2011 Fiscal Year Research-status Report
非線形制御,非線形計画法と微分方程式の数値解法の融合
Project/Area Number |
23560535
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
半塲 滋 琉球大学, 工学部, 准教授 (70284958)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 非線形制御 / 非線形計画法 / ディスクリプタシステム / 適応制御 |
Research Abstract |
(1) 制御問題を非線形最適化に帰着させて解くアプローチの一環として, 非線形離散時間システムに対する適応モデル予測制御系を構成し, 構成された適応システムが有限時間内での収束という好ましい特性を持つことを示した. また, Mathematica を用いて, この適応システムの性能を評価する数値実験をおこなった. この研究成果は, 非線形離散時間適応制御系が構成可能であるための十分条件は適切な励起信号の存在と目標点への可到達性のみであり, 類似研究で用いられることの多いパラメトリックな制御リャプノフ関数等は不要であることを示したという点において, 理論的に重要である. また, 制御入力を決定するために非線形計画法を用いているという点において, この研究の目的である非線形制御と非線形計画法の融合は達成され, 連続時間システムに対して離散時間補償器を実装する数値実験をおこなっているという点において, 微分方程式の数値解法との融合も達成されている. 成果を論文として取り纏めたものは既に学術雑誌に投稿済みであり, 現在査読プロセスが進行している. (2) 非線形ディスクリプタシステムに対して本手法を適用するための準備として, 非線形ディスクリプタシステムの微分可能解について検討した. 非線形ディスクリプタシステムでは一般に解の存在と一意性は保証されないのであるが, 本研究では, 微分可能解を許容する初期値を(局所的に)すべて特徴付け, かつ解が一意でない場合には適当なパラメータを用いてすべての解を(局所的に)特徴付けた. 特徴付けに用いられた手法は陰関数定理および逆関数定理であり, 構成的である. これらの研究成果を第12回制御部門大会で発表すると同時に, 論文として取り纏めたものを学術雑誌に投稿した. 査読プロセスは現在進行中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
筆者の所属する機関では2011年度にJABEE を受審した. JABEE 受審には教員 8名程度のチームが対応しており, 筆者は本予算申請時には対応チームに入っていなかったのであるが, 2011年度に急拠担当を命じられた. JABEE 実地審査は10月下旬におこなわれ, 一次審査報告書への対応などの処理が12月下旬まで続いたのであるが, この間はJABEE 関連の事務処理に忙殺され, 研究のための時間をまったく取ることができなかった. 12月中旬以降は研究を進め, 初年度の研究計画をある程度達成しているのであるが, 1年の2/3あまりの時間の喪失を完全に挽回するには至っていない. 達成度について具体的に述べると, 上述の非線形離散時間適応制御系に関する研究成果は, 非線形制御, 非線形計画法および微分方程式の数値解法をすべて含んだものとなっており, かつ, これらを融合することにより, 従来考えられていたよりもずっと制約的でない条件下で非線形適応制御系が構成可能であることが示されている. また, 適応系であるので, パラメトリックな不確かさには対応可能である. 一方, 非線形ディスクリプタシステムについては, 微分可能解を許容する初期値を(局所的に)すべて特徴付け, かつ解が一意でない場合には適当なパラメータを用いてすべての解を(局所的に)特徴付けることができた. これは, 本手法を非線形ディスクリプタシステムに対して適用するために是非やっておかねばならないことであり, かつ, 得られた特徴付けが単なる存在定理ではなく構成的であるという点において本手法の背景にある思想と合致している. 一方, パラメトリックでない不確かさへの対応や, moving horizon オブザーバとの併合系については未完成である.
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究計画に半年弱の遅延が発生しているので, 当初の研究計画を半年ずらす方針で研究を進める. すなわち, パラメトリックでない不確かさへの対応や, moving horizon オブザーバとの併合系の構成について, 既に得られている研究成果を組み合わせ, 拡張する形で検討を進める. また, 非線形ディスクリプタシステムについては, 初年度の研究成果を踏まえ, 当初の予定通り, 非線形計画法・数値解法との融合によって(少なくとも概念的には)制御系設計が可能となるような枠組の構築を目指す. これに併せ, 数値解法に関する検討を進める. 不確かさへの対応の一方策として, 確率系の理論を取り込むことを試みる. ラジコン模型を用いた実証実験については, 上述の遅延を踏まえると, 今年度は機材の準備および実験システム構築の留め, 来年度に本格的な実験をおこなうのが合理的であると考えられるので, この方針で研究を進める.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)プレゼンテーション用のノートパソコンが老朽化しているので新規に購入する. (2)MatlabおよびMathematicaの保守費用を支払う. Matlabについては, 実証実験や最適化計算をおこなうためのツールボックスが不足しているので適宜追加購入する. (3)実証実験用の機体や計測・制御システム構築のための周辺機器を購入する. (4)数値計算能力が不足した場合はコンピュータを適宜追加する. (5)必要に応じて文献を購入する. (6)1~2回の学会発表を予定している. (7)論文投稿のために英文校正サービスを利用する. (8)その他, 各種消耗品等を購入する.
|
Research Products
(1 results)