2011 Fiscal Year Research-status Report
セメント水和物のケイ酸構造を指標としたコンクリートの最適材料設計手法
Project/Area Number |
23560555
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
梅村 靖弘 日本大学, 理工学部, 教授 (70246825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 公志郎 日本大学, 理工学部, 講師 (10312042)
佐藤 正己 日本大学, 理工学部, 助手 (50580164)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コンクリート / セメント / 混和材 / フライアッシュ / ポゾラン反応 / 蒸気養生 / ケイ酸カルシウム / 水酸化カルシウム |
Research Abstract |
産業廃棄物を利用したコンクリートの材料設計では,コンクリート中の微細組織構造の物理・化学的特性の時間変化から材料特性を把握する性能照査型設計法の構築が必要不可欠になる。この設計法の構築に寄与するため本研究は,セメント水和物の大半を占める非結晶質のケイ酸カルシウム水和物とセメント硬化体の強度発現特性等を関連付ける指標となるケイ酸鎖の構造との関係を解明することを目的している。本年度は,石炭火力発電所から発生するフライアッシュとセメントの水和反応から溶出する水酸化カルシウムCa(OH)2とのポゾラン反応を解明するため,フライアッシュと水酸化カルシウムの単純配合系における水和反応と生成されるケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)の構造変化(シロキシサン鎖の鎖長分布)の分析を行った。また,セメント水和反応の促進のため蒸気養生を用いるケースが多いことから,シロキシサン鎖の鎖長分布に及ぼす加熱温度履歴の影響についても検討した。その結果,ポゾラン反応によりフライアシュからmonomerタイプのケイ酸イオンが供給され,シロキシサン鎖の鎖長分布は短鎖長側にシフトする傾向が確認され,常温20℃では材齢14日以降で確認された。一方,80℃,60℃,40℃ぞれぞれの温度で連続的に加熱すると,温度が高いほどフライアッシュのポゾラン反応は活性化され,C-S-Hの生成量が増加される。また,早期にmonomerが供給される結果,鎖長分布はより速く短鎖長にシフトする傾向にあった。内部標準物質を用いたXRD定量分析からフライアッシュに含有するquartzのような結晶性シリカ成分はポゾラン反応を受けずに未反応フライアッシュに残存することが推察された。加熱養生はAFm相の生成を促進させるが,80℃以上ではAFmおよびAFt相が消失することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度当初申請した研究内容は,フライアッシュのセメントとの水和反応過程において,水和初期におけるフライアッシュ粒子表面から溶出するケイ酸の構造を明らかにするとともに,セメントとの水和反応の解析と特にセメントから溶出する水酸化カルシウムCa(OH)2とのポゾラン反応の解析を実施し,生成されるケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)の構造変化を明らかにすることであった。フライアッシュのポゾラン反応解析のためにフライアッシュと水酸化カルシウムCa(OH)2との単純配合ペーストの水和反応解析とC-S-Hのシロキシサン鎖の鎖長分布の分析は予定通り実施しデータを得ることができた。また,フライアッシュとセメントの水和反応解析のために混合配合ペーストを作製し加熱温度履歴を変えた試験体について水和反応解析を実施した。このフライアッシュならびセメントの主要鉱物であるC3SならびにC2Sの反応分析は実施できたが,生成したC-S-Hのシロキシサン鎖の鎖長分布の分析は継続中であり,すべての分析が完了するまで3カ月を要する予定である。しかし,次年度予定しているシリカフュームのセメントとの水和反応解析を前倒して一部実施し始めていることから,概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
シリカフュームのセメントとの水和反応過程において,水和初期におけるシリカフューム粒子表面から溶出するケイ酸の構造を明らかにする。さらに,セメントとの水和反応の解析と特にセメントから溶出する水酸化カルシウムCa(OH)2とのポゾラン反応の解析を実施し,生成されるC-S-Hの構造変化を明らかにする。 実験は以下の(I)~(III)であり,その統括は,研究代表者の梅村靖弘が担当する。(I)と(II)は研究分担者の佐藤正己が分担し,(III)については C-S-Hのケイ酸鎖の構造解析に関しては研究分担者の小泉公志郎が分担し,それ以外は研究代表者の梅村靖弘が担当する。(I)シリカフュームの分析:シリカフュームの化学成分の分析,粉末X線回折(XRD)により非晶質率を測定し,シリカフュームの品質の特徴を把握し、ポゾラン反応、水和物の生成量への指標とする。(II)シリカフュームセメント硬化体の作製:シリカフュームセメントの水和反応解析のために普通ポルトランドと混合ペーストの硬化体を作製する。さらに,シリカフュームのポゾラン反応解析のためにシリカフュームと水酸化カルシウムCa(OH)2との混合ペーストの硬化体を作製する。(III)シリカフュームセメント硬化体の水和反応解析:水和反応率と水和生成物については,熱重量示差熱分析(TG-DTA),選択溶解法,XRDリートベルト法、電子線マイクロアナライザ(EPMA),溶解法を用いて分析を行い,C-S-Hのケイ酸鎖の重合度についてはTMS化法により分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
材料費はフライアッシュ,シリカフューム,セメント強さ試験用セメント、セメント強さ用標準砂,および分析に使用するガラス器具、薬品を計上する。具体的には,(1)材料費(シリカフューム:6種類×25)150,000円,(2)材料費(OPC)150,000円,(3)ガラス器具類200,000円,(4)薬品100,000円である。 研究成果の発表に伴う旅費は,(1)国内発表(コンクリート工学年次大会,広島)として100,000円,(2)国外発表 (University of Dundeeイギリス)として300,000円を計上する。 分析依頼は電子プローブマイクロアナライザによる反射電子像からの シリカフュームの水和反応分析として100,000円を計上する。 以上,直接経費 合計 1,100,000円,関接経費 合計330,000円を計上する。
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Research Products
(16 results)