2012 Fiscal Year Research-status Report
構造設計を含む大規模非線形遅延結合ネットワーク系の巨視的同期制御
Project/Area Number |
23560537
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小口 俊樹 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50295474)
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Keywords | 制御理論 / むだ時間 / 複雑系 / 同期 / ネットワーク系 / パターン形成 |
Research Abstract |
本研究の目的は,多数のサブシステムからなる大規模遅延結合ネットワークシステムの同期制御問題を考え,従来のシステム間の結合強度と遅延時間に関する同期条件の導出だけでなく,ネットワーク構造を含めた同期ネットワークの設計法を導出することである.さらに,巨視的同期的挙動を解析するためのダイナミクスの縮約法を検討し,新たな同期及びパターン形成の制御手法を開発することを目的としている.本年度は,特に,この目的の下に設定した3つのサブテーマのうち (b)外部入力による非線形遅延結合ネットワーク系の同期解析・制御手法の開発を行うことを計画していた.昨年度までに得たネットワーク系の同期条件の下で,外生入力の一部サブシステムへの印加に伴う部分同期パターンの発現と,そのパターンの制御手法について,グラフ理論における公平分割の概念を導入することにより推定可能であることを明らかにした.また,このように外生入力により生じる部分同期に基づくシステムのクラスター化について検討を行い,サブテーマ(c)大規模ネットワークの巨視的同期条件の解析・制御手法の開発の基礎理論の開発を行った.さらに,昨年度の結果を発展させ,直積構造を持つネットワーク系の部分同期パターンの形成条件について検討を進め,さらにHindmarsh-Rose回路を用いた直積ネットワーク系における部分同期パターンについて,実験検証を行い,実システムにおける個体差による推定誤差は伴うものの,概ね推定通りの結果が得られることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,3カ年の研究テーマの下に設定されたサブテーマのうち,主に2年目に割り当てられている(b)外部入力による遅延結合ネットワークシステムの同期制御手法の開発,について検討を行い,外生入力の印加によるグラフの公平分割に基づく部分同期パターンの発生条件を明らかにしている.さらに,25年度で主に実施することを予定しているサブテーマについても着手している.また,前年度の結果を発展させ,直積ネットワーク系の部分同期条件を明らかにし,さらにニューロン回路を用いた実験による検証も行なっている.以上の通り,申請時に計画した研究計画にしたがって,ほぼ順調に研究が実施されており,おおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度においては,サブテーマ(c)大規模システムの縮約と同期・パターン形成,について主に取り組む.さらに,双方向と一方向結合が混在する一般的なネットワーク構造に於けるネットワーク同期問題について,検討を行う.24年度に購入したHPC計算サーバを用いることにより,従来よりも大規模システムの数値実験が可能になったので,その縮約法の開発と数値シミュレーションによる検証を行う. また,24年度においては,実システムを用いた同期実験も併行して行なってきた.倒立振子や移動ロボットのような機械システムやニューロン回路を用いた実験を通じて,開発した同期条件の推定法などの妥当性についても確認してきた.25年度においては,上記の理論開発のみならず,これらの実験検証についても,3カ年の最終年度として,成果をまとめていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度において実施したニューロン回路を用いた同期実験は,オランダの共同研究先において実施された.次年度は,その実験結果の検証と,追加実験の実施及び研究打ち合わせのための旅費,さらに国際会議での成果発表のための海外派遣旅費に使用する.なお,24年度の研究遂行にあたり,予定通りの予算執行を行ったが,端数の残金が生じている.この端数を含め,25年度においては,群移動ロボットによる検証のための実験装置の改修部品の購入に充当することを予定している.また,次年度は本研究の最終年度となるため,研究成果の取りまとめに使用することを予定している.
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