2011 Fiscal Year Research-status Report
大都市国際空港を対象としたアスファルト舗装のライフエクステンション技術の開発
Project/Area Number |
23560550
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
高橋 修 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (60236263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 亮太 独立行政法人港湾空港技術研究所, その他部局等, その他 (20455497)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 空港舗装 / アスファルト混合物 / 配合設計 / 体積設計法 / 骨材粒度 |
Research Abstract |
本研究は,わが国の大都市国際空港の実状に基づいて空港アスファルト舗装の破壊抵抗性を改善し,空港舗装のライフエクステンションを実現することを目的としている。アスファルト舗装の破壊抵抗性を改善するためには,アスファルト混合物の耐久性を高くすることが現実的であることから,本研究では素材を有機的に組み合わせて有効なアスファルト混合物を製造する具体的なガイドラインを整備することを検討課題としている。研究初年度である平成23年度は,東京国際空港(羽田空港)と関西国際空港から,舗装路面の破損状況のデータ,および実舗装の切取りサンプルを入手し,以下の2点について検討を行った。(a) 航空機の運行エリア(滑走路と誘導路)の違いに対する空港舗装の損傷状況を調査し,主な破壊形態とその要因を特定する。(b) 配合設計では実荷重を受けた状態の供試体を再現し,それを評価する必要があることから,航空機のタイヤ荷重に即したアスファルトコンクリート(アスコン)供試体の製作仕様を決定する。 検討の結果,大型航空機が数多く運航する大都市国際空港では,ひび割れや段差よりも粘性流動によるわだち掘れが主な破損形態であり,特にエプロンエリアに近い誘導路での損傷が頻繁に確認されていることがわかった。わが国の空港アスファルト舗装には,細粒度タイプ(fine graded)のアスファルト混合物が滑走路でも誘導路でも区別無く使用されていることから,また誘導路では荷重速度がかなり遅いことからこのような損傷が現れているものと考察された。また,羽田空港のアスファルト混合物で使用された素材(骨材とアスファルト)と同等のものを調達し,ニーディング作用を与えた混合物の締固め試験を実施して,切取りサンプルと同じ圧密状態を実現する締固め機器の仕様を具体的に策定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は,羽田空港と関西国際空港を訪問し,実際の施設管理者から過去の損傷データを入手するとともに,舗装管理上の問題点についてヒアリングを行う機会も得ることができた。また,空港管理者から航空機の運航データも提供してもらい,さらに誘導路の荷重載荷位置における切取りサンプルも採取してもらった。以上の現場データ,および現物サンプルを入手できたことにより,本研究テーマを実際的に着手し,当初の計画である上記の(a)および(b)の課題について検討を遂行することができた。 どちらの課題とも,設計時,供用開始時,供用後における各段階のデータが必要である。設計時と供用開始時のデータは当時の報告書が残っているので,比較的容易に入手することができたが,供用後のデータについては系統的に整理,集計する体制が取られていないことから,十分な量と質の情報を得るには至らなかった。 (b)の課題は供試体の作製仕様が決まらないと次の検討に進むことができないことから,得られたデータと切取りサンプルの範囲内でアスファルト混合物配合設計時の供試体製作仕様を決定した。つまり,実際に入手できたの材料は羽田空港のアスファルト混合物に対するものであったことから,羽田空港での現場データと切取りサンプルのみを活用し,混合物の締固め試験の結果と比較した。
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Strategy for Future Research Activity |
耐久性の高いアスファルト層を構築するには,主骨材が接触しながらもそれらによる空隙を別の小さな骨材が充填するような骨材の構造(粒子集合体)が重要である。すなわち,中間サイズ,小サイズの骨材が主骨材相互の接触を阻害しないように,かつ空隙を密に充填するように骨材サイズのバランスを考慮して各骨材粒子の比率を決めることが求められる。今後における研究の進め方としては,Bailey法を応用した手法によって混合物仕様を選定していく。まず主骨材を限定し,その主骨材が作り出す空隙の大きさを空間体積で定量化し,それを効果的に充填する骨材サイズの関係を調べる。そして,この検討を順次小さいサイズの骨材に繰り返していく。つまり,アスファルト混合物とした場合に空港の基準を満足できる骨材条件について,骨材パラメータをパラメトリックに変化させた室内実験で模索する方法である。 上記(b)の課題において入手した羽田空港での使用骨材を活用し,骨材サイズと空隙サイズ,およびそれを充填する骨材サイズの相互関係を個々の分級骨材に対する締固め実験(ドライロッド法)によって求める。そして,骨材粒度を特性化する5つのBailey骨材パラメータを参考に,これらのパラメータが配合設計時の体積特性値である空隙率,骨材間隙比(骨材とそれ以外の空気,アスファルトとの体積比),飽和度(骨材間隙に占めるアスファルトの体積比)に与える影響を定量的に調査する。つまり,Baileyの骨材パラメータに推奨範囲を設定することによって骨材の組合せをコントロールすることを考える。 また,これまでの検討により,アスファルト混合物の耐久性には粘性流動抵抗性が重要であることから,この抵抗性を評価するための試験も実施し,既往のアスファルト混合物よりも物性が改善しているかどうかについても検討する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の検討計画に基づき,Bailey骨材パラメータをパラメトリックに変化させ,その混合物の体積特性値や粘性流動抵抗性を評価するために,室内試験の実施を主体に検討を進めていく。また,23年度の検討で十分に得られなかった現場データの収集についても,引き続き活動していく。そのため,研究実施プロセスで必要となる経費としては,骨材やアスファルトなどの消耗品を購入し,試験後の供試体を処分するための費用が主なものとなり,多くの室内試験を実際に実施し,その結果を集計するための人件費・謝金,および研究分担者や各空港関係者との打ち合わせのための旅費が必要となる。 設計過程および設計成果のアスファルト混合物を評価するため試験装置,およびその供試体を作製するための機器類は既に利用できる環境にあることから,設備費は特に予定していない。
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Research Products
(4 results)