周波数と2倍の周波数成分(20 kHz)が含まれていた。光波マイクロホンで計測した放電音には基本周波数から、20倍の周波数成分(200 kHz)まで幅広く含まれ、2倍の周波数成分の強度が最も強かった。比較のために用いたコンデンサマイクロホンでも同様の傾向が見られたが、性能限界値の100 kHzまでしか検出されず、光波マイクロホンの優位性が確認できた。同一の電圧値で、電源周波数を30 kHzに上げて、計測した各信号波形のFFT解析を行った。放電音は、2倍の周波数成分(20 kHz)の強度が、他の周波数成分と比較してさらに強くなった。光波マイクロホンで計測した放電音は、基本周波数から、6倍の周波数成分(180 kHz)まで幅広く含まれていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、大気圧中で誘電体バリア放電電極に高電圧を印加し、放電音(コンデンサマイクロホンと光波マイクロホンを用いて計測)を測定し、印加電圧の周波数の2倍の周波数成分の強度が、最も強くなる事が分かった。光波マイクロホンは、使用したコンデンサマイクロホン(周波数帯域:10 Hz~100 kHz)より高い周波数成分まで検出することができた。次に、電極表面と光波マイクロホンのレーザビームとの距離(1、5、10cm)を変えて、放電音の周波数の2倍の周波数成分の強度の変化を計測した。電極表面からの距離が広がるのに正比例して、信号強度が低下することも確認できた。 さらに、放電電極をチャンバー内に設置し、放電電極に正弦波(4 kVpp、45 kHz)の電圧を印加して、雰囲気ガスをHe(分子量:4.02)、N2(分子量:28.0134)やAr(分子量:39.948)に変えた場合について、実験を行った。容器の外側から、光波マイクロホンのレーザ光を導入して放電音を計測した。雰囲気ガスの分子量が大きくなるほど、放電音の強度が強くなる事を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.放電音発生時の電極表面温度の計測大気圧非熱平衡プラズマの一種である誘電体バリア放電は、低温プラズマとも呼ばれ、イオン温度やガス温度は常温程度と言われている。しかし、赤外線カメラ(現有)で予備的に電極表面温度を計測してみると、40℃以上を超えていることが分かった。赤外線カメラで電極表面温度を計測しながら、電源電圧や周波数をパラメータとして放電状態を変え、放電音の変化を調べる。 2.放電音の2次元音場の計測電極表面から発生する放電音の強さを2次元音場で計測するために、光波マイクロホンとCT(Computed Tomography)技術を組み合わせる。X方向に動くステージの上にθ方向に回転するステージをのせ、その上に放電電極を設置する。断面の音場分布 と計測データである投影の関係は、ラドン変換で表される。投影から再構成により音場分布を復元すると、2次元音場を求めることができる。さらに、音源からの位相情報を考慮したCT技術の開発を試みる。予備実験として、放電電極の代わりに超音波振動子を2個、距離を離して設置し、発信器からそれぞれの超音波振動子に位相差のある正弦波信号を送り、2次元音場の強度及び位相分布を求める。 また、光波マイクロホンの小型化や安定度向上のために、光ファイバーを用いたシステムの実現可能性について探る。具体的には、半導体レーザ装置からの光を光ファイバーに導入してGRINレンズから空中に放出し、放電音によって生じた散乱光を含むレーザ光をGRINレンズで集光する。光ファイバー内を伝播したレーザ光を、反対側のGRINレンズから再度空中に射出し、フーリエレンズシステムを通して、放電音に伴う微弱信号の検出を試みる。 これらの機器を使って、大気圧プラズマの生成に伴って発生する超音波の分布を可視化し、大気圧プラズマにおける音情報の有用性について明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の購入予定の設備備品費として、広帯域プログラマブル・フィルタ(エヌエフ回路設計ブロック社製 3628)を予定していた。同一機種を取り寄せて、テストしたところ、当初予定したより内部雑音が多く、検出した信号に影響を与えてS/N比が低下することが判明したので購入を中止した。検出した放電音を一旦、コンピュータ内部に保存し、ソフトウェアでフィルタを設ける方針に変更したので、大きな影響は生じていない。次年度では、「今後の研究の推進方策」で述べた事項を進めるために、信号の位相差を可変できる発信器の購入や光ファイバーなどの光学部品、及び研究成果を国内外で公表するための出張旅費を予定している。
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Research Products
(6 results)