2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560587
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大河原 正文 岩手大学, 工学部, 准教授 (80223741)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 分子軌道法 / 分子動力学 |
Research Abstract |
2:1型粘土鉱物のスメクタイトの「構造最適化」と「結合エネルギー」を分子軌道計算により求めた。計算モデルは,無イオン型,Na型,Ca型である。HF法による軌道計算から,無イオン型の結合距離d=2.16Å,結合エネルギーE=7.908kcal/mol,Na型d=2.29Å,E=13.57kcal/mol,Ca型d=2.41Å,E=29.29kcal/molが得られた。B3LYP法による軌道計算では,無イオン型の結合距離d=2.16Å,結合エネルギーE=21.8kcal/mol,Na型d=2.29Å,E=43.24kcal/mol,Ca型d=2.41Å,E=48.33kcal/molとなった。HF法とB3LYP法の計算結果を比較すると,両者とも結合距離dは同じであるが、結合エネルギーに差が認められる。この差についてはさらなる検討が必要である。また,粘土鉱物と水分子の結合の仕方は,無イオン型では水分子は水素原子を粘土鉱物に向けて吸着し、Na型とCa型は,水分子は酸素原子を粘土鉱物側に向けて吸着している。とくにNa型とCa型の場合、陽イオンを介しての吸着となっている。また、粘土鉱物と水分子との結合エネルギーは、無イオン型では水素結合レベルと大変弱く、Na型とCa型は共有結合レベルと非常に強い。無イオン型では、水分子は自由に動けるが、Na型とCa型の場合、陽イオンに強く拘束されている。なお、Na型とCa型の結合距離に違いが認められるのは,イオン半径の大きさによるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H23年度の研究計画では,分子軌道法による粘土鉱物の構造最適化と結合エネルギーを計算することになっていた。計算は終了したが、計算法の違い(HF法、B3LYP法)による結合エネルギーの差について、原因を究明する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
分子動力学法により粘土鉱物の垂直力0kPa状態下でのせん断力を計算する。粘着力cは,垂直力が作用しない状態(0kPa)で発揮されるせん断力である。計算値はAFM(原子間力顕微鏡) の実測値と比較し,その精度を検証する。その上で,水分子の挙動解析(軌跡,平均二乗変位,動径分布など),水分子の粘性(粘性係数)などを計算する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は,H23年度で未実施の分子動力学法による計算,AFMによるせん断力の測定を計画している。そのため、研究費の次年度使用額1,287,704円は、分子動力学システム、試料作製容器、AFM関連機器などに使用予定である。
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