2012 Fiscal Year Research-status Report
地盤の非線形性を考慮した群杭基礎の杭間相互作用とインピーダンス特性の実験的評価
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23560562
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
齊藤 正人 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (40334156)
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Keywords | 国際情報交換(ギリシャ) / 杭基礎 / 杭間相互作用係数 / 群杭インピーダンス / 動的相互作用 / 地震 |
Research Abstract |
本年度の研究成果として、1)平成23年度に実施した杭間相互作用係数の計測を目的とした実験結果に基づく、杭間相互作用係数の数理モデルの提案と妥当性の検証、2)同じく平成23年度に実施した群杭インピーダンス試験結果の現象解明と前記杭間相互作用係数を用いたスーパーポジション法の比較とその物理的解釈である。 1)に関しては、従来の一様な線形弾性半無限地盤を仮定した杭間相互作用係数(Dobry and Gazetas, 1988)のモデルを骨格とし、加振加速度の大きさと地盤の非線形性に関する変数を含んだ形で表されるモデルを提案した。本モデルは実験結果を良好に再現することが可能であり、群杭インピーダンスのモデル化のための基本モデルとして極めて重要な成果と言える。 2)に関しては、実験から得られた群杭インピーダンスの力学的特性や性質の現象解明ならびに物理的解釈を行った。平成23年度の成果報告で説明しているように、スーパーポジション法が地盤非線形状態においても適用可能であることを確認している。しかしながら、非線形状態にある杭間相互作用係数が、群杭の剛性と減衰(実部と虚部)に及ぼす物理的なメカニズムは不明であった。本年度は、杭間相互作用係数の有無が群杭インピーダンスに及ぼす影響とその相違点を把握した。その結果、杭間相互作用係数の振幅値と位相差の振動数依存性により、群杭内の各杭が分担する単位変位あたりの杭頭反力が変化し、それにより剛性と減衰が振動数に応じて増減することで、群杭全体のインピーダンスが地盤の非線形性によらず特定のパターンで変化すること、そしてその特性は杭間相互作用係数の左記の特性に起因することが解明できた。実験結果から、地盤の非線形性と杭間相互作用、そして群杭インピーダンスを分析した事例はこれまでになく、極めて新しく有用な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目的は、標準的な群杭基礎を対象に、非線形条件下における群杭インピーダンス特性を評価するものであり、本実験により、当該基礎の非線形時におけるインピーダンス特性を定量的に評価し剛性項(実部)と減衰項(虚部)を求めることであった。本実験は平成23年度中に実施しており、平成24年度は次年度のGLPM構築に向けたメカニズムの解明を行い群杭インピーダンスの特性を明らかにするに至った。また、杭間相互作用係数の定式化がもう一つの目的であったが、これについては定式化を行い、Leading国際誌のSoil Dynamics and Earthquake Engineeringにすでに論文が掲載されている状況である。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度までに得られた結果を踏まえて、非線形時におけるGyromass-Lumped Parameter Model(GLPM)を構築する計画である。非線形時におけるインピーダンス特性は平成24年度までの実験により定量的に把握しており、また理論-解析モデルが確立すれば多様な群杭についてGLPMの目標性能が定められる。非線形性をどのように考慮するかという点が解決すべき課題である。特に、GLPMの諸数値を加振レベルに応じて定めるための効率的な方法を確立したい。PSO(Particle Swarm Optimization)は、GAによる諸数値決定法の中でも極値検索を得意とする最新の方法であり、非線形性を考慮したGLPMに本手法を拡張し、諸数値の決定を行う計画である。また、本研究ではこれまで水平加振によるインピーダンス特性に特化して研究を実施してきており、2年間で実験ならびに物理現象の解明まで達成した。これに倣い、鉛直加振のインピーダンス特性についても検討を推進し、平成25年度に実験を実施する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、載荷試験とGLPM等の解析的検討を実施することから、実験用消耗品ならびに解析用消耗品を研究費に使用する計画である。また平成25年度は、ギリシャで開催される国際会議Computational Methods in Structural Dynamics and Earthquake Engineeringに参加し、海外協力研究者であるMylonakis教授ならびに世界で活躍する杭基礎構造の研究者と一同に会し、本研究成果を公表すると共に、情報収集ならびに意見交換を行う計画である。その他、土木学会全国大会など、国内外を問わず、積極的に本研究成果の公表ならびに意見交換を行う予定である。
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