2012 Fiscal Year Research-status Report
火害を受けたプレテンションPC部材中PC鋼材の付着特性と残存耐荷力の評価
Project/Area Number |
23560558
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 晋 大阪工業大学, 工学部, 教授 (30168447)
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Keywords | PC鋼材 / 火災 / 高温履歴 / 付着 / 残存プレストレス / 残存耐荷力 / プレテンション部材 |
Research Abstract |
本年度は,前年度に作製したプレテンションPCはり部材に対して,最高温度を900℃ならびに1100℃,加熱時間を30分とした加熱実験を行い,PC鋼材の受熱温度の測定やプレストレスの損失状況,外観上の損傷状況を比較・検討するとともに,載荷試験により残存耐荷力の検討を行った。 加熱試験結果より,PC鋼材の受熱温度は,900℃加熱の場合,かぶり30mmで276℃,かぶり50mmで183℃,かぶり70mmで138℃,1100℃加熱の場合,かぶり30mmで344℃,かぶり50mmで208℃,かぶり70mmで166℃となり,前年度実施した付着強度試験体での加熱試験とほぼ同様の結果が得られた。すなわち,加熱温度が高いほど,また,かぶりが小さいほどPC鋼材の受熱温度が高くなった。また,プレストレスの減少率は900℃加熱の場合,最高で5%程度,1100℃加熱の場合,最高で8%程度と比較的少ない数値となった。 残存耐荷力は,加熱しない供試体と比較して,かぶり30mmの場合で約14%,かぶり50mmの場合で約10%低下し,かぶり70mmの場合はほとんど低下しなかった。この場合,加熱温度の影響は顕著ではなかった。一方で,荷重-変位関係の初期剛性は,加熱によるひび割れの発生によりいずれのかぶりにおいても低下することが確認された。 本年度の成果より,加熱温度を900℃,1100℃,加熱時間を30分とした場合,耐荷力の低下を抑えるためには,PC鋼材のかぶりを70mm程度確保する必要があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに,火災による高温履歴がPC鋼より線の付着特性やPCはり部材の残存耐荷力に及ぼす影響を実験的に検討し,所定の成果が得られつつある。とくに,付着強度供試体とPCはり供試体のPC鋼材の受熱温度特性がほぼ同様であったことから,付着強度試験により得られた付着応力-すべり関係をPCはり部材の耐荷力の解析に用いることができることが確認されたことが大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までおおむね順調に成果を得ているが,加熱時のPCはり供試体の設置方法の都合により,供試体端部のPC鋼材定着部を加熱できなかったことから,定着部が加熱された場合のプレストレス損失量や残存耐荷力に若干の懸念が残されており,最終年度においては,端部を含め底面全体をを加熱した場合の挙動について実験的検討を行うとともに,熱伝導解析による受熱温度の推定,付着劣化を考慮したPCはりの残存耐荷力や荷重-変形関係の解析を実施し,火害を受けたプレテンションPC部材の残存耐力評価法についての基本的考え方を示す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述のように,初年度に作製したPCはり供試体のうち,定着部を含めた桁全体を加熱する実験が設置方法の都合により実施できなかったため,消耗品や実験補助謝金に関する支出が減少した。結果として,次年度への繰越金が発生したが,これらのPCはり供試体は次年度に加熱試験,載荷試験を実施する予定であり,繰越金を含め次年度に交付される研究費は,主として消耗品費や実験実施・データ整理に対する謝金として使用する予定である。また,成果発表のための旅費や,研究成果報告書の印刷費としても使用する予定である。
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