2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560572
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
田中 俊幸 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50202172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 敏文 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20452873)
藤本 孝文 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40264204)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コンクリート診断 / 逆問題 / 電磁波レーダ / フレッシュコンクリート / 非破壊検査 |
Research Abstract |
申請した科研費の研究テーマは3つである.各テーマ毎に今年度の実績を記述する.1.コンクリートを破壊せずに打設後のコンクリート内部の比誘電率の時間変化をモニタリングするためにSMAケーブルを用いて同軸プローブを作成した.同軸プローブをフレッシュコンクリートに挿入し電気定数を調査した.また,複数本の同軸プローブを挿入したコンクリート試験体を作成した.今後は電気定数の時間変化やプローブの挿入深さの違いに電気定数の変化を調査する予定である.また,必要であれば径の大きな同軸プローブを作成する.2.比誘電率8の誘電体埋込型ビバルディアンテナを作成しアンテナの小型化を実現できた.誘電体とコンクリートの電気定数比を小さくすることによりコンクリート表面での表面反射波の大きさを小さくでき,アンテナから放射したパルスの多くをコンクリート内部に効率良く入射できることを明らかにした.鉄筋からの反射波の振幅は従来のアンテナを用いた場合と比べて約1.5倍程度大きくなった.3.ビバルディアンテナと一体化させたアクリル製のフレッシュコンクリート容器を用いて水、セメント、細骨材,塩分,AE剤の配合比の違いによる電波受信特性の変化について調べた.セメントと細骨材の量を固定して水の量を変化させると,水分が大きくなるにつれて受信強度が低下した.また,電磁波の位相が遅れることを確認した.水、セメント、細骨材を固定して,塩分を加えると,塩分量が多くなるにつれて受信強度は小さくなったが,電磁波の位相に大きな変化は見られなかった.水、セメント、細骨材を固定しAE剤を加えた.このとき受信強度に大きな変化はなかったが,電磁波の位相が進むことを確認した.以上のように,成分比の変化を電磁波の受信強度と位相で識別できる可能性があることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの課題を同時進行しているため,当初の計画よりも進んでいる課題と遅れている課題が存在するが,全体的には順調に研究が進んでいる.以下に個別の達成度を記述する.1.同じ特性を持つSMAケーブルを利用した同軸プローブを作成し,フレッシュコンクリートの電気定数を調査した.同じ特性を持つ同軸プローブの作成に手間取った.また,複数の同軸プローブを深さを変えて挿入したコンクリート試験体を作成した.コンクリート試験体に挿入した同軸プローブを予定通りに正確な位置と深さに配置することは非常に困難であり,今後の改善が必要である.本来は,試験体が完成しコンクリートの電気定数をモニタリングしている予定だったので,このテーマの進行は遅れている.2.誘電体埋込型アンテナを作成しその特性を評価した結果,予定通りの結果が得られた.現在は作成したアンテナを利用して,コンクリート中の鉄筋や空洞の探査を行っている.アンテナを誘電体に埋め込むことで,アンテナの特性を改善できたが,従来の探査アルゴリズムを変更する必要が出てきたので,現在は推定アルゴリズムの改良を行っている.このテーマにおいては当初の予定通り研究が進んでいる.3.今年度はデータの再現性の議論に主眼を置いた.異なる人物が作成したフレッシュコンクリート中の電磁波の伝搬特性を評価し,同じ配合比であれば同じ特性が得られるように測定装置並びにフレッシュコンクリートの作成方法を検討した.また,フレッシュコンクリート内に含まれるセメントと細骨材の配合比を固定し,水,塩,AE剤の配合比を変えて電磁波の伝搬特性を測定した結果,水,塩,AE剤の量によって電磁波伝搬がそれぞれ異なることを明らかにした.このテーマにおいては当初の予定以上の進行状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
3つのテーマに対してそれぞれの今後の方針を記述する. 1.複数の同軸プローブを精度良くコンクリート試験体に配置する方法を考え,コンクリート構造物内部の電気定数の分布を測定し,さらに電気定数の経年変化をモニタリングする.コンクリート構造物の内部診断では多くの場合コンクリートの電気定数は均質であると仮定している.しかし,コンクリート内の電気定数分布は不均質であることが知られているので,得られた電気定数の分布を推定アルゴリズムに適用し,探査精度の向上を目指す.2.誘電体埋込型ビバルディアンテナを用いた,コンクリート構造物の内部推定アルゴリズムの開発を行う.なお,送信アンテナと受信アンテナを同じコンクリート表面に配置し,コンクリート構造物内の埋設物(鉄筋,空洞他)からの反射波を利用してコンクリート構造物の内部推定を行う方法と,柱や壁などを対象として送信アンテナと受信アンテナを相対する面に配置し,透過波を利用して構造物の内部を推定する方法の2つを議論する予定である.さらに,必要であれば,解析時間の短縮を目指して,計算プログラムの並列化も検討する.3.フレッシュコンクリートの配合比によって電磁波の伝搬特性の特徴が異なることを明らかにしたので,配合比を分類するための特徴量を求め,パタン認識を利用した配合比推定アルゴリズムの開発を行う.また,現在のアンテナとフレッシュコンクリートの容器を一体型として小型化し,推定精度の向上を計る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全てのテーマにおいて,測定装置の改良費(アンテナ用の基板,アクリル容器,比誘電率8を実現するためのシリコーンと離型剤,ケーブル,その他)が必要であり,測定対象であるコンクリート試験体の材料及び作成するための道具が必要である.また,研究成果を発表するための旅費も必要である.
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Research Products
(4 results)