2011 Fiscal Year Research-status Report
軸力部材・変位比例摩擦力型振動減衰装置の実用化と応用に関する研究
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23560582
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
片山 拓朗 崇城大学, 工学部, 教授 (80310027)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 制震 / ダンパー / 摩擦 / 変位 / ばね |
Research Abstract |
減衰力が変位の絶対値に比例して増加する特性の振動減衰装置について、プロトタイプ(最大減衰力10kN・最大振幅40mm)の性能確認実験を実施し、実機(最大減衰力100kN・最大振幅40mm)の設計、製作、往復載荷試験を実施した。プロトタイプでは中核部品である拘束リングの載荷試験と本体の往復載荷試験を実施し、実機における拘束リングを構成する板ばねと摺動機構の設計に必要な情報を取得した。また、2011年の東北地方太平洋沖地震による長周期地震動を想定した周期5秒×継続時間600秒の往復載荷試験を8回繰り返す試験により、摺動機構の耐久性上の問題点を抽出した。実機では、拘束リングを構成する溝型板ばねと摺動体の詳細設計を行った。板ばねは最大減衰力の向上と安定化を重視し、ばね鋼を素材とした自由鍛造、荒加工,熱処理、仕上げ加工により製作し、拘束リングの載荷試験により板ばねの力学特性を明らかにした。摺動機構は摩耗量の減少と摩擦係数の安定化を重視し、機構を構成する摺動体は固体潤滑材を埋め込んだ高力黄銅で製作し、単体での作動試験を実施した。実機の往復載荷試験では、周期5秒×振幅20mmおよび周期5秒×振幅30mmでの往復作動を確認し、30~40mmの大振幅でも適用可能であることを確認した。また振幅30mmの往復載荷試験においてアクチュエータの固定治具の剛性不足の影響がみられたので、大振幅の往復載荷試験ではその固定治具を換装する必要があることが判明した。 H23年度の研究においては減衰力100kNの実機について、中振幅域での作動が確認されたが、大振幅域での作動確認と1000回程度の繰り返し往復試験による耐久性確認が課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
凹型摺動体を青銅とするプロトタイプ(最大減衰力10KN・最大振幅40mm・最大面圧1N/平方ミリメートルの)の往復載荷試験により、1000回程度の往復後には最大振幅時の減衰力が減少するものの、中立時の減衰力は逆に増加し、履歴曲線の囲む面積は大きく減少しないことが確認された。減衰力を100kN程度に増強するためには、10N/平方ミリメートル程度の面圧に対応できる摩耗・摩擦特性に優れた摺動材を採用することが必要と考えられ、実機の凹型摺動体を固体潤滑材(二硫化モリブデン)を埋め込んだ高力黄銅として、摩耗・摩擦特性の改良を図った。固体潤滑材付き高力黄銅を用いた摺動機構は単体での作動確認を行い、変位に比例して摺動機構の高さが変化することを確認した。 プロトタイプの性能確認実験と板ばねの解析により、減衰力の増強のために所要のばね定数を確保するためには、強度面のからは板ばねの材質を高ひずみに対応できる材質とし、製作面からは板ばねの形状を簡単な形状に変更する必要があることが判明した。これより、実機の板ばねの材質はばね鋼(SUP10)とし、計画当初のU型板ばねを溝型板ばねに変更した。一個の溝型板ばねは二個のU型板ばねに相当する。溝型板ばねは自由鍛造+荒加工+熱処理+仕上げ加工により製作し、載荷試験により所要のばね定数を得られることが確認された。実機(最大減衰力100kN,最大振幅40mm)の中振幅時(振幅30mm)の往復作動試験において得られた減衰力と変位の履歴曲線は、先の摺動機構の摩擦・高さ変化特性と抵抗リングのばね定数から試算される履歴曲線と概ね一致し、引張減衰力の場合の差は5%以下であり、圧縮減衰力の場合の差は約10%程度であった。圧縮減衰力の差が5~10%と大きい理由は、実機の初期圧縮力の調整不足、中立位置の調整不足と判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
提案する振動減衰装置の実用性を検証するために、製作済みの実機(最大減衰力100kN,最大振幅40mm)を調整し、最大振幅時の往復載荷試験を実施する。2011年の東北地方太平洋沖地震で観測された長周期地震動を参考にして、振幅、往復周期、継続時間、往復回数をそれぞれ40mm、5秒、20分、240回とする往復載荷試験を実施する。また、前期試験を合計5回繰り返して、減衰力の変化を調べ、摺動機構の摩耗量・摩擦係数の変化を検討する。H23年度の往復載荷試験により減衰力が変位に比例する特性を持つ振動減衰装置の実現の見通しが立ったこと、論文調査によってそのような特性を有する減衰装置を装着した振動系の動的応答特性を実験等で検証した報告を発見できなかったこと、市販の汎用構造解析プログラムがそのような特性の減衰装置を取り扱うことができないことを考慮して、H24年度は減衰装置の動的応答特性を計算できる解析プログラムを開発し、それを検証できる振動模型を開発する。具体的には最大減衰力20N・最大振幅20mmの超小型振動減衰装置を2個、これを取り付ける2層門型ラーメン1基を製作し、これらで振動模型を形成する。超小型振動減衰装置の往復載荷試験、2層門型ラーメンの静的載荷試験・自由振動試験、およ振動模型の載荷試験、自由振動試験、共振実験を実施し、提案の振動減衰装置を装着した振動系の振動特性を解明する。また、それらの結果を解析プログラムの結果と比較し、解析プログラムの妥当性を検証する。なお、振動模型の地震応答解析と地震波振動台試験はH25年度に実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
超小型振動減衰装置に必要な凹凸摺動体、板ばね、中央軸力材、側方軸力材などの部品の製作費600千円、2層ラーメンに必要な梁(ばね鋼)、柱(ばね鋼)、脚柱などの部品の製作費500千円、超小型振動減衰装置の減衰力を計測する小型荷重計の購入費250千円、計測用のノートパソコンの購入費200千円を、物品費1550千円として支出する予定である。 研究成果の発表のための経費を旅費100千円として、振動実験の補助・データ整理の経費を謝金100千円として、ひずみゲージ等の消耗品をその他50千円として支出を予定している。 H24年度の直接研究費の合計は上記の合計の1800千円と予定している。なお、H23年度の研究費の残額は千円未満である。
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Research Products
(5 results)