2012 Fiscal Year Research-status Report
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23560566
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
清水 茂 信州大学, 工学部, 教授 (90126681)
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Keywords | 垂直座屈 / ハイブリッド鋼桁 |
Research Abstract |
フランジ垂直座屈は、鋼桁の崩壊形式の一つであるが、腹板の強度がフランジの強度に比べ極端に弱い場合にのみ発生するとされており、通常はほとんど意識されていない。しかし、ハイブリッド鋼桁は、腹板にはフランジより低強度の鋼材が用いられることから、フランジ垂直座屈が発生しやすいといえる。現に、申請者が過去に行ったハイブリッド鋼桁に関する実験では、実験モデルの一つでフランジ垂直座屈が観察されている。 23年度は、主としてこの実験結果を数値解析により再現することに主眼を置いていたが、24年度は、主としてハイブリッド鋼桁のフランジ垂直座屈について、有限要素法によるパラメーター解析を行い、ハイブリッド鋼桁における垂直座屈の特性を調べた。パラメーターとしては、フランジの曲げ剛性(フランジ厚さ)と桁高、腹板厚さを考えた。その結果、①垂直座屈はフランジの曲げ剛性(フランジ厚さ)に大きく依存していること、②桁高は垂直座屈にはほとんど影響しない事などがわかった。 過去に提案された垂直座屈の強度式には、腹板の幅厚比が用いられているが、上記②の結果から、幅厚比を垂直座屈強度の算出に用いることは不適切であると結論づけられる。一方、ハイブリッド鋼桁と比較するため、ホモジニアス鋼桁についても同様の解析を行ったところ、ホモジニアス鋼桁においても垂直座屈は発生するが、その限界はハイブリッド鋼桁よりも大きい、すなわち座屈強度が大きいことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は、23年度に引き続き、ホモジニアス鋼桁との比較も含め、パラメーター解析等により垂直座屈の性質を詳しく調べる事を、第一の目標としていた。その結果として、垂直座屈が発生するかどうかは、フランジの板厚に依存すること、桁高は垂直座屈にはほとんど影響しないことなど、いくつかの点が明らかとなった。 一般に、垂直座屈は腹板が極端に弱い場合にのみ発生する、とされている。ハイブリッド鋼桁は、その「腹板が極端に弱い場合」に該当するが、ホモジニアス桁では、そのような場合に該当することはまれで、そのためホモジニアス桁では、通常はフランジ垂直座屈は考慮していない。しかし、本研究で比較のためにホモジニアス桁についても解析したところ、ホモジニアス桁でも場合によっては垂直座屈が発生することが確認された。 これらの結果から、垂直座屈の発生メカニズムは、これまで言われているような、腹板の強度に依存するのではなく、むしろフランジの剛性の寄与が大きいと推測される事がわかった。 以上のように、当初の24年度の目的であるパラメーター解析は、ほぼ予定通り達成できたと考えていることから、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
パラメーター解析を引き続き実施するとともに、ハイブリッド鋼桁における垂直座屈の照査式について検討する。 これまでの垂直座屈に関する照査式は、腹板の単位幅あたりの座屈強度をもとに求めており、座屈強度は幅厚比によって決まるとされている。この在来の式では、フランジそのものの強度は垂直座屈強度に直接は関係しない。しかし、この考え方に立つと、フランジと腹板の材料強度が異なるというハイブリッド鋼桁の特性を活かすことができない。また、24年度の結果からは、腹板高さは垂直座屈強度に寄与しないことがわかっている。 そこで、本研究では、フランジの剛性をもとに垂直座屈強度を決めることを試みる。具体的には、引き続きパラメーター解析を実施し、垂直座屈強度と各種パラメーターの関係を詳細に調べる。ここで、25年度は、特に、フランジの剛度と垂直座屈強度の関係に着目する。その際、ハイブリッド鋼桁の特徴である「フランジを支える腹板が降伏する」という状態を考慮する。 さらに、それらの結果をもとに、ハイブリッド鋼桁における垂直座屈の照査式について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度の経費の主なものは、謝金と旅費である。 前年度までと同様、25年度も、現実の鋼桁設計を考慮したモデル設定を行うため、引き続き、第一線の橋梁技術者の助言を得ることとしている。また、垂直座屈強度の照査式を考察するに当たっては、実務に耐えうる形にする必要があるため、これについても、橋梁技術者に助言を求める。謝金は、この橋梁技術者の助言を求めるための費用である。 また、研究成果をポーランドで開催される国際学会で発表し、各国の研究者からの討議を受けることを考えているため、国際会議参加のための参加費・旅費を計上している。 この他、報告書作成のために、若干の経費を充てる予定である。 なお、24年度は、当初計画で見込んだ金額よりも安価に研究が完了したため、若干の次年度使用額が生じている。
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Research Products
(2 results)