2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560515
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
福田 恵子 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 准教授 (70396266)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 近赤外分光 / 脳機能計測 / 生体計測 / 脳血流 / 皮膚血流 |
Research Abstract |
研究の目的は、近赤外光生体計測(NIRS: near infrared spectroscopy)において課題となっている測定信号に含まれる外乱を簡便な手法により大脳皮質血流から分離することにより、高精度な脳機能計測法を確立し、NIRSの活用範囲を広げて学習効果や思考力の評価などの脳機能の解析に役立てることである。このために、本研究は2種類の補正方法を併用した補正技術とプローブ配置に関して、アルゴリズム及び装置化の実現性を検証することを目的としている。平成23年度はシミュレーションによる手法の解析と生体ファントム実験用の3チャネルの装置を試作し、補正法を検証した。研究内容は以下の通りである。(1) 正三角形のプローブ配置を提案し、二種類の補正方法の有効性を検証した。正三角形の頂点では照射、受光、同一開口補正の受光を、各頂点から等距離となる重心では等距離点補正の受光を行う。計算機シミュレーションにより補正信号の特性を解析した結果、局所的な感度を持つ同一開口補正で影響の最も高い開口部近傍の吸収体変化を検出可能であること、等距離点補正で測定対象領域の平均的な表層吸収領域(血液量の変化領域に相当)を検出できることを示した。(2) 3チャネル(=1波長3光源4検出)のシステムを試作し、生体模擬ファントムによる実験を行った。正三角形の頂点から周波数変調された同一波長の近赤外光(780nm)を照射し、各頂点と重心にて受光し、各変調波の強度変化を測定した。対称性の確認と感度調整の後、表層・深部吸収体の位置による受光強度変化(=感度)を求めた。二種類の補正信号を利用することで表層吸収体領域の位置と大きさの検出が容易になることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体ファントム実験により、提案手法の有効性は確認できているが、生体適用のためのシステム構築にやや遅れが生じている。これは、生体ファントム実験の準備段階での試作回路の不具合に伴う改良に時間がかかり、実験評価の時期が研究協力者である学生の授業のない夏季休暇からずれて評価に十分な時間が取れなかったためである。これに伴い、生体適用のためのシステム構築がやや遅れている。このため、当初計画していた多光源からの受光信号を分離技術に用いる復調技術に関して従来法を用いることで時間の短縮を図る。なお、復調技術はファントムによる方式確認を実施しており、十分な精度を持つことが検証できれば今後システムに適用できる。
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Strategy for Future Research Activity |
生体計測へ向けて、各光源を2波長としたシステムを開発する。生体適用時の2種の補正信号の特性や光ファイバプローブ及びプローブ固定具の評価を行う。開発システムの評価後、姿勢変化や各種タスクに対する脳機能計測への適用する。 まず、姿勢変化に伴う血液量変化の測定では、実験の実施状況を把握するために3軸角度センサによる頭部の位置、姿勢変化の検出とビデオカメラによるモニタを実施する。次に、計測データから皮膚血流と深部血流の分離を試みる。脳機能計測においては外乱となる皮膚血流には感情の起伏に伴う信号が含まれていると考えられている。そこで、信号処理技術により脈波の検出とヘモグロビン濃度の推定を行い、脳機能計測時の感情変化のモニタを検討する。なお、脳機能測定時のタスクとしては、感情の起伏などによる皮膚血流の変化と脳機能変化が同時に生じるものを実験対象として考え、外乱・感情変化などによらない高精度な脳機能計測を検証する。具体的には(1)氷水による抹消刺激反応時の脳機能、(2)計算課題による脳機能、(3)感情変化を含むマルチタスク時の計算課題による脳機能、(3)感情、姿勢変化、脳機能の情報が混在する将棋等の卓上ゲーム実施時の脳機能を測定し、補正効果を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生体計測システムによる脳機能計測に向けて、各チャネル2波長化する。このため、光プローブファイバやレーザ駆動装置、頭部固定用の装着具の開発・購入のための部材を購入する。また、2波長化に伴う微弱光の測定のためのアバランシェダイオード受光回路装置、半導体レーザ、回路部品、実験用具などを購入する。生体計測の実施状況をモニタするためのビデオカメラや脳機能測定時のタスク提示及び制御用のパーソナルコンピュータを購入する。また、本研究により得られるNIRSの精度向上の効果を学会にて発表を行うための参加費や旅費及び論文の投稿料、英文書校正代などに使用する。
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Research Products
(3 results)