2012 Fiscal Year Research-status Report
拡張極値制御方式の確立とエンジンパワートレインへの応用
Project/Area Number |
23560539
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大森 浩充 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (90203942)
|
Keywords | 制御工学 |
Research Abstract |
平成23年度に得られた結果を基本として,単気筒エンジンのMLDモデルを導出した.そのモデルを数式処理ソフトウエアとして定評の有るMaple(サイバネット株式会社)上に組み入れた.MLDモデルにはモデルの中にその特性を左右する重要なMAPが存在するためこのソフトウエアの使用に至った.これにより,近似式を導出することなく,数値データをダイレクトに用いるMLDモデルのプロトタイプが完成した.予定ではニューラルネットワークの学習により近似ネットワークを導出する予定であったが,今後の数値シュミュレータの利用を考え,Maple上に構築したものである.これにより,来年度予定の制御系デザインとほぼ並列的に制御則の開発が望まれると思われる. 一方,拡張極値制御の理論的な解析は,単純なモデルに対してのみ実施しており,まだ,上記のMLDモデルについての有用性を確認できないでいる状態である.次年度は,早急にこの問題に対処する必要がある. 最後に,研究代表者は,日本機械学会 エンジンシステム部門 Model based combustion control 研究会(Technical Section on Model based combustion control)の委員(2013年4月~2015年3月)に任命され参加することが決定した.機械系の立場の方とのモデルをベースとした交流が開始され,助言を頂くことになった.エンジン電子制御の高度化とともに,制御パラメーターが飛躍的増加し,マップ制御は既に限界に達していることへの問題意識の共通化と,モデルベース制御の具体的な制御施策について貢献できると考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に,既に開発予定の拡張極値制御手法については,可変内部モデル原理導入は済ませており,問題であった一般化予測も可能となった.これは,過去データには忘却係数,未来データには割引率を配置して,相対的に現在時刻データに重きを置くことに成功したためである.一方,平成24年には,MDLモデルを数値シミュレータにコーディングでき,制御ループの設計に取りかかっている.以上の理由により,おおむね,順調に進展していると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
数値シュミュレータMaple上で,つぎの制御問題の解決を図る.操作量をスロットル開度,気筒のポート燃料噴射量,気筒の点火時期とし,エンジン速度,スロットル通過空気流量を観測量かつ制御量とする.達成すべき制御仕様は,(S1)閉ループ安定性確保,(S2)外乱に対するロバスト性確保,(S3)モデル不確かさに対するロバスト安定性確保,(S4)サイクル平均エンジン速度が650[rpm]に漸近すること,および,(T1)エンジン速度がエンジン始動後1.5秒以内に650±50[rpm]に到達すること,(T2)始動後に発生するエンジン速度のオーバーシュートを低減すること,(T3)エンジン速度の一時的上昇・下降に対応して,エンジン速度が速やかに650[rpm]に復帰すること,(T4)操作量はチャタリングを起こしてはならない,(T5)燃料噴射量の積算値を最小とする燃費の良い状態に状態がホールドされること,とする.構築したMDL数理モデルに上記の設計仕様を満足するモデルベースの予測型極値制御方式の適用を具体的に確認する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,最終年度であり,実際に,(1)可変型内部モデルを組み込んだ極値制御方式,(2)予測制御区間を設けた時間積分評価に基づく予測型極値制御方式,の2つの理論的な方法論(以下,拡張極値制御と呼ぶ)の提案と,(3) 拡張極値制御を用いたエンジンパワートレインにおける空燃比最適化問題に対する技術応用の確立を行う. 既に,(1)~(2)については,ある程度,完成の域に達しており,具体的には,(3)についての解決が平成25年度のメインの問題となろう(具体的には,上記で述べた).具体的には,研究成果の公表とディスカッションのための旅費,および,空燃比最適化のための具体的ソフトウエアのコーディングに人件費・謝金が必要であり,主に,それらを計上している.
|