2012 Fiscal Year Research-status Report
下肢麻痺患者の自立歩行の範囲を広げる補助ロボットのセンサ・制御系の開発
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23560526
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宇野 洋二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10203572)
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Keywords | 装着型ロボット / 下肢麻痺患者 / 歩行補助 / 転倒予防 / 歩行器 |
Research Abstract |
下肢麻痺患者が歩行補助ロボットを装着して、平地だけでなく傾斜面や段差面においても安定に歩行できるようなシステムの開発を進めた。今年度は、平成23年度に構築した歩行補助ロボットのセンサ・制御システムをベースにして、足底圧計測装置の改良とゼロモーメントポイント(ZMP)に基づく制御法を考案するとともに、システムの動作テストも始めた。 具体的な研究成果は以下の通りである。 補助ロボットを装着した下肢麻痺患者は身体が拘束されて機械的に動作が生成されるので、歩行中のわずかな不整地や傾斜などでも体勢を崩して転倒しやすい。そこで、歩行器に3軸角度センサと加速度センサを搭載するとともに、補助ロボットの足底に小型力覚センサを挟み込み、転倒予防の機構を組み込んだ。これにより、脚が地面に着くタイミングや離れるタイミングを検出することが可能となった。さらに、歩行中の足底圧情報からZMPを算出し、ZMPが支持脚足底の内部に存在するように遊脚のスウィング動作のタイミングを調節することによって、前方への体重移動を行う制御法を考案した。次に、段差面に対して歩行器のセンサ情報と足底圧情報に基づいてその高さを推定し、安定な昇段歩行のパターンを生成する制御システムを開発した。また、歩行補助ロボットのつまずきに対して身体バランスを回復するセンサ制御システムを構築した。最後に、健常者を被験者として歩行補助ロボットシステムの動作テストを行った。その結果、歩行直前の歩行器の動作により段差を正確に検出でき、段差の高さに応じて昇段歩行および降段歩行ができた。さらに、足底内の圧力中心位置(COP)の軌道を解析したところ、1歩目の着地時における遊脚のCOPが安全な領域内にあること、単脚支持期におけるCOPは余裕を持って支持脚足部の内に納まり変動も小さかったことから、安定した歩行が実現されたことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に実施予定の課題である、足底圧計測装置の制作とゼロモーメントポイント(ZMP)に基づく制御法を開発することができた。さらに、健常者を被験者としてシステムの動作テストを実施し、段差を検出するとともに推定した高さに応じてスイングの動作を生成できることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度、24年度にかけて完成した歩行補助システムの動作テストと制御系の改良を行う。まず、安全性に留意して健常な被験者に補助ロボットを装着し、歩行器を使いながら平地面、および段差面で歩行してもらい、身体各部の運動を3次元位置計測装置で計測する。評価のポイントとして、第一に下肢麻痺患者の運動軌道と補助ロボットの運動軌道とが時空間的にどの程度協調しているかシナジー解析を通じてチェックする。第二に転倒リスクの高い歩行に至ったときにロボットが自律的に離脚タイミングを制御して後方への転倒を回避することを確認する。システムの安全性が十分確保されたら、理学療法士に協力を依頼し、下肢麻痺患者で臨床試験を実施する。最終的には、下肢麻痺患者が屋内にある段差(最大で7cmほど)を乗り越えたり降りたりできるように、また、5~10度程度の緩やかなスロープでの歩行を可能にする補助ロボットシステムを完成させる。 なお、名古屋大学工学研究科の香川高弘助教には連携研究者として、歩行補助ロボットのヒューマンインターフェースに関する助言を得るとともに、歩行計測実験と動作テストへのサポートを受ける。また、大学院生2名から、センサ・制御系の開発、および動作プログラムの作成について協力を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
歩行補助ロボットのセンサ制御システムを改良するために各種電子回路部品を購入する。特に、歩行補助ロボットの足底に組み込む薄型の圧センサは破損しやすいので、予備を含めて数個購入する。また、大学院生2名にセンサ・制御系の開発、および動作プログラムの作成などを依頼するため、研究業務補助を計上する。 本研究によって得られた成果の情報発信のために、国内外で積極的に研究発表を行うとともに、装着型の運動補助ロボットに関する最新の研究動向を調査するための旅費も計上する。さらに、研究成果を論文として刊行するための投稿料と別刷り代も計上する。
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Research Products
(10 results)