2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560572
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
田中 俊幸 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50202172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 敏文 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20452873)
藤本 孝文 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40264204)
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Keywords | コンクリート診断 / 電磁波レーダ / フレッシュコンクリート / 非破壊検査 |
Research Abstract |
申請した研究テーマ毎に今年度の実績を記述する. 1.コンクリートを破壊せずに打設後のコンクリート内部の比誘電率の時間変化をモニタリングするためにSMAケーブルを用いて誘電率計測用同軸プローブを作成し,フレッシュコンクリートに深さが1cm刻みで10本挿入して固定し,電気定数の経日変化を調査した.期待通りに経日とともに電気定数(比誘電率,同遺伝率)の大きさが小さくなっていった.しかし,侵入深さの違いによる電気定数の変化は期待通りの値にならなかった. 2.昨年度作成した誘電体埋込型ビバルディアンテナをより実用的に改良した.ビバルディアンテナの両面に電波吸収体を配置し,さらに電波防護布で全体を巻くことによって,送受信アンテナを横に並べて配置した場合に生じる直達波の影響を小さくするだけでなく,誘電体を使用することによって生じたアンテナ内部での多重反射を抑え,埋設物からの反射波を相対的に強調することができた.今後は複鉄筋の探査や鉄筋と空洞が同時に存在する場合の探査精度の向上を目指す. 3.ビバルディアンテナと一体化させたアクリル製のフレッシュコンクリート容器を用いて水、セメント、細骨材,塩分の配合比の違いによる電波受信特性の変化を明らかにし,発注者が指定したコンクリートの配合比を推定する実験を行った.10数回の推定実験の結果,多くの場合で水分量の誤差が20%以内であった.推定精度を向上させるために,実験室の湿度と探査結果の関係について調べた.湿度が高い場合は推定結果がマイナスの誤差になり,湿度が高い場合は推定結果の誤差がプラスになることが分かった.このことを利用して更なる探査精度の向上を目指す.また,塩分濃度は湿度によらず,誤差10%以内で推定できることが分かった.また,アンテナとコンクリート容器を一体化させたフレッシュコンクリート評価システムを試作した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの課題を同時進行しているため,テーマ毎に達成度を記述する. 1.同じ特性を持つ複数のSMAケーブルを利用した誘電率計測用同軸プローブを作成し,フレッシュコンクリートに深さを変えて挿入し,測定用のコンクリート試験体を作成した.コンクリート打設後の電気定数の経日変化を測定することができた.しかし,何本かのプローブが抜けてしまったことや,コンクリート試験体の型枠を外さなかったことにより,期待した深さ方向の電気定数の変化を得ることができなかった.クローブの構造や,試験体の構造を再設計することが必要である.なお,モニタリングには数か月を必要とするので,予想以上に装置の改良に時間がかかるので,このテーマの進行は遅れている. 2.昨年作成した誘電体埋込型アンテナを利用した推定実験は,直達波やアンテナ内での多重反射波の影響により,十分な精度を得ることができなかった.しかし,アンテナ部を改良することによって,従来に比べて不要波を大きく取り除くことができたことは大きな進歩である.テーマ自体の進行は遅れているがアンテナ部の改良によって得られた受信波形の改善はすばらしく,これによって探査精度が大きく改善されることが期待できるので,このテーマは総合的に見て予定通り研究が進んでいると判断できる. 3.今年度は推定実験を中心に行った.水分は20%の誤差内で,塩分は10%の誤差内で推定できることを示した.水分推定の誤差は実験室の湿度の影響によることが大きいことを明らかにした.また,アンテナとフレッシュコンクリート容器とを一体型にした測定システムを作成した.さらに,フレッシュコンクリート中の粗骨材の影響も考察し,粗骨材が混入されている場合の推定方法について考察した.このテーマにおいては当初の予定以上の進行状況である. テーマによって進展状況は異なるが,全体的には順調に研究が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
3つのテーマに対してそれぞれの今後の方針を記述する. 1.計測機(ネットワークアナライザ)が1台しかないため,複数のプローブの計測を行う場合は,プローブとコネクタを何度も着脱しなければならず,コンクリート中に埋められたプローブに必要以上に負荷がかかり,プローブがコンクリートから外れてしまう失敗が複数個みられた.そこで,プローブの形状の改良と測定器とプローブを直接接続せずに途中に接続コネクタを挿入することを考えている.また,コンクリートを打設する容器を改良し,コンクリートが硬化後は容器を取り外すことができるような設計に変更する.コンクリート構造物の内部診断では多くの場合コンクリートの電気定数は均質であると仮定している.しかし,コンクリート内の電気定数分布は不均質であることが知られているので,得られた電気定数の分布を推定アルゴリズムに適用し,探査精度の向上を目指す. 2.H24年度に作成したコンクリートレーダ用送受信アンテナを用いた,コンクリート構造物の内部推定アルゴリズムの開発を行う.なお,送信アンテナと受信アンテナを同じコンクリート表面に配置し,コンクリート構造物内の埋設物(鉄筋,空洞他)からの反射波を利用してコンクリート構造物の内部推定を行う方法と,柱や壁などを対象として送信アンテナと受信アンテナを相対する面に配置し,透過波を利用して構造物の内部を推定する方法の2つを議論する予定である. 3.フレッシュコンクリートの配合比によって電磁波の伝搬特性の特徴が異なることを明らかにしたので,配合比を分類するための特徴量を求め,パタン認識を利用した配合比推定アルゴリズムの開発を行う.H24年度に作成したアンテナ一体型フレッシュコンクリートの容器を利用した探査実験を行い推定精度の向上を計る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
B-Aは91,920円である. 全てのテーマにおいて,測定装置の改良費,プローブの作成費,測定対象であるコンクリート試験体の材料費に利用予定である.なお,平成25年度の補助金はその大部分を実験材料費と改良費,および研究成果を発表するための旅費に利用予定である.なお,50万円以上の備品を購入する予定はない.
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